2021年01月02日
サイアノタイプ - その114(引き伸ばし機)
LPL Model 7451の続き(「サイアノタイプ - その113(引き伸ばし機)」)。
元にあったディフューザ・ボックス(散光箱)に代えてスポットライト用のフレネルレンズ、Aputure フレネル 2xを使い機能的にコンデンサレンズと同様の集散光となるようLPL Model 7451を改造し、4" x 5" 用のレンズ(4×5判 1.6〜5.8倍 大全紙)であるFujinon-EX 135mm f5.6で無理やり35mmフィルム(135フィルム)をプリントした迄は前回の記事の通り。ヘッドを最大に引き上げてB5の紙にプリントするのが精一杯だった。35mmフィルム(135フィルム)はやはり50mm焦点のレンズを用いるべきだろう。
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6x6(120フィルム)でさらにプリントを行った(vif Art / B5 H.P. surface) 。
いずれも1950年代の美国(積丹)で撮影された120ネガフィルムを用い、二時間と五時間それぞれ焼き付けを行いジャスミン茶でトーニングを施した。後者のプリントは銀塩写真に近い雰囲気を再現している。
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次にガラス乾板を使ってプリントを行った。LPL Model 7451は最大4" x 5"(インチ)迄対応するが、4" x 5"より大判の乾板も枠穴に収容可能ゆえ、5" x 7" の乾板でも部分を拡大するのであればプリントできる。昭和11年(1936)製乾板用ハンザ特許引き伸ばし機では枠穴に余裕がないので、5" x 7" を差し込むことはできても動かしてプリント範囲を調整できなかったが、LPL Model 7451ではそれが可能である。
全身または半身のポートレイトのバストアップからさらに拡大して顔だけをプリント(vif Art / A4 H.P. surface) 。
1880年代〜1920年代のガラス乾板を使い焼き付けは約五時間、ジャスミン茶でトーニングを行う。視線を合わせない被写体の物憂げさを表現できた。
比較(ハンザ特許引き伸ばし機/Anastigmat F=125でのプリント):
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5" x 7" サイズのガラス乾板で被写体の全身が4" x 5"内に収まっていれば、全身のプリントは可能。しかしFujinon-EX 135mm f5.6ではさすがにピントを合わせると四隅に光が回らずビネット調になるので、半身をプリントした(vif Art / B5 H.P. surface) 。
1920年代のガラス乾板、五時間焼き付けてジャスミン茶でトーニングを行う。このプリントでも銀塩写真に近い雰囲気が再現できた。光源を50Wから100Wに代えたことは(共に395nm)プリントの白抜けの良さに貢献しているように思える(焼き付け時間は然程短縮されない)。
(おわり)
posted by ihagee at 12:02| サイアノタイプ
2020年12月28日
サイアノタイプ - その113(引き伸ばし機)
ヤフオクで僅か1,500円で入手した散光式 4" x 5" (大判)引き伸ばし機 LPL Model 7451の続き(「サイアノタイプ - その111(引き伸ばし機)」)。
”SMD UV光源を配置するには元からある散光板箱は物理的制約が多い。代替となる手段でハタと思いつくモノがあった。”
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その代替とはスポットライト用のフレネルレンズ、Aputure フレネル 2x である。
本来の用途はBowen-Sマウントライト(高輝度LED光源)に取り付けて、撮影対象への光強度の拡大・照射角度(ビーム角)を変更を行うことにある。点光源で直進性が高いLEDはそのままでは照射角度が狭いがフレネルレンズを介することでムラのない光を照射することが可能。Aputure フレネル 2xはフレネルレンズの手前に6インチの集光レンズを配しビームを集束することで光強度を2倍に拡大するので、機能的には集散光式引き伸ばし機のコンデンサレンズと同じことになる。その為にはAputure フレネル 2xの開口部分、6インチの集光レンズにUV LEDユニットを近接配置しなければならない。集光レンズに光源が遠いほど集光が不足するので、Aputure フレネル 2xの開口部分にUV LEDユニットを埋設する構造を考えなくてはならない。UV LED自体も引き伸ばし機の大きさに応じて、本稿で用いてきた50w 395nmのSMDから100wのものに変更する必要があった。放熱用のクーラー・ヒートシンクおよびドライバ(電力制御)が当然必要となる。
