2018年05月02日
招き猫の誘惑(Tenax 1)その12
Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズ(その16)の続き。
4月20日は山梨県・明野のハイジの村(山梨県立フラワーセンター)のチューリップが撮影の目的だったが、遠行したついでと八ヶ岳高原にも車を走らせた。そういうこともあろうと、Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1を鞄に入れている。フィルムは今年中にお別れしなくてはならない Fuji Neopan Acros 100(36枚撮)を使い、オレンジフィルターとセコニックの露出計も用いた。
富士フィルムがいよいよ銀塩写真(モノクロ)のフィルム・印画紙市場から撤退するニュースは国産用品によるアナログ写真(モノクロ)の終わりを意味している。今後は海外のメーカーの製品に頼らざるを得ない。アナログ写真の最後の工程=印画紙への焼き付けがデジタルプリントに置換されて、厳密な意味でのアナログ写真というものは存在しなくなった。ネットでいくらアナログ写真を公開しようとも、それはデジタル化された情報であって別物だろう。アナログ写真は印画紙に焼き付けて鑑賞すべきものと考える人なら昔ながらに暗室にこもって引き伸ばし機を使って印画紙に焼き付けを行うだろうが、その最後の望みも富士フィルムは消してしまうと決めた。
銀塩写真の焼き付け用材が手に入りづらくなれば、印画紙を自製しなくてはならない。撮りためたフィルムをいかにアナログで完結させるかという課題もある。サイアノタイプはその回答の一つだが、感光性の悪さから従来、引き伸ばし機は用いることができないとされていた。デジタルネガを作成しコンタクトプリンターで焼き付ける手段であれば、この時点でデジタル工程が入り込む。アナログで完結することができないのである。従って、引き伸ばし機を使えるようにすること(=オリジナルのネガフィルムから直接焼く)がサイアノタイプ愛好者の長年の願いだった。今、私が別項でレポートしているのもこの願いについてである。
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長々と前置きしてしまったが、以下、撮影の結果。
先ずはハイジの村から
逆光でも鷹の目(Tessar)は破綻しない。
クローズアップレンズで花の接写を数枚試みたが、どれもピントが前後してダメだった。なんとか写ったのは以下。周囲がケラれビネットになっているのはご愛嬌。
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ハイジの村を出て、八ヶ岳高原に向かう途中
里の桜が山々を背景に美しく咲き誇っていた。
逆光で撮影したので光が写り込んでしまったが、雰囲気は出ていると思う。
農道から山並みを遠望する
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遠照寺という日蓮宗の古刹のあまりに立派な楼門と赤松に目が留まり、車を降りて撮影。
鷹の目の威力と相乗しAcrosの漆黒の表現力は素晴らしい。佇まいまで写し込んでいた。
一対の松(夫婦松)は山梨県指定の天然記念物(昭和18年指定)だそうだ。幹周りは3mもある。 近距離〜中距離ではフィルター(オレンジ)が干渉してビネットになってしまう。
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俳優の柳生博氏がご子息とともに原野を開墾し築き上げた八ヶ岳倶楽部を訪れた。ここは何度も過去訪れて笑顔で客に対応するご子息の姿もあったが、惜しくも数年前に早逝された。
光と影のコントラストはモノクロームの表現の見せ所。
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Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1を肩からぶらさげて、自生する可憐なカタクリの花を眺め、離れのステージをうろついていたら、このステージで手編みのニットの展示をしていた方から声をかけられた。無垢さんというニットデザイナーのこの御仁はカメラ愛好家で、ニットと合わせてご自身で撮られた花の写真の展示もされていた。カメラ話に大いに花が咲いた。無垢さんのご友人と思われる方がペンタックスの漆塗りカメラを肩から下げて話に加わって、私は大いに勇気付けられた。奥様の協力さえ得られれば目の玉の飛び出るような高額なカメラも手にすることができると・・。協力を未だ得られない私としては夢のそのまた夢だ。
ステージの屋根に空色に塗られた鳥かごを取り付ける作業をしていた。
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この日のベストショット。奥行きを表す構図となった。鷹の目とAcrosがしっかり役目を果たしてくれたと思う。
(おわり)
posted by ihagee at 03:38| VEB Zeiss Ikon Tenax 1
2018年03月10日
招き猫の誘惑(Tenax 1)その11
前回ブログ記事の続き。
