2019年09月23日

フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き4)



フィルム・レコーダ(Polaroid Digital Palette HR-6000)を使って、3¼ x 4¼のピールアパート方式パックフィルム(フォトラマ)への出力の前回続き。

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前回と同じく12年前(2007年7月)に有効期限が切れたフォトラマを使った。どのプリントも赤味が強く部分的にマスクがかかったように現像にムラができた。HR-6000本体の問題かと疑ってCI-5000Sにフィルムバックを付け替えてプリントしたが同じ結果なのでフィルムの問題なのかもしれない。以下結果(いずれもHR-6000で出力)。

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別稿「ガブリエル・レイ(Gabrielle Ray)」の百年前のポストカードをスキャンしたデジタルデータにSigma DP2Sの画像をphotoshopでオーバーレイしプリント。本来ならゴミ箱行きのプラスチックのパックをフレーム代わりにプリントを飾ってみた。

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こちらも元データはデジタル画像(SONY NEX-3, Carl Zeiss Flektogon 4/25で撮影したモノクローム夕景)を写真加工ソフト(Tonality)でウェザリングしプリント。空が緑がかっているが元にある色ではなく、これはフィルムの悪戯だろう。

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パックに前回と今回の結果を入れてみた。パックの一個はeBayで買った3¼ x 4¼パックフィルム用フィルムバックに元から入っていた空のポラパック(これはオール金属製だった)。他は前回と今回で消費したフォトラマのプラスチックパック。背面に百均のマグネットシールを貼って吸着しそうな壁にかける。

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(Sigma DP2Sで撮影)


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有効期限が切れたフォトラマのカラープリントは難しい。思わぬ失敗が多く勉強代が高くつく。あと数箱冷蔵庫にある有効期限切れのフォトラマはしばらく野菜と共に眠ってもらうことにして、サイアノタイプ用途のモノクロームの35mm アナログネガ作成に戻ることにしたい。

(おわり)


2019年09月21日

フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き3)



フィルム・レコーダ(Polaroid Digital Palette HR-6000)で、3¼ x 4¼のピールアパート方式パックフィルム(フォトラマ)への出力を試してみた。HR-6000の35mmフィルムカメラバックに代えて、3¼ x 4¼パックフィルム用フィルムバックと有効期限切れのFuji FP-100C(カラー)を使う。

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3¼ x 4¼フィルムバックは元はポラカラーフィルムを装填するものだが、ポラカラーの代わりに規格が同一のFuji FP-100C(カラー)やB(モノクローム)のパックフィルムも装填が可能である。

ピールアパート方式のインスタントフィルム(Fuji FP-100C。以下「フォトラマ」)はすでに製造中止。多少なりとも安く手にいれるには有効期限が切れた中古品(未使用)に手を出さざるを得ない(有効期限内の品は元の製品価格よりも高い値段で取引されている)。

eBay経由で手に入れたフィルムバックは経年の汚れや曇りがレンズにあったので分解清掃した。ピントの微調整をフィルム面で確認しながら行う必要がある。27年前に有効期限(1992年10月と表示有)が切れてメルカリで千円程度で売りに出ていたFuji FP-100C(10枚撮り)を使った。

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出品者は「室温で置いていたものです」と説明しているのでさらにまともに写るわけはない。ピント確認さえできれば良いということである。

Sigma DP2Sで撮影したものを含めいくつかの画像をテストに用いた。HR-6000用ドライバーソフトのフィルムテーブルから"PolacolorPro100Pack" を選択し、Photoshop上で色温度をフォトラマ指定の5500°Kに合わせる。明るさ設定は普通(0)とし、現像時間は90秒で(iPodTouchのストップウォッチを利用)プリントした。しかし、27年前のポラフィルムはやはり酷い。ポジティブ側にある薬品袋の現像剤が劣化し均等に広がらず以下の結果となった。

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(ネガ部分は灰色に変色劣化した薬剤が不均一に広がっている)


それでも何とか写ったのが以下。

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プリントを頼りにフィルムバックのレンズを微調整しピントを拾って、今度は12年前(2007年7月)に有効期限が切れたフォトラマを使ってテストプリントを行った。こちらはヤフオクから入手したもので出品者の説明では一応冷蔵保存してきたものだそうだ。現像時間を1分45秒としてプリントしたものが以下。

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Sigma DP2Sでの以下画像を使った。

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1940年代にニューヨークのSchool of Modern Photographyで(試し撮りでのいわゆる「ポラして」)作成されたモノクロポラネガ(7" X 5”)にCanon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズで撮影したアナログフィルム画像(拙稿「Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズ(その17)」)をPhotoshopでオーバーレイしたデータを用いた。