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AliexpressからAputure フレネル 2x(純正品)およびUV LEDユニットその他諸々を購入。セラーは購入者の評価も高く且つ価格も安い上に発送は迅速。Amazonと比肩する勢いのAliexpressの凄さを実感する。
届いたヒートシンクは約9cm径のAputure フレネル 2xの開口部分よりも大きいので、収まる大きさにアルミのシンクを切削加工し、100w 395nmの UV SMDユニットを取り付け(このユニットには集光角度60°のレンズが付属する)、前述の6インチの集光レンズに近接させる。Aputure フレネル 2xはバレルを回転させることで12°から40°までのビーム角を変えることができるが、開口部分はマウントゆえに共に回転しない。
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斯くしてLPL Model 7451にSMD UV光源を組み込みテストプリントを行った。ネガは敢えて35mmフィルムを用いたが、このネガは「フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き)」で触れた通り、ガブリエル・レイ(Gabrielle Ray)のコロタイプのポストカードを元にフィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)で作成している。
LPL Model 7451に付いているFujinon-EX 135mm f5.6は4" x 5" 用のレンズで35mmフィルム(135フィルム)を引き伸ばそうとすれば、当然ヘッドを高く上げて印画紙との距離を100cm程度にまで広げなくてはならない。その場合、印画紙に届く紫外線量は少なくなるが100wに強化した光源および光強度を2倍にするフレネルレンズでいかなる結果となるか・・・。
(上:今回 / 下:従来)
vif Art B5(smooth)で約二時間焼き付けて完成。従来、同じ寸法にプリントするには、レンズ(50mmまたは75mmレンズ)と印画紙の距離は40cm程で焼き付けに五時間程かかっていた。プリントの結果も従来と比較して、階調や白抜けも改善されているように感じられる(いずれもトーニング無)。
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4" x 5" のネガ(ガラス乾板又はフィルム)のプリントに期待がかかる。その結果は次回。
(おわり)
posted by ihagee at 08:19| サイアノタイプ
2020年12月13日
サイアノタイプ - その112(引き伸ばし機)
昭和11年(1936)製乾板用ハンザ特許引き伸ばし機はM31スクリューマウント(ライカマウント)のAnastigmat F=125を木製のレンズボードを介して使っている。予備にもう一組レンズボードがあるので、通常のM42レンズを装着可能に改造してみた。

(レンズボード:左=M42用に改造したもの、右=M31、オリジナル)

元来、手札判サイズ(8×10.5cm)の乾板用の引き伸ばし機だが、120フィルム(6x6)用のFujinar-E75mmF4.5でも4" x 5"の乾板まで引き伸ばしに使える(5" x 7"も可能だが全体をプリントすることはできない)。戦前のAnastigmat よりも設計が新しくレンズ自体の造りも状態も良いのでシャープな像を得ることができる。数枚プリントを行った(印画紙はいずれもCotman Water Colour Paper (B5/ Smooth) )。
(1900年頃の5" x 7"乾板でのプリント過程と作例)
通常、五〜八時間程度かかる焼き付けが上掲の場合は二時間で済み、ジャスミン茶でトーニングを行ってほぼ理想通りのプリントが作成できた。5" x 7"ゆえ、全体をプリントすることはできないがポートレイトならバストアップで済む。
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(東京:1920年頃の4" x 5"乾板でのプリント作例)
(長野:1920年頃の手札判サイズ乾板でのプリント作例)
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乾板ではなくガラスのキャリアを使ってフィルムも試した。
(国営武蔵丘陵森林公園:Voigtländer Superb(前期型)で撮影した 120フィルム(Kodak Tri-X 400)を使う)
(1930年頃Vermont metal milk jugs:1 3/4" x 2 1/2" フィルム)
レンズを交換しただけだが、プリントの階調や鮮明さが増したように感じられる。黒みが増すなどトーニングにも良い結果をもたらしているようだ。
(おわり)
posted by ihagee at 19:24| サイアノタイプ