難波田城公園で今が盛りの梅花を中心にフィルム撮影を行った(3月3日)。Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1、フィルムにFuji Acros 100 (Neopan)の36枚撮を詰め、Yフィルターと接写レンズも持ち出した。接写時のパララックスを補正するためにRobotのユニバーサルファインダーをTenax 1の艦橋部に搭載している。セコニックの露出計も携帯した。
以下はその結果。
距離は目測ゆえに自信がなかったがその通りの結果で狙った通りにはピントが来ていない。
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露出に注意を払えばAcros 100のネオパンらしい濃密な墨黒を絵にすることができる。
これらは接写レンズを装着して撮った。パララックスはロボットのユニバーサルファインダーでクリアできたが、接写はレンズの深界度が浅いため目測での測距ではなかなか正確にピントが来ない。
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陰影がはっきりした対象物は接写でも絵がまとめやすい。
旧大澤家住宅(市指定文化財)・名主の家ゆえに武家屋敷のように造りが立派。座敷の柱に背をもたせ土間から吹き抜ける春の柔らかい風が頰に心地よい。
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難波田城公園の周囲はのどかな田園が広がる。
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翌日(3月11日)の早朝、彩湖・道満グリーンパーク(戸田市)で撮影。
荒川水循環センターの処理プラントはちょっと見にコンビナート風。間近で撮影可能。なかなかの威容だ。
荒川沿いにサイクリングロードが続く。
プラントを背に彩湖・道満グリーンパークに次々とサイクリストがやってきた。
処理施設の裏手。上手から見下ろすことができる。
東京外環自動車道・幸魂大橋
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その日の午後、志木の旧村山快哉堂を訪ねる。ひな祭りに合わせて地元の神楽の興行があった。明治10年に建てられた漢方薬局をこの場所に移築保存している。
当日は強風。風に大きく枝を揺らす彼岸桜は案の定ピントを外した。
新河岸川では釣り人が糸を垂れていた。水面が美しい。
Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1の鷹の目(Tessar 37.5mm / F3.5)は中遠景に強いが、接写は技術次第だと実感した。Acros 100との相性は良い。中判カメラに負けない24mm x 24mmの表現力をさらに試したくなった。
(おわり)
posted by ihagee at 07:28| VEB Zeiss Ikon Tenax 1
2018年02月20日
招き猫の誘惑(Tenax 1)その10
浅草観音温泉の解体現場の写真を中心に周辺をZeiss Ikon (VEB) Tenax 1(フィルムはKodak T-MAX 400フィルム・モノクローム24枚撮)で撮影した結果を以下に報告。浅草十二階・凌雲閣遺構だと勘違いして撮影していた経緯については前回報告の通り。
(35mmフィルムで今インスタグラムでも流行りの"ましかく写真"が撮れるZeiss Ikon (VEB) Tenax 1・Robotのユニバーサルファインダーを搭載)
(丸い湯船は真ん中で仕切られ、男湯・女湯として使われていた)
(壊される前の浴場の様子・人魚の絵があるので女湯側)
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以下は浅草のスナップ。
(消失点構図・通りの真ん中に立ってカメラを高く掲げて撮った)
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Carl Zeiss Jena Tessar 37.5mm F3.5はやはりモノクロームに真価を発揮する。しかし、カラーもシチュエーションを選べば悪くない(「招き猫の誘惑(Tenax 1)その9」で作例を掲載済)。細々とした景色より海原とか空とか余白のある景色を撮ると何ともレトロな絵になるからだ。
Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1(姉妹機はTaxona)は小さく軽いのが何より。24枚撮りフィルムで36枚程度 "ましかく写真"が撮影可能。

コストパフォーマンスが高いので35mmフィルムで"ましかく写真"を撮りたい向きにはお勧めのカメラ(eBayを探すとリーズナブルな値段で売られている)。革ケース付が良いだろう。カメラが軽いのでストラップの痛みも少ない。
ただし、そのままの状態だと "ある問題" が発生するので簡単な対処が必要(詳しくは、「招き猫の誘惑(Tenax 1)その2」)。
春になったら花を被写体にマクロに再びチャレンジしてみようかと思う。
(惜しくも閉園した赤城クローネンベルクに咲いていたバラ・マクロ撮影)
(おわり)
posted by ihagee at 19:17| VEB Zeiss Ikon Tenax 1