2018年10月20日

マツダ・デミオ XD Touring (2WD/AT 2016年改良モデル)- その2



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オカルトチューニング

車好きなら知っているかもしれない「トヨタの"オカルトチューニング"」。
アルミテープをボディに貼るだけで空力が改善すると、トヨタ(広報)が大真面目に発表したチューニング方法である。このアイディアは国際特許出願(PCT/JP2014/072682("車両およびその製造方法"))され、日本に国内移行された出願については特許となっている(特許6168157号)。

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(特許6168157号)

「車体が正の静電気を帯電することに起因して、正の電荷を帯びた空気流が、車体の外表面から剥離することを抑制することができる車両およびその製造方法を提供することを(発明の)目的とする。」とあり、その方法に用いるのはアルミホイールテープであって、「導電性アルミニウムホイールテープなどを、コロナ放電が生じるように外縁部や外周壁面に鋭利もしくは尖った角部が形成されるように切断したものであってもよい」という。

特許発明であることからしてオカルトで括るのは誤りかもしれない。事実、トヨタ自身、"純正"アルミテープを発売し売れ行きも好調のようだ。

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車好きの集まるみんカラは、このオカルトチューニングの話題で盛り上がっているようだ。トヨタ"純正"アルミテープを施工せずとも、百均やらホームセンターやらのアルミテープ、または台所用のアルミ箔でも適用できるようだが、その効果の程はみんカラのレビューを見る限り「プラシボ」から「体現」迄様々なようだ。

この"オカルトチューニング"に投資したとしてもアルミテープ代としてはたかが知れていることもあって、効果が体現できなくともトヨタにクレームを言う人はいないので至って平和なチューニングである。

従って、お札かお守り程度に貼って自己満足とする人が多い。しかし、中には実際に車の挙動が変わった、燃費が改善したなどとレビューする人もいるようなので「本当なのかもしれない」と布教に励む信者も現れるから面白い。

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「車体が正の静電気を帯電することに起因して」「樹脂部品の表面と空気との間に斥力」が発生し空力性能が悪化する、は何も車に限ったことではない。

「人間の皮膚は、年齢が増すにつれて電気抵抗が増加することは良く知られている。上述のことを考慮すると、上述のことを考慮すると、肩こり、しこり等の痛みの発生原因の一つとして、年齢が増すにつれて皮膚の電気抵抗が増加し、これにより生体電荷の放出がうまく行われなくなってしまうことが考えられる。本件発明者は上述した考えに基いて、患部に蓄積された生体電荷をスムーズに放出するようにすれば、肩こり、しこり等を解消することができるとの結論に至った。」「薬物により患部の消炎、鎮痛、および血行促進をはかるとともに、患部に蓄積された生体電荷の放出を促進するための成形パップ剤を提供することを目的とする」発明も特許を取得している(特許2831596 "整体用生体電荷除去シ−ト"、特許2831597号 "生体電荷除去機能を有する成形パップ剤")。

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特許・実用新案番号照会(詳細表示)|J-PlatPat.jpg


電荷の放出がうまく行われなくなると「肩こり」が生じるのは車も人体も同じようだ。なんとも面白い。つぼを探って針を打つ鍼灸も言ってみれば、「患部に蓄積された生体電荷をスムーズに放出する」施術である。針の代わりがアルミホイールテープで車に鍼灸を指南するのが世界のトヨタ自動車工業ということだ。

車も人体も同じならば、人体にも車よろしくアルミテープをペタペタ貼れば良さそうなものだが、そんなことをせずとも、上述の二件の特許発明をもとに製品が発売されている。それが「放電灸(株式会社伸興)」ということらしい。1箱4シート24枚入で1,260円(税込)。

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発明者の一人である阿竹 實氏は工業デザイナーとして活躍されていた方のようだ。自身末期ガンに罹り免疫力を高めて克服したそうだが(「末期がんを免疫力で克服した体験記」)、この過程で「まさか後年、自分の癌治療に使うことになるとは思ってもみませんでした(阿竹氏)」とするものが、阿竹氏自身の特許発明をもとにした「放電灸」である。

