2020年11月14日

サイアノタイプ - その108(引き伸ばし機)



銀塩プリントの代替手段としてサイアノタイプの可能性を本稿ではテーマとしている。

アナログのデータソース(アナログフィルム・乾板)に記録されている情報をそのまま紙に焼き付けること、一般的なコンタクトプリントでは難しい階調や細部の表現にチャレンジすること、その過程はシンプルで且つ費用がかからないこと、そして過去の資源(フィルムなど記録媒体・引き伸ばし機など暗室用品)を再利用できることに理があると勝手に思っている。

感光剤を紙に塗布する段階でいくつか工夫を施すことでプリントに深みと奥行きを与えることができるということも次第に判ってきた。

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Exakta VX1000 - Carl Zeiss Jena Flektogon 2.8/35」の続き。

ネガフィルム(NEOPAN 100 ACROS(アクロス)II)を使ってCotmanの水彩画紙(ポストカード・細目/270g/m2)にプリントをした。

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(Lucky II-C, Nikon EL-NIKKOR 1:28 f-50mm / SMD UV光源)

最初のプリントはF2.8、後はF5.6で各々約五時間露光(トーニング無)。セリアの透明ニスで仕上げた。
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(室内光下で直接プリントの過程を視認可能)

通常はB5でプリントするがポストカード大のプリントの方が難しい。細部が潰れ気味になる。

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(比較:120フィルムを使ってvif Art (B5/細目) での作例 / レンズ:Fujinar-E75mmF4.5)

(おわり)

posted by ihagee at 22:18| サイアノタイプ

2020年06月16日

サイアノタイプ - その107(引き伸ばし機)



銀塩プリントの代替手段としてサイアノタイプの可能性を本稿ではテーマとしている。

アナログのデータソース(アナログフィルム・乾板)に記録されている情報をそのまま紙に焼き付けること、一般的なコンタクトプリントでは難しい階調や細部の表現にチャレンジすること、その過程はシンプルで且つ費用がかからないこと、そして過去の資源(フィルムなど記録媒体・引き伸ばし機など暗室用品)を再利用できることに理があると勝手に思っている。

感光剤を紙に塗布する段階でいくつか工夫を施すことでプリントに深みと奥行きを与えることができるということも次第に判ってきた。

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拙稿「乾板写真の美」で紹介した乾板を使ったプリント。さらに上述の工夫を施すと、
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少し焼き過ぎて暗部が潰れ気味となったがだいぶ先のプリントと趣が異なってくる。

同様に以下比較。
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普通にプリントした場合も、
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となる。
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以上は乾板用引き伸ばし機でのプリント結果だが、フィルム用引き伸ばし機でも同様の表現が可能。

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(おわり)

posted by ihagee at 03:08| サイアノタイプ

2020年06月09日

サイアノタイプ - その106(引き伸ばし機)



先月、民放のとある情報番組でマルマンのスケッチブックが紹介されていた。




その表紙のレトロな意匠が創業百年企業のアイコンともなっているベストセラー品で、どこにでも売っている日用品(国産)。




件の番組ではスタジオのカンペとしての効用(書きやすい・剥がしやすい)が話題となっていたが、安価と雖も私にはいささか勿体無い使い方に思える。そう思わせるほど、高品質な画用紙であることは本稿のサイアノタイプ・プリントで知っているからだ。

B5またはA4の同スケッチブックを使った作例:

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(写真家・Maurice Couvratの乾板(1920年代頃)/ 昭和11年(1936)製ハンザ特許引き伸ばし機 (Anastigmat F=125, 1:6.3) / UV光源 / 露光約五時間)

普段使っているvif ArtやCotmanと発色の色味が異なり同じ青でも黒味がかり、さらにジャスミン茶でトーニングすると全体がセピア調になりコントラストが上がる。

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(Kodak T-MAX 400 / Voigtländer Superb (1933), Skopar 75mm F/3.5 / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約五時間)

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(アメリカ?1950年代撮影120フィルム / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約八時間)

引き伸ばし機の絞りをF8にした(普段は開放)。紫外線の光量が減る分露光時間を要するが細部は緻密に表現できる。

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(積丹美国 / 1950年代撮影120フィルム / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約五時間)

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(夕張・栗山町字日の出にあった新二岐炭鉱。その炭鉱関係者の宿泊施設に面した畑の一コマ / 1955年撮影 120フィルム / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約五時間)

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ジャスミン茶などのトーニングに強い癖があるが、トーニングせずにオキシドールで仕上げる分にはそのブルーブラックの色味は好みかもしれない。紙の表裏を気にせずプリントするが(このスケッチブックは表紙の表裏が全く同じデザインゆえ、どちらを表にして使っても良い仕様になっている)、vif ArtやCotmanなど水彩画紙に比べさすがに紙の厚みがないので感光剤の染み込みが浅くあまり丹念に水洗するとハイライト部分で色抜けをしてしまう。より緻密に仕上げたいのであればやはりvif ArtやCotmanが相応しい。

(おわり)


posted by ihagee at 03:00| サイアノタイプ