2022年12月21日

サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その5


モノクローム専用設計のLCD(Duobond)について、複製モードでなく拡張モードとすることで(ディスプレイ設定)全面表示ができなかった問題が解決した。

バックライトがなく引き伸ばし機にマウントされたLCDだから、PC側のモニター上で画面操作を行うことばかりを考えて複製モードに拘り拡張モードを試していなかった。複製モードでは画面の解像度は、低いモニターに合わされる。つまり低いのはPC側のポータブルモニター=解像度(1024*600)だから、複製されるLCD(2560*1620)では全面表示にならないのは考えてみれば当たり前のことである。

----

拡張モードにすると、ウィンドウズのデスクトップが拡張側のLCD(アスペクト比=16:10)でも全画面表示となった。一見これで良さそうだが(PC側のアスペクト比=16:9に固定されない全画面表示なので、若干縦長に見える)、この拡張モードには以下注意点および課題(解決策)がある。

注意点:
写真など画像データを拡張画面上で展開する場合は、RGBで3つのサブピクセル(通常のLCD)はモノクローム専用設計のLCD(Duobond)では統合されて1ピクセルであるから、元の画像をサブピクセル方向にピクセルを3倍に拡大した(リサイズした)データでなければ正しく表示されない(アスペクトではなく、ピクセル対応)。LCD(Duobond)のアクティブ信号は2560*540、LCD上の解像度は2560*540

課題:
拡張モードでは、PC側のモニターをメインに設定すると、拡張画面上に画像を展開させるには画像を拡張画面までドラッグするなど操作が必要となる。PC側のモニターでは見えない拡張画面上の操作だから、引き伸ばし機から一々LCDを外し手元で光に翳さない限りできない。拡張画面をメインに設定すれば尚更のこと苦労することになる。バックライトがなく引き伸ばし機にマウントされたLCDだから(PC側の)ポータブルモニター上で画面操作を行えるようにすることは課題だった。

解決策:
そこで、拡張画面をメインに設定することを前提に、PC側にHDMIで接続していたポータブルモニターを取り外し、代わりディスプレイエミュレーター(仮想コネクタ)を装着しあたかもモニターが接続しているかにPCを騙し、他方、拡張画面への出力を分波し(HDMI分配器を噛ませて)、一つは引き伸ばし機にマウントされたLCD、もう一つは取り外したポータブルモニターに接続することで、拡張画面がメインの「複製モード」が実現可能となった。斯くしてポータブルモニターに拡張画面をミラーリングさせ同モニター上で画面操作が行えるようになった。

ちなみにディスプレイエミュレーター(仮想コネクタ)は、在宅勤務で職場のPCを遠隔操作する際、PCにディスプレイを接続しておく必要がなくなるギミックでもある。最大解像度は4096 x 2160ドット、リフレッシュレート60Hzに対応するエミュレーターだから、あたかもそのクラスのディスプレイがPCに接続しているかに偽装し、結果として高解像度のリモート環境(自宅PCのディスプレイがそうであれば)を提供するという優れものである。

----

斯くしてモノクローム専用設計の6.08" LCD(Duobond)は晴れて全面表示可能となり、擬似的複製モード下、ポータブルモニター上で操作可能となった。

ネガ領域が以前の小名刺判相当大(5.7×8.3cm)から一挙に8.1x12.8cm(アクティブ領域)に拡大したのは喜ばしい。LPL Model 7451引き伸ばし機は 4x5(10.16x12.7cm)の大判フィルム(または乾板)まで扱えるので、実質、最大のネガ領域を得たことになる(但し短辺は若干短い)。小名刺判相当大(5.7×8.3cm)は69フィルム(5.6x8.4cm)に相当するとして、大きさの比較は以下の通りである。


(Darkroom Door記事から画像引用)


引き伸ばしてもセルの影が印画紙に現れにくくなる上、ネガが大きくなればネガに当たる(透過する)紫外線量も多くなるわけだから印画紙の露光にも寄与することになる。

1 (61).jpeg

(B5サイズのサイアノタイプ印画紙に露光中・引き伸ばし機ヘッドを以前よりも下げることが可能となった。)

