2021年10月23日

IOC登録商標『五輪』無効審判での無効理由を理解する



「IOCを相手取った」IOC登録商標『五輪』無効審判について、同無効審判の請求人でもある三木義一氏(弁護士、前青山学院大学学長)主宰のYouTubeチャンネル『庶民大学TV Japan』に以下最新動画がアップロードされた(ゲストは同じく請求人である柴大介弁理士)。

IOC登録商標『五輪』無効審判での無効理由を理解するには、商標制度の基礎を知る必要がある。

以下の動画(商標制度の基礎の基礎)の視聴をお勧めしたい。商標制度について全く知識がなくとも勘所が良い向きには、この「基礎の基礎」で「ああそうか!」と無効理由について膝を打つかもしれない。そうでなくとも、続編動画で合点が行くことだろう。

「商標制度の基礎の基礎」に照らせば、IOC登録商標『五輪』の問題点の幾つかをその制度に詳しくない者ですら認知できるにもかかわらず、その商標を専門とする弁理士は柴弁理士(柴弁理士は本来、特許弁理士)を除いて誰一人その問題に気付いていない(または気付いていても問題視しない)のは、それがあまりに「基礎の基礎」だからかもしれない。まさに魚の目に水見えずである。



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「商標制度の基礎の基礎」およびその続編で理解が期待される無効理由:

理由1:商標法第3条第1項柱書違反
IOCは、本件登録商標の出願時に出願商標『五輪』を使用している又は使用意志があるとは認められない。

理由2:商標法第3条第1項第2号
『五輪』は、我が国では自他商品識別力を喪った商標法第3条第1項第2号に該当する慣用商標であり、商標法第46条第1項第1号により無効にされるべきである。

理由3:商標法第4条第1項第6号
『五輪』は商標上の非営利公益事業の表示商標であるオリンピック表示標章に類似する商標であるから、商標法第4条第1項6号に基づき登録を受けることができない。

理由4:商標法第4条第1項第7号
IOCは自らが表示主体となる標章及び商標の管理及び権利行使を適切に行っておらず、請求人を含む我が国における公共性と公益性を損ない、請求人を含む我が国の需要者が不測の不利益を被ることになるため、IOCには「主体に着目した公序良俗違反」が適用されるべきである。

理由5:商標法第4条第1項第10号
『五輪』は、他人での業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標である『Olympic』及び『オリンピック』に類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項10号に違反し、同法第46条第1項第1号により、無効にされるべきである。

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直接の無効理由ではないが、『五輪』について歴史的観点から考察すれば、大衆に膾炙した文字文化であることは明白であろう。その文化を継承し誰よりも守るべき立場にある日本ペンクラブは、その文字文化をその文化圏にないIOCに奪取されても(たとえ商標権であろうと)全く意に介さないつもりらしい。

日本ペンクラブへの意見(筆者が同クラブ投稿欄に送った意見):

『五輪』なる「自分たちが作ってきた言葉」をIOCに奪われても(言論の自由、表現の自由が奪われたのです!)、その自由の砦としての貴クラブが何の問題意識も持たず剰え沈黙を続けるのであれば、貴クラブの存在意義が問われることと認識します。
「あなた方どうして自分たちの言葉を大事にしないのか(三木氏)」、重く受け止めて頂きたいと存じます。

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折り返しご連絡させていただきますので、しばらくお待ちください。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
日本ペンクラブ
info@japanpen.or.jp



一ヶ月経っても連絡なし。
「自分たちの言葉」すら大事にできないのに、緊急シンポジウム「危機に直面する報道の自由〜アフガニスタン取材の問題点」などとは、こちらも灯台下暗し。

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歴史的観点(表示主体):
我が国では、1936年以降現在に至るまで、大衆が表示主体となって『五輪』を自由に使用してきたが、IOCが表示主体となって『五輪』を使用した形跡がない。従って、『五輪』の商標登録出願前後のおいて、現実には、『五輪』の表示主体は、IOCではなく、大衆であるということになる。