「放電灸」のネット(アマゾンなど)での評判は上々。「年齢が増すにつれて電気抵抗が増加」している私も物は試しと一箱購入してみた。「患部に蓄積された生体電荷の放出」はこのパッチ状の「放電灸」を貼って2〜3日持続するようだ(貼ったまま入浴可能)。消炎効果のある薬物の有効性がこの範囲なのかもしれない。貼った前後で体感が違う。それが薬物の効果なのかそれとも「患部に蓄積された生体電荷の放出」の効果なのかは定かではないが、貼付した腰部の痛みが少し和らいだ。単なるプラシボ効果であるのか本当に改善されたのかは、しばらく使って確かめてみたい。

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「導電性物質を混入した糸状体、または炭素繊維等」がパッチの基体に含まれ、開口部に設けられた微細な突起から空中にコロナ放電される仕組みは、アルミ=導電体で切欠部分から空中に放電するトヨタ"純正"アルミテープと同じだろう。

そこで、「放電灸」を私の体ばかりでなく、車にも用いてみることを思いついた。さてどうなることになるやら。

(おわり)

posted by ihagee at 10:56|

2018年10月16日

マツダ・デミオ XD Touring (2WD/AT 2016年改良モデル)- その1



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DPF再生問題

軽油を燃料とする内燃機関であるディーゼルエンジンには技術的課題が存在する。NOx(窒素酸化物)とPM(粒子状物質=カーボン)との間の技術上のトレードオフである。

NOxは大気汚染(酸性雨)や健康被害を、PMは呼吸器疾患や癌をもたらすとされる。シリンダ内の燃焼温度を下げるとNOxは減るがPMは増加、上げるとPMは減るがNOxは増加、という二律背反関係(トレードオフ)である。具体的にはNOx をエンジンで下げて PM 低減にDPF(Diesel Particulate Filter) を使う方法と、PM をエンジンで下げて NOx 対策を触媒で行う方法のいずれかが採用されている.

前者の方法が「クリーンディーゼルエンジン」と総称され、低圧縮で燃焼温度を下げるマツダの「SKYACTIV-D」もその一つである。ちなみに、燃焼温度を上げてPMを低減し、それによって増加したNOxをケミカル(尿素→アンモニアガス)で還元除去する後者の方法は「尿素SCRシステム」と総称され、ベンツの「BlueTec」がその一つである。

「SKYACTIV-D」と「BlueTec」を比較すると、前者はNOx吸蔵還元触媒の再生のために追加の燃料噴射(ポスト噴射と呼ばれる)を行うため、燃費の悪化や軽油によるエンジンオイルの希釈(潤滑・清浄性能の低下)が問題となるが、後者はそれらの問題が発生しない。前者はNOxを排出しないが、後者は実走行において規制値を大幅に超えるNOxを排出することがある。ディーゼル本来のトルク感は後者の方が勝っている。

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トレードオフとは、一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことで、「SKYACTIV-D」ではNOxを減らす引き換えにPMの機関内の堆積を前提とし冗長化のための予備装置としてDPF(Diesel Particulate Filter)を組み込んでいる。「BlueTec」で要求される尿素水タンクおよび噴射システムに加え、システムの前後段に酸化触媒を装着するなどの機構上の複雑化・コスト増、高圧高温燃焼に耐える為のエンジンの強度設計による重量増や尿素水の取り扱いなどメンテナンス上の問題をクリアする技術こそが「SKYACTIV-D」だそうだ(以下、マツダの技術説明)。









上掲のビデオでの説明はあくまでも技術面の理論と検証。NOxとPMとの間のトレードオフはオフセットされている。しかし「SKYACTIV-D」を搭載した車の現実の運用において、NOx問題は解消したが、PMの対策は必ずしもそうでないことが判ってきた。不具合の対象がDPFであったりリコールの対象がインジェクタ絡みであることからも明らかだろう。どうもその辺りに課題が残されているようだ。

DPFはディーゼルエンジンの排気ガスを浄化処理する排気浄化装置で、フィルタで排気ガス中の微粒子(PM)であるスス(soot)を捕集し、フィルタに捕集されたススが所定量以上となったときに、燃料を過度に噴射してススを焼き切ってフィルタ自体の再生(DPF再生)を実施するものだ。ススはカーボンが主体なので条件を整えれば完全燃焼し、結果としてフィルタの目詰まりは解消するということらしい(燃焼するススばかりではなく、燃焼しないエンジンオイルの燃えかす=アッシュもDPFマフラーに堆積する)。

軽油は灯油と実質同じなので、昔、灯油ストーブを使っていた頃やっていた「から焼き=芯の中まで熱を通して溜まった不純物を除去する」と同じことをDPF再生は行うのだろう。から焼きせずにストーブを使い続けると不完全燃焼を起こす。