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同じく、Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズで撮影したアナログフィルム画像(拙稿「Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズ(その17)」)を元にしたもの。

別項「禁断のFoveon」で触れた通り、鮮明なFoveonをノイズだらけの「デグレ」に帰着させるわけだ。褪せたプリントなど悪趣味だと思う向きが大半だと思う。しかし数値を光に変えてフォトラマ(フィルム)上で化学変化を誘起し・・と、デジタル→アナログ変換で本ブログの「Film Photography」なりのメンツを保つ意味はあった。

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最初からデジタルデータの色情報を3色(RGB)の点に置き換え有機ELで露光し外光を使わないデジタル・プリントである「スマホdeチェキ」や、「スマホdeチェキ」のプリンターにデジタルカメラ(デジタルイメージセンサー)を載せたプリンター付デジタルカメラ「instax SQUARE SQ10」と同じかもしれない。

記録画素数(ピクセル):1920x1920(Instax SQUARE SQ10)、4535x3024(HR-6000, 実用値)
プリント画面サイズ:62mm×62mm(Instax SQUARE SQ10)、85mm×108mm(フォトラマ)
プリント階調:RGB各色256階調・24bitフルカラー、RGB各色256階調+アルファ値・32bitトルゥーカラー(HR-6000)
フィルム形式:シートフィルム方式(Instax SQUARE SQ10)、ピールアパート方式(フォトラマ)

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シートフィルム方式のチェキはインスタ映えするましかく写真(スクエア)として根強い人気がある。しかし、いかんせん62mm×62mmでは小さい。120のネガフィルムとほぼ同じ面積しかない。他方、ピールアパート方式のフォトラマは製造中止となってもそのプリント画面サイズの大きさに利がある。また、ピールアパート方式は乳剤面を剥がす(リフト)ことができるので別の素材に転写(トランスファー)したり、ネガ部分を塩素系漂白剤で洗い出してネガフィルムを作成することができる。クリエーティブな点では、基本プリントしておしまいのシートフィルム方式のチェキよりも数段面白い。






つまり、ピールアパート方式のフォトラマは「一粒で二度美味しい」わけだ。

上述のモノクロポラネガ(7" X 5”)もその副産物だが、別項「サイアノタイプ 」では引き伸ばし機にかけてアナログネガとしてプリントに用いることもできる。

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ピールアパート方式のポラフィルムを使うのは学生時代以来(1970年代)である。引っ張り加減やら、もうすっかり忘れかけていた指先の感覚が蘇る。露出時間を「いちにさん・・」と口で数えたものだ。ポラロイドカメラの代わりにフィルム・レコーダで再会し十分楽しむことができた。いずれトランスファーにも挑戦したいと思う。

ピールアパート方式のフィルムパックは未だ入手可能とは言え、製造中止となってデッドストック分が消費されればそれでおしまい。クリエーターの声に応えてフィルムメーカーが再製造するとは思えない。大量消費ゴミ捨て時代の遺物であることはそのプリントの後に残るゴミ(金属製のカートリッジ、剥離紙など)の多さですぐに気付く。メーカーがエコなご時世に反する製品を復活させるとは到底思えないからだ。

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ゴミと褪せたプリントに過ぎ去った時代を思い返す。これもアナログプリントの良さかもしれない。

(おわり)


2019年09月09日

フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き2)



ポラロイド CI-5000S(デジタル・フィルム・レコーダ)に引き続き、上位機種である HR-6000(中古品)もヤフオクで千円札数枚にて落札した。

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”ポラロイド社のフィルムレコーダーHR-6000は、同社がフィルムメーカーでもあるため撮影時のフィルムはいろいろと選択出来ます。すなわち、通常のISO 100, 200等のスライドフィルムに加え、ポラロイド社の35mmインスタントフィルムであるPola Chrome、Pola Blue等のほか、TYPE339, 331といった自動現像タイプ、TYPE661, 691といったピールアパート(撮影後引き剥がす)タイプ、更に、TYPE554, 559等の4"X5"タイプのインスタントフィルムまで使用できます。 HR-6000には、MAC対応機とWINDOWS対応機 とがありますが、ドライブソフトの違いだけであり、それぞれ背面のSCSIコネクタ、または、パラレル(セントロ)コネクタにより接続されます。CRTは3.5インチで、4,096ドットの解像度、33ビットカラーの性能を持っています。撮影時間も従来の機種に比較して短くなっています。また、ダイナミックフォーカスの採用により、以前のCI-5000Sに比べてスライド端部のシャープネスが良くなっています。”
(「フィルムレコーダーについて」(株)カラー マーキングファクトリー記事引用)

