2019年08月29日
フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き)
別稿「サイアノタイプ - その86(引き伸ばし機)」で紹介したポラロイド CI-5000S(デジタル・フィルム・レコーダ)について続ける。
CI-5000Sの本来の用途はプレゼンテーション用のカラースライド(35mm カラーリバーサル)の作成にあるが、私の用途は引き伸ばし機によるサイアノタイプのアナログネガ(モノクローム)作成なので、モノクロのネガフィルムを使う。
本ブログ「古写真」の括りで35mmカラースライドも紹介しているが、8mmフィルムと同様、35mmフィルムにもモノクロのポジスライドがかつて存在していたようだ。
リバーサルフィルムに陽画(ポジ)を焼けば通常のポジのスライドになる。
コダックなどの35mmリバーサルフィルムは今も買うことができるがネガフィルムに比べて格段に高価。ネガフィルムに陽画(ポジ)を焼けばネガだが、陰画(ネガ)を焼けばポジのスライドになる。CI-5000Sではドライバーソフト上、ポジ→ネガ変換ができるのでこれが可能となる。カラーのネガフィルムであればカラースライドが、モノクロのネガフィルムならモノクロスライドを作成可能というわけ。
別稿「ガブリエル・レイ(Gabrielle Ray)」の百年前のポストカードをスキャンしたデジタルデータを使って、Fuji Acros100(モノクロ・ネガ)上で試してみた(サムネイルをクリックすると拡大)。
(通常のネガ→ポジ変換のフィルムスキャン)
(ネガのまま原稿スキャンしたもの)
最初のコマがモノクロスライド(ポジ)に相当し(残りのコマは全てネガ)、プロジェクターで壁に投影すれば本来のスライドとなるが、そこは一考。私なりに別の用い方をいずれ提案したい。
(おわり)
posted by ihagee at 02:34| フィルム レコーダ(デジ→アナ)
2019年08月06日
フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見
別項「サイアノタイプ(引き伸ばし機)」は、アナログネガ(モノクロ)と銀塩写真用引き伸ばし機(光源はUV光)を用いプリントを行っている。銀塩プリントのサイアノ版である。アナログネガは、135フィルム(35mm)、120フィルム(6x6)およびガラス写真乾板であり、いずれもアナログカメラで撮影されたもの。
(アナログネガと引き伸ばし機)
サイアノ・タイプはデジタルネガとコンタクトプリンタ(密着焼き)の組み合わせが一般的で、そのデジタルネガは、それらアナログ記録媒体の情報をスキャナーで読み取ったデジタルデータやデジタルカメラの撮影データをOHPシートにインクジェットプリンタでプリント寸法に印刷したものを用いる。
(デジタルネガとコンタクトプリンタ)
アナログネガの場合はアナログ(フィルムや乾板)→アナログ(紙出力)、デジタルネガの場合は[アナログ(アナログネガがある場合)→デジタル変換] デジタル(データ)→アナログ(OHPシート)→アナログ(紙出力)といった具合に、前者は入力から出力まで一貫してアナログ処理で、後者はデジタル処理が介在する。
さて、前者にはアナログネガが必要であり、そのために昔ながらにアナログカメラで白黒写真を撮ったり、写真好きな父が残した写真フィルムを使ったり、それでも足らないときはオークションサイトから他人が撮ったフィルムや乾板を入手している。
アナログカメラを使って写真を撮るのは楽しいことではあるが失敗も多い。デジカメやスマホのカメラのように記録媒体(SDカード)の容量が許す限りバシバシ撮って、これはと思うショットを選んでプリント(アナログ出力=実際はデジタルプリント)するデジカメプリントの利便性はここにある。
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「入力から出力まで一貫してアナログ処理」に拘る限り、アナログネガはアナログカメラでの撮影した媒体でなければならない。ここにアナログ人間たる私なりの拘りを託していたわけだが、サイアノ・タイプの通常の密着焼きに使用するデジタルネガ(OHPシート)を面白半分に引き伸ばし機にかけてみた。サイアノ印画紙と密着していれば光を遮蔽するインク(染料系)も引き伸ばし機のレンズを介すると光が透過したり(染料インクゆえ?)回り込んで(OHPシートゆえ?)、寝ぼけたようなプリントしか得られないことが判った。なによりも、サイアノ印画紙面上でルーペを当てても銀塩の粒子が見えないインクスポットではピントの合わせようもない。アナログネガは従来のアナログフィルムなり乾板でなければ引き伸ばし機にかけられないということだ。