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しかし、この予備装置たるDPFが何の問題もなく完全に機能(再生)するか否かがドライバー次第ということであれば、話は異なる。マツダのディーゼル車をこれから購入しよう思っている人はこのことを予め知っておいた方が良い

ススの堆積を前提とする限り、フィルタに捕集されたススが所定量以上となった時点で適宜DPF再生を確実に行わなければ、ススが過堆積となりエンジンに構造的なトラブルが発生する(燃費悪化・出力低減など)可能性が増え、最悪、オンロードで立ち往生ともなり兼ねない。

しかし、このDPF再生を確実に行う為にはエンジンを一定時間、高回転させその間過度に燃料を吹き付けてススを焼き切る状態が必要となる。DPF再生は車の側(センサ)がその必要を判断して運転中に自動的に行うものだが(再生中はi-Stopの表示が消えるなどしてドライバーに再生中であることが伝わる仕組みになっている)、その意味でDPF再生を確実に行うこと自体はドライバーに委ねられている。燃料を噴射する部品であるインジェクタの構造上の問題やらスス汚れについてはメーカー側に再生・交換の責任がある(実際、この部品自体がリコールの対象ともなっている)。

尤も、DPF自体についてもトラックなど商用車では取り外して、中に堆積したススやアッシュを洗浄したり、場合によってはDPFそのものを交換したりすることは普通のようだ。


(DPFマフラー洗浄の様子)

その業務を請け負う会社もある(DPFドットコム)。デミオのDPF洗浄例が同会社のサイトに掲載されているが、本来であればこれが根本対策なのかもしれない。「SKYACTIV-D」で解消しない問題は現実として存在しており、DPF強制再生だけでなく取り外して洗浄するメンテナンスもマツダは本来提供すべきではないだろうか?


(DPF強制再生の様子)

クリーンディーゼルを一般大衆にも普及させたいと願うのであれば、このような根本対策まで業界団体(クリーンディーゼル普及促進協議会など)はしっかり提案できなければならない。また、マツダなどメーカーもサービスの内に含めなければ嘘だろう。そして、その手間や費用まで加味した上でもなお、クリーンディーゼルはエコノミーだと我々が認識できるようにぜひ努力して欲しい。

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「SKYACTIV-D」の範囲でのDPF再生に話を戻すと、買い物に近所をチョイ乗りする程度ではDPF再生は不完全のままで(用事が済んだからと、再生途中でエンジンを止め降車するなどして)、車の側はDPF再生を始終要求することになる(再生周期が短くなる=200〜300 kmが100 km以内になる)。始終要求されてもその再生をドライバー側が完全に終えずにいると(信号待ちのアイドリングやチョイ乗りを繰り返すと)、ススがインジェクタやシリンダ内部に堆積することになる。ススが過堆積となり、また、再生周期が短くなれば、都度過度に噴射される燃料がエンジンオイルに混ざってオイルが希薄化・増量することでエンジン自体を痛め、重大なトラブルに陥る可能性がある(5000 km毎のオイル交換が必要とされるのもDPF再生周期と関係がある)。

中長距離を連続して走るディーゼルトラックや商用車で、DPFを排気浄化装置として採用していればその運用(運転)の過程でDPFは再生されるだろうが(上述のようにDPFマフラーそのものを洗浄するなど)、街乗り主体のマイカーであればその再生(「SKYACTIV-D」の範囲の自動再生)を完全(現実は完全にならない)にするための車の運用(乗り方)が必要ということだ。

この車の乗り方こそがドライバー側の心得。

「ロングドライブに最適」というキャッチコピーは「楽しいですよ」なるアメニティばかりではなく、実は「車の為にたまには遠出してください」とメーカーがドライバーにDPF再生上、求めていることに他ならない。「SKYACTIV-D」のブレークスルーとも言われる技術要素は決して自己完結しているわけではなく、ドライバーの乗り方が大いに関係している(ガソリン車とこの点が異なる)。そして「街乗りやちょっとした買い物に最適」とメーカー側が言わないのも、この乗り方次第のDPF再生問題が絡んでいるからだ。

JAF入会を販売店側が薦めるようだが、ドライバーが係る乗り方ができず、最悪、オンロードでの立ち往生・レッカー移動を想定しているのかと穿ってもみたくなる。しかし、その可能性が現にあるわけだから保険として入会する意味はあるだろう。