作例比較・いずれもB5版サイアノタイプ印画紙)
ネガ領域=以前・小名刺判相当大(5.7×8.3cm):
52568070692_9e93772b3c_k.jpg

部分:
1 (68).jpeg

輪郭にディザが現れ、セルの影も視認できる。

ネガ領域=現行(8.1x12.8cm):
52581675302_1900bc0a75_k.jpg

部分:
1 (67).jpeg

明らかに改善されている。
(おわり)

PS. 解決策の説明を訂正(取消線部分)。分波によってLCDの画像にノイズが乗る・画面が乱れるなど不具合が発生。解決策に提示の方法はやめた(エミュレータも取り外した)。
元通り、PC側のモニター(メイン画面)とLCD(拡張画面)とし、メイン画面に展開した画像を、Shift+windowsマーク+→ or ← で拡張画面との間で行き来させる方法にした。このショートカットは便利だ。視認しづらい拡張画面を光に翳しながらマウスで画像をドラッグし適切に配置する必要がなくなった。




2022年12月17日

サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その4


Duobondに問い合わせたところ(Alibaba.comはリアルタイムに英語でチャットが可能)、RGBで3つのサブピクセル(通常のLCD)はモノクローム専用設計のLCD(Duobond)では統合されて1ピクセルであるから、元の画像をサブピクセル方向にピクセルを3倍に拡大すれば正しいアスペクトでLCDに表示されるとの回答を得た。問題はアスペクト比の違いではなく、ピクセルの対応関係だということ。つまり、RGBの3サブピクセル=モノクロームの正方1ピクセル。


サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その3」から

----

パブリックドメインのブラウン管用パターンテスト画像を取得し、サブピクセル方向のみピクセル値を3倍にした上でサイアノタイプをプリントしてみた(B5の安価な画用紙/露光時間は約2時間=不完全・本記事に掲載する為に色目をアプリで補正・強調している)。

1 (52).jpeg


元がかなり粗い画像ゆえ輪郭にディザが現れ(元画像が精緻ならばディザは出ないだろう)、プリントが生乾きで紙面の撓みがパターンの歪みのように見えるが、実際にはパターンに歪みはなくアスペクトは正しいことが確認できた(サブピクセル方向のみピクセル値を3倍にすることは正しいと確認できた)。

ロイヤリティフリー(パブリックドメイン)の画像サイト(Pexels)から幾つか画像をダウンロードして、葉書大の水彩画紙を印画紙としてテストプリントを行うことにした。

以下、かなりイージーなやり方で画像(ポジ)からネガを作成した。

@ PC(Mac OS 12.5.1)に画像をダウンロード(とりあえず最高画質で)
A PCのディスプレイ上に画像を展開
B PCのアクセシビリティ設定でディスプレイのカラーを反転させる(画像がネガになる)
C iPhone 14でネガ画像を間接撮影
D iPhoneからiCloudを介してPCに転送された画像をプレビューし上述のリサイズを行う
E USBメモリを介して作業用PC(Windows 10)に画像データを移し、LCDに出力=プリント

Mac OS 12.5.1のiMacは5K 有機液晶ディスプレイゆえ、ディスプレイ上の画像は精緻である。同様に精緻な画像を得られるiPhone 14のカメラでの間接撮影だから、そこそこ鮮明な画像データを得られる(ただし、モアレは発生している)。テストプリントが目的だからこれでも良い。

以下、テストプリント例:

52568070692_9e93772b3c_k.jpg

52569738249_fa767ea0e9_c.jpg


いずれも露光時間約6時間。前者はジャスミン茶でトーニングを施している。

アナログフィルムや写真乾板と比較してLCDは画像の抜け部分の紫外線の透過率が低い。銀塩プリントならば許容の範囲だろうが、感光性の低いサイアノタイプやヴァンダイクでは感光が不十分となり易い。葉書大ならば何とかいけそうだが、B5以上の紙にプリントするには光源を強化しなければならないだろう。このLCDはそもそもの用途が3Dプリンター、つまり、LCDに接したレジンを二次元に可塑し機械的に三次元に積層するコンタクトプリント。紫外線量はLCDと接するレジンで足りれば良い程度にLCDは設計されている。LCDから離れた印画紙面まででは足らないのは当然と言える。