「撮影時のフィルムはいろいろと選択出来ます」とあるように、フィルム・テーブルはCI-5000Sよりも選択肢が増え35mmのモノクロームフィルム(ネガ)も加わっている点がHR-6000をさらに購入する動機となった。

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落札し届いた本体外観はCI-5000Sと全く同じ。付属の35mmのカメラバックも同じだが、CI-5000Sで無銘のレンズが今度のものはPolaroid 36.6mm, f/4.9(6群)と銘記がある。

さっそく本体のシャーシの内部を点検。内部の構造はCRTから基板までCI-5000Sと全く異なっていた。遮光防塵の為にCRTには黒いウレタンが分厚く巻かれている(CI-5000Sと異なる)。このウレタンが経年劣化・加水分解し綿状のタールと化していた。湿った綿あめのように触れると途端にべったりと指先が黒くなる。その真っ黒な綿あめが今にもその下の基板に垂れ落ちそうになっていた。掃除機と綿棒で慎重に取り除き、CRTの表示面をエアブローして埃を払い百均のエアコン用防塵フィルタ(マイクロ繊維)を巻きつけて対処する。

電源を投入し、PowerBook G3 Wallstreetとドライバーソフトを介して正常に動作することを確認した。

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CI-5000SのフィルムテーブルにはなかったモノクロームネガはFuji Neopan 100とKodak TMAX 100。それぞれの設定でテストデータを送信し、フィルターを観察するとBだけで露光することが判った。モノクロームの元画像がRGBのデータを持っていてもBの一色一回の露光ということである。そもそもの用途がプレゼンテーション用スライド作成で、BをRとGにコピーしてモノクロ画像として表示するとノイズが見やすくなるようなので、明暗だけのレントゲン写真を貼り込むにはこれで良いのかもしれない。

サイアノタイプ(別項)のモノクローム・アナログネガ作成が私の用途ゆえに、テーブル上の使えそうなフィルム設定毎に露光テストを試みてみた。実際に35mmフィルムに写真データを焼くのではなく、カラーフィルター 越しにCRTをデジタルカメラで接写撮影(バルブ撮影)して確認する方法を取った。SONY NEX-3に25mm超広角のCarl Zeiss Flektogonを装着し三脚にのせてF11で撮影。

ネット上から拝借したテストチャート(「デジカメ内蔵用テストチャート (グレースケール & カラーバー)  (C15)」)と、写真家Maurice Couvratの乾板(1920年代頃)をEPSON GT-X980でスキャンしたデータを使った。ポラロイドのドライバーソフト(デジタルパレット v4.2.1)上の明るさ設定・絞り-1/3、普通(0)、+1/3のそれぞれで比較を行う。

先ずはカラーチャートでのモノクロームネガ・Kodak TMAX 100とFuji Neopan 100との比較:
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カラーリバーサル・Fuji Provia 100とFuji Sensia IIとの比較:
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カラーリバーサル・Konica Chrome R-100とカラーインスタント・Polachrome HCとの比較:
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カラーネガ・Kodak Gold Plus 100とカラーリバーサル・Kodak Dyna EX100との比較:
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(チャートの赤色はKodak Gold Plus 100が最も再現性が高かった)

この比較結果から、実際にパラメータが利用できそうなフィルムは以下の通りと私なりに判断した。
モノクロームネガ(B露光)
Fuji Neopan 100
Kodak TMAX 100
カラーリバーサル(RGB露光)
Kodak Dyna EX100
カラーネガ(RGB露光)
Kodak Gold Plus 100

これらのフィルム設定でさらにチャート比較を行った。
グレースケールチャートでのモノクロームネガ・Kodak TMAX 100とFuji Neopan 100との比較:
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カラーリバーサル・Kodak Dyna EX100とカラーネガ・Kodak Gold Plus 100との比較:
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最後にCouvratの写真を使って
モノクロームネガ・Kodak TMAX 100とFuji Neopan 100との比較:
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Kodak Dyna EX100とカラーネガ・Kodak Gold Plus 100との比較:
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Couvratの写真での比較を見る限り、Fuji Neopan 100(普通0または+1/3)、Kodak Gold Plus 100(-1/3)が私の用途では使えそうに思えた。そもそも四半世紀前の代物で長らく放置されキャリブレーションもしていないわけだから、本来の製品設計値の比較になっていないことは判っている。また、比較はあくまでもデジタルカメラ上なので、Kodak TMAX 100かFuji Acros100などのモノクローム・ネガフィルムでどう化学するのかは別なのかもしれない。あとは実際に焼いてみるだけ。追って報告したい。

(おわり)