自動車が主たる移動手段であり、一回の運転が30分以上といった生活環境ならば「ロングドライブに最適」と言わずとも普段乗りに於いてDPF再生は適宜行われることだろう。しかし、そうでない都会の週末ドライバーに対しては、「ロングドライブに最適」を以て「(車の為に)たまには遠出をお願いします」とメーカー側が言わざるを得ないのかもしれない。犬の健康の為に毎朝一定距離散歩させてくださいと獣医師が飼い主に呼びかけることにどことなく似ている。主従関係が逆転しているが、散歩をさせるのが苦でなく楽しいと思う人が犬を飼うべきで、億劫ならば猫を飼うのが良いわけだが、さしずめ犬がディーゼル車だとすれば猫がガソリン車となろう。

「SKYACTIV-D」の利便性だけでなく、その技術を必要とするトレードオフの利便性ばかりでなく、反面、犠牲となるPMの堆積、そしてそのPMを取り除く為のDPF再生の必要性(重要性)もメーカーはカスタマーに十分説明しなくてはならない。「街乗りやちょっとした買い物にはどちらかと言えば向かない」と最初からはっきり言うべきだろう。ガソリン車では要求されない車の運用の仕方やメンテナンスの特殊性・サイクルを説明した上で十分納得したカスタマーに対して車を売るべきだ。質問されれば答えるのではなく、メーカーのホームページにもまた販売店のパンフレットや営業マンの説明でも先ず「この車にはメンテナンス上、必要な乗り方があるのです」と触れるのが説明責任。

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我が愛車(ヴェロッサ)は15年超の車歴ながら今までエンジンに何一つ不具合を起さず、私に何の車の特別な運用(運転)の仕方も求めず、日常生活上、下駄履のように普通に使え、普通に走ってくれた。定期的な点検と整備さえ怠らなければ何の心配もない普通の車だった。おそらくこのままメンテしながら乗り続けても20万キロは問題なく走るだろう。丈夫で壊れないと定評の静かな直列6気筒G型エンジンだが、現行の自動車排ガス等の基準に合致せず、燃費効率が悪く維持費(主に税金)が高く…ともっぱら私の懐事情で手放すのであって、決して車自体に欠陥なり問題があるからではない。車以外のファクターさえなければ手放す必要は全くない。

しかし、手放すことに決めた今、この「普通さ」加減が実は重要なのかもしれないと少し後悔している。この「普通さ」はフィルム写真にも通じている。デジタル写真の方が便利だと判っていても、私と身の丈の合う写真はやはり現物(リアリティ)が目の前にあって光に透かして見えるアナログのフィルムなのだ。一世紀もの間、記録媒体として用いられたこなれた技術であることからも、工業製品中、コモディティの最たるもの「普通さ」の象徴であった。(拙稿「百代の過客」)

内燃機関も少なくとも私の中ではアナログフィルムと同じである。今回はガソリン車ではなくディーゼル車を選択したが、ネガフィルムからリバーサルフィルムに転向したと喩えても良いかもしれない。

リバーサルフィルム撮影の「普通さ」はネガフィルム撮影の「普通さ」とは全く違う。マニュアル撮影で失敗する可能性はリバーサルの方が高い(少なくとも私の腕では)。カメラを操作する側の腕にかかっている。リバーサルフィルムのネガでは得難いリアルな色再現や解像度の良さを利便とすれば、露光域(ラチチュード)の狭さが犠牲となり、その冗長化の手段はカメラの正確な露出の設定であり、カメラを操作する側の手にかかっている。

Rundreisen in Deutschland & Österreich (in Oktober 1991)


Rundreisen in Deutschland & Österreich (in Oktober 1991)


Rundreisen in Deutschland & Österreich (in Oktober 1991)


Rundreisen in Deutschland & Österreich (in Oktober 1991)


Rundreisen in Deutschland & Österreich (in Oktober 1991)


Rundreisen in Deutschland & Österreich (in Oktober 1991)

(1991年ドイツ/オーストリア・筆者撮影・Ektachrome Slide / Minolta 707si /リバーサル(ポジ)スライドは撮影してから20年過ぎても、実に鮮やかな発色を保っている)