(おわり)

posted by ihagee at 05:59| 東京オリンピック

2021年10月04日

「あなたたちどうして自分たちの言葉を大事にしないんですか!(三木氏)」



「IOCを相手取った」IOC登録商標『五輪』無効審判について、同無効審判の請求人でもある三木義一氏(弁護士、前青山学院大学学長)主宰のYouTubeチャンネル『庶民大学TV Japan』に以下最新動画がアップロードされた(ゲストは同じく請求人である柴大介弁理士)。


(「五輪」無効審判)


動画の終段での三木氏の言葉は重い(以下)。



「日本語の問題をこういう形で軽々しく外国のこういう団体が商標登録するということの是非を今回問いたいわけです。これは本来は私たちがやることではなく日本のマスコミがやんなきゃいけないんですよ。自分たちが作った言葉じゃないですか!あなたたちどうして自分たちの言葉を大事にしないんですか!」

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「自分たちの言葉を大事にしないんですか!」は、マスコミだけでなく日本語(および文字文化)を共有する日本人全てに投げかけている。この問いを投げかける上でIOCを相手取って無効審判を提起した意義は大きい。

是非とも上掲の動画を視聴され問題意識の輪を周囲に広めて頂きたい。

(おわり)

参照記事:IOC登録商標『五輪』無効審判:YouTube『庶民大学TV Japan』で現状報告(2021年10月3日)

posted by ihagee at 07:29| 東京オリンピック

2021年09月30日

"IOCを相手取った" 審判請求書が受理された



"IOCを相手取った" 2021年9月13日付無効審判請求( IOCの登録商標『五輪』(商標登録第6118624号))が方式審理を通過し、特許庁に受理された。

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出願記事
商標 2017-166105
登録記事
6118624 (2019/02/01)
審判記事
2021-890047 (2021/09/13)審判(判定含む)
被請求人・代理人記事
被請求人CH- スイス国法人コミテ アンテルナショナル オリンピック
審判細項目記事
通常併合審理でない
更新日付
(2021/09/22)

以上、J-PlatPat(特許情報プラットフォームから)

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受理を以って、IOCは本無効審判事件の当事者(被請求人)となる。
つまり、「IOCを相手取った」審判の実体審理が開始されるということである(柴大介氏など請求人の適格性、つまり利害関係人であるかについて、被請求人=IOCは争う可能性があるが、審決時までに請求人は適格要件を具備すれば良いとされるので、たとえ争ったとしても実体審理自体は進められるであろう)。

登録商標『五輪』(商標登録第6118624号)の手続代理を行なった中村合同特許法律事務所を通じてIOCは無効審判請求の具体的理由を知ることになる。その「寝耳に水」の理由にIOCの驚天動地は想像に難くない。

「知的財産権の保護に極めて効果的な法令を既に整備し」登録された筈の文字標章『五輪』に、今になって違法性やら公序良俗違反が問われるわけで、万全の法的保護についてIOCに誓約し保証した日本政府に対しIOCは激怒するに違いない。

そもそもIOCが知る由も無い(また自ら使ってもいない)『五輪』なる日本語文字をIOCが自ずと商標登録するとは到底考えられず、IOCに忖度して誰かが登録を謀ったのだろう。しかし、その結果はIOCを喜ばすどころか「IOCを相手取った」審判事件に発展したわけであるから、これ以上のIOCの面汚しはなく、その誰かは今頃血の気が引いていると思われる。

だからと、IOCは口が裂けても自ら与り知らぬところで『五輪』が登録されたなどとは言えない。

言えば最後「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標(商標法第3条1項柱書・商標登録の要件)」に違反することになる(無効理由)。

さりとて、出願時に『五輪』を使用している又は使用する意志があったこと、また、登録に係る夥しい数の商品・役務(例: 「菓子」「ビール」)について使用意思を有することをIOCは客観的に証明することはできない。他の無効理由についても同様で、審理を通じIOCは二進も三進もいかない論理膠着に陥ることだろう。


(おわり)

<忖度>:元々の意味とは正反対の、目下の者が目上の言葉なき命令を読み取って先回りして行動するという、わが国特有のコミュニケーション手段。

関連記事:上に立つべき者はいずれか(安倍首相と前川氏)〜忖度の意味の違い


posted by ihagee at 09:27| 東京オリンピック