「入力から出力まで一貫してアナログ処理」に拘らないのであれば、デジカメプリントのプリント(紙)の代わりにアナログフィルム(35mm)に焼き付け、引き伸ばし機(光源はUV光)のアナログネガとして「サイアノ・タイプ」に用いることが可能となる。しかし、そのようなデジタルデータからアナログネガへの変換サービスを受け付けてくれるところは今は限られているうえに、サービス料金が無茶苦茶高い(36枚分アナログネガを作成するのに二万円近くかかる)。
この変換に用いるのはフィルム・レコーダという機器だが、ヤフオクを覗くと中古が数台出品されていた。本来の用途は学会で使うポジスライドの作成で、その相性の良さから1980年代にGUIを搭載したマッキントッシュが大学や医療機関に浸透し、その後、Windowsが一般的になってもなぜか大学病院などでマックが幅をきかせていたが、アメリカ帰りのお医者さんが向こうではデファクトであったこの組み合わせをそのまま職場に持ち込んで使い続けたからだと言われている。
当時のAppleコンピュータ(キャノンが総代理店だったと記憶する)のマッキントッシュはフィルム・レコーダ共々百万円以上したが、プレゼンテーションのスライド作成には必須でかなりの需要があったようだ。デジタルデータを手軽にプロジェクタで投影できるようになって、ポジスライドは学会でのプレゼンテーション用としての役目を終えた。紙のマウントのポジスライドはその「スライド」という言葉と共に過去のものとなり、プロジェクタでのスライド送りをギミック化した「スライドショー」に名前を留めている。
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数台出品の内、ポラロイド CI-5000S(デジタル・フィルム・レコーダ)を落札した。百万円近くした機器も今となっては無用の長物。オークションサイトでは千円札数枚分の価値しかない。
同機器を動かすためのマッキントッシュはモトローラ製CPUを搭載しOS 9.xが稼働するPower PCであり、これもヤフオクでは数多く出品されていた。SCSIがCI-5000Sの接続要件なので、外部端子にSCSIが備わっているラップトップのマックを探したところ、PowerBook G3 Wallstreetを見つけた。これも格安で落札した。
このPowerBookはOS 9.2を搭載しAdobe Photoshop、Illustrator、Microsoft Officeなど有用なソフトウェアがインストールされ、内臓メモリ(RAM)はこの時代の名残でRam Doublerによる仮想メモリで240MBまで拡張してある。
PowerBook G3シリーズ中、Wallstreetは名機として名高い。今のクールなアップル・コンピュータではなく、フラワーパワー全開・マッキントッシュの時代のプロダクトでもある。レインボーカラーのロゴがマッキントッシュであることを誇らしげに示している。
幸いにもCI-5000Sと通信するためのドライバ・ソフトウェアはポラロイド社の閉鎖寸前のサイトから辛うじてダウンロードできた。CI-5000Sに限らず、多くのフィルム・レコーダはOSウィンドウズ機種でも動作するが、ウィンドウズ用のドライバソフト(RasterPlus)はライセンスの関係で有料(おそらく高額)なので、ドライバソフトが無料で手に入るポラロイド社のフィルム・レコーダとマックとの組み合わせが最良の選択であろう。
フィルム・レコーダについてネット上の情報はかなり少なく、その大方はプレゼンテーション用のポジスライド作成に関することで、画像主体のフィルム作成については皆無といってよい。その中で機種は異なるものの(Lasergrahics Personal LFR plus)、PowerMacでの実例を紹介している愛媛の御仁のページ(「アナログにこだわる」)が参考になった。かなり昔の記事らしいが、不躾と思いつつメールで使用環境など問い合わせをしたところ、ご親切に返信していただき有用な情報を得ることができた。
あとは試行錯誤のみ。
(Gabrielle Ray)
続きは「サイアノタイプ(フィルム・レコーダ)」項で。
(おわり)
posted by ihagee at 03:10| フィルム レコーダ(デジ→アナ)