ガソリン車にはない、ディーゼル車のDPF再生も第一義的にはドライバーの運転の仕方にかかっているから同じことだ。

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ディーゼルばかりでなくハイブリッドやら電気自動車やら燃料電池車やら、燃費とかクリーンとか謳い文句にする新技術にはトレードオフが存在し、その天秤の利便性(とかくこちら側ばかりが話題になる)とは反対の側の犠牲に消費者にとって「(今までと比較して)普通でない」問題やマナーが隠れている場合が多い。

いずれにせよ、私はディーゼルのデミオ XD Touringを選択した。

ガソリン車とは別の「普通さ」があるとこの先、知ることになりそうだ。それが私にとって「普通さ」に収まるのか否かというところだろう。

愛車(ヴェロッサ)が「普通に走ってきたのに」と悲しげな顔を私に向けている

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「ごめんよ、ヴェロッサ」

(おわり)

追記:
久しぶりに20年以上前に撮影したスライドフィルムをスキャンした。
重い荷物を手にフランクフルト国際空港で拾ったタクシーはおばさんの運転する年代物のゴルフで、黒煙を撒き散らしながら猛スピードで車を走らせ本当に怖かったことを思い出した。NOxもPMも問題にしていなかった時代であれば、ガスもススもマフラーから吹き飛ばす運転で良かったのだろう。車の後ろが煤けても十数万キロ平気で走るディーゼルの経済性は代え難いものがあった。そして今。ガソリン価格が高騰する中、それでもまだ安価な軽油は「クリーンディーゼルエンジン」普及の追い風となりつつある。せっかくの「SKYACTIV-D」も、DPF再生問題がユーザの間でネガティブなファクターにならないようにクリーンディーゼルを普及させようとする側は一層努力してもらいたいものだ。
posted by ihagee at 19:02|

2018年10月08日

さよならヴェロッサ


2009年から乗ってきた愛車を手放すことになった。
愛車とはトヨタ / ヴェロッサ 2.0 20(AT) (2001年)。
ホンダのエアウェーブを新車として購入したものの、売りのスカイルーフの夏場の暑さ(ルーフを閉じていても天井から熱が伝わる)とVTECエンジンの非力さ(ちょっとした坂道発進でずるっと下がる)に音を上げて、中古車屋で交換同然で手に入れたのがこのヴェロッサだった。

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取得早々、ヴェロッサについてのインプレッションをみんカラに以下投稿していた(以下、再録)。

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満足している点:
何より外観でしょうね。フロントのデザインはランチアのテージス、最新のアルファのMiToに似ています。ヴェロッサのキャッチコピーである、イタリアンかどうかは個人の「感性」の問題なので触れませんが、印象的な造形であることは確かです。写真ではかなりアクが強く、嫌みな外観に見えますが、実際に車を目の前に眺めると、不思議ですが、気取ったフォーマルな場所にも乗り付けられる上品さがあると感じます(これは私の主観ですが)。真正面からよりも、斜め正面から眺めるとロングノーズが際立って、かなり格好が良いです。リアも上品にまとめていると思います。インテリアはブラック仕様で、インパネやシート類は全てビター且つスパルタンな感じでまとめてあって好みです。試乗レポートで安っぽい質感の...とか評論した向きもありますが、私には少しもそう感じません。少なくともこのころのセダンは内装にカネをかけていると実感させる出来だと思います。イルミネーションは赤色で、ブラックのインパネとのコントラストでムーディで且つかなりのインパクトがありますが、明度が調整できますので白色光よりもかえって、視認性が良いと思います。操作系は今どきのセダンの整理されてすっきりしたインパネと比較するとスイッチ類が多いのですが、かえって車らしくて私は好みです。デジタルやコンピュータを意識させるインディケータが少ないので、アナログ的でかえって安心感があります。スピードメーター等の計器類の数字や針の造形も良くみると、なかなか良くデザインされています。肝心の走りですが、2.0モデルでもエグゾーストの「ゴー」と低く唸る音がエンジンをスタートすると聞こえてきて走りを意識させてくれます。確かに街乗りではもう少しトルクが欲しいと思うこともありますが、普段乗りでは全く支障がありません。足回りはセダンとしては硬めです。適当にロードノイズを拾いますが、タイヤの問題と思います。ステアリングは個人的に重めが好きですが、まぁまぁ許容できる範囲です。(上級モデルでは車速に応じてステアリングの重さを自動調整するようです)。オーディオはスバルB4に装備していたマッキントッシュ仕様のものと比較して遜色ない位、なかなか良いサウンドを聴かせてくれます(バスが利いた図太い音ですが)。6V直噴なので燃料もレギュラーで済み、そこそこ走ってくれるので(10km/L)、まずまずです。