----

LCDをDuobondに替えたついでにLPL Model 7451へ少し手を入れた。
1 (58).jpeg


CotmanのF2水彩画紙の台紙=大きく固いボール紙を細工してLCDを脱着容易に収容する台座を作成。さらにLCDの基板(コントローラボード)を邪魔にならないよう垂下させた(軽いスチレン板上に配した)。

2 (5).jpeg


また、UV光源の位置(高低)を調整容易にする為(引き伸ばしレンズごとの焦点距離に合わせて光源の位置を調整する必要がある為)、百均のフェライト磁石を積んでスペーサ(最底部の磁石は動かないように固定している)とし、UV光の無用なリークを防ぐ為、光源の位置に合わせて伸縮可能なベローズを配したことである。光源の真下、ライトボックスの元からあったディフューザは光源に使用した(UV) LEDの指向性(直進性)ではその用途を全く成さない為、15cm口径・二枚構成のコンデンサーレンズに替えてある。

このベローズは4x5 大判 カメラジナー製の中古品を転用した。プロ仕様・世界最高峰の大判カメラメーカーとしてその名を轟かせたスイス・ジナー(Sinar)の高級品も、今や都を追われた落武者の如く、ハードオフのジャンク箱に投げ入れられ二束三文の値札が付いていた。

(おわり)

2022年12月15日

サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その3


ジャギーの原因は、使用した液晶の性能の低さにあると思われる。上述のようにRG成分を捨てると短辺方向(この作例では水平方向)の画素が低下するため(1620/3=540)、短辺方向は540画素の3倍に拡大し擬似的に1620画素(実行画素)としているゆえ、ジャギーは短辺方向(この作例では水平方向)で現れるということである。やはり、モノクローム用に最初から設計されたLCD(Duobond製LCD)を使うべきなのだろう。Alibaba.com(Aliexpressサイトでは入手不可能な為)から取り寄せることにした。


サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その1」から

----

そのモノクローム用に最初から設計されたLCD(Duobond製LCD)を取り寄せた。

H29569074748648ebb4aca57cd81247a0U.jpeg

スクリーンショット 2022-12-15 4.05.18.png

(Duobond 6 inch 2k 1620*2560 IPS tft monochrome lcd screen with driver board)

1 (44).jpeg

2 (3).jpeg


さっそく、引き伸ばし機に搭載。LCD上のネガは写真乾板に置き換えるとほぼ小名刺判大(5.7×8.3cm)である(LCD全面にネガを表示することは未だ成功していない)。小名刺判大があれば大型引き伸ばし機たるLPL Model 7451では十分。結果は一目瞭然。以前のRGBをモノクロームに擬似化したLCDに比較して、当然ながら極めて鮮明な像が印画紙に得られた。白抜き部分の紫外線の透過率も高そうだ。引き伸ばし機にも今回若干手を入れた(次回記事で紹介)。

(おわり)

追記:Duobondに問い合わせたところ(Alibaba.comはリアルタイムに英語でチャットが可能)、RGBで3つのサブピクセル(通常のLCD)はモノクローム専用設計のLCD(Duobond)では統合されて1ピクセルであるから、元の画像をサブピクセル方向にピクセルを3倍に拡大すれば正しいアスペクトでLCDに表示されるとの回答を得た。問題はアスペクト比の違いではなく、ピクセルの対応関係だということ。つまり、RGBの3サブピクセル=モノクロームの正方1ピクセル。
スクリーンショット 2022-12-16 4.03.06.png


Because the LCD is an LCD with a single sub-pixel structure, which is different from ordinary color LCDs. Therefore, when connecting to a computer, the picture will be stretched.
1. If you are making a 3D printer, then you can adjust it in the slicing software and use the DLP slicing method to control every pixel of the LCD.
2. If you just need LCD display, then you can enlarge the picture by 3 times in advance, and when it is displayed on the LCD, the picture will be reduced to one-third, which is exactly the size of the picture you want to display.(先方の担当者からの回答・2番目の答えが私の仕様に応えるもの。)