不満な点:
ノーマルだと、タイヤボックスの隙間があってちょっとアンバランスな感じです。車高を下げればかなりキマルでしょう。フロントのエアインテークはダミーなので無くて良かったと思います。この部分は素直に埋めてしまった方がスッキリした造形で良かったのにと感じることがあります(そうすると、グリル周りはランチア/テージスに似てしまいますが)。高速道路での直進性は今一つと思います。ステアリングの修正が何気なく要求されます。しかし、ジェントルに乗るには困ることではないと思います。気になるような短所はないというのが本当のところです。

総評:
ターボモデルでは中古でも程度の良いものは高値で取引されていますが(走り屋さんの改造でノーマルの仕様のままの車は少ないですが)、こと、ベーシックの2.0L/NAでは60万円前後でかなり程度の良い車が(フル装備で純正のエアロまで付いた車が)手に入ります。以下の理由で、私は個人的にはこのモデルのヴェロッサの中古車はかなりお買い得だと思いますよ。2万台そこそこしか生産されなかったのでユニクロ的に街角で見かけることもなく稀少性がある点も良いと思います。といっても、ベースはMark IIなので保守整備で困ることはありません。ちなみに購入した車は、2001年モデル(約50,000km走行)/4速AT/シルバーメタリック/6連奏CD&MD/純正ナビ/純正エアロ/ETC付のGoo認定車(内外装骨格等5つ星認定)で、本体価格は約67万円でした。社外装備のないノーマルの仕様のままの(2.0NAではそうする必要もないでしょうが)ものです。

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このインプレッションは基本的に今も変わっていない。

しかし、先般、三回目のディーラー車検(8月)を通し、ついに所有し続けることを諦めた。2004年3月以前に登録されたガソリン車ゆえに自動車税は重課算されている上、今回、車検代が20万円近く(車検にかかる諸費用・税金含)に及び、昨今のガソリン価格の急騰に本車の燃費の悪さが手伝って家計を圧迫しつつある事情による。車検上は問題ないもののディーラーが勧める部品の交換が錆びつきを理由にできなかったことが判り、それも手放す理由の一つとなった。

拙稿「発想の転換(“最も古いまだ使用中の家電”コンテスト)」で私自身「廃車にしない分、トータルで見れば環境への負荷は低い」などと、言っておいた手前、手放すとはいえども廃車にはしたくなかった。

しかし、いかに珍しい車だろうと15年超えの車歴・セダンのNAでは中古車屋とも買ってくれそうもない(2.5のターボモデルのヴェロッサなら走り屋さんの改造用として中古市場では立派に値段が付いているようだが)。

乗り換える車はマツダのデミオ XD Touring (ディーゼル・2WD, 2016年の改良モデル)。Bセグメントの車。今回、ヴェロッサを諦めるに当たって、色々と私なりに調べてみたが、このクラスの技術革新は著しく、普通車の領域を侵食しつつあることに改めて気付かされた。その中でもマツダのデミオは技術面だけでなくデザイン性や質感において他社の同クラスの車を追い抜いているように思われる(少なくとも国産車の中では)。幸い、最寄りの関東マツダでオプションも盛られた値ごろな中古車(走行距離1万キロ程度・マシーングレープレミアムメタリック)を見つけたので、購入前提に下取り(買取)査定をしてもらった。

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廃車(スクラップ)と諦めていたのだが、僅かばかりでも値段が付き、下取りとなった。通したばかりの車検は抹消されることになるが、部品単位といえどもなんらかの形で生き残れると判って正直ほっとした。

下取りされる車にはトヨタ純正のスポーツグリルが付いている。

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(元々のグリルを付けた状態の愛車)

トランクルームに積んでいた元々のグリルを形見に貰うことにした。セミの抜け殻の如く部屋を飾っている。

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私は3年前に両親を相次いで亡くした。亡くなる少し前に老いた父母を乗せ富士山の見える場所までドライブし、焼き場からまだ温もりの残る父の骨箱を胸に抱いた母を助手席に乗せ、そして母の急逝にとるものもとりあえず駆け付けたのもこの車だった。車といえども物語が伴えば自然と人格を感じさせるものだ。

新たな車にどんな人格を感じることができるのか・・追々綴ってみたい。

(おわり)

posted by ihagee at 10:07|