2019年07月12日

サイアノタイプ - その84(引き伸ばし機)



引き伸ばし機(Lucky II-C)の架台に10WのSMD UV光源を内臓したFujica Birdie Kit3を吊るしてのプリント(拙稿「サイアノタイプ - その73(Fujica Birdie Kit3)」は面白いが、やはりスライドプロジェクターのレンズでは細かなピント合わせができない。

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(Lucky II-C & Fujica Birdie Kit3)

Fujica Birdie Kit3は単体でプリントできるので、Lucky II-Cを元に戻し、35mmフィルム用のLucky Attache-35に搭載していた30WのSMD UV光源を組み合わせた。コンデンサーレンズはLucky II-Cに元から付いているものを利用(引き伸ばしレンズ:Fujinar-E75mmF4.5)。

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(Lucky II-C & 30W SMD UV光源)

フィルムキャリアを用いればLucky II-Cで120と135(35mm)フィルムの両方がプリント可能。二台所有するVoigtländer Superbのうち後期型(1935年製)で撮影した120フィルム(Kodak 400TX)を使ってプリントしてみた。撮影場所は羽田空港沖に面した公園(森ケ崎公園界隈と京浜島つばさ公園)(2017年4月16日早朝)で、前期型と共にレストア後のカメラテストで撮影した一コマとなる(拙稿「Voigtländer Superb 顛末記 - その11」)。本ブログのVoigtländer Superb項で掲載の写真に後期型の作例が少ないのも、ビューレンズの組み込みに難があり明らかなピントズレがあるからだ。その中から以下の一コマをプリントに使った。

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(EPSON GT-X980でフィルムスキャン)

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ウィンザー&ニュートン コットマン パッド 細目(B5)に、豆乳&感光剤を刷毛塗りし、トーニング無しで仕上げた(露光二時間)。

さらに一枚。1950年代に撮影された東京・日本橋の風景がある一コマ(120フィルム)。1964年東京オリンピックに向けた再開発によって首都高の高架に覆われる以前の日本橋である。背景に辰野金吾設計の帝国製麻ビルが写っている。大正元年竣工の赤煉瓦の建物は関東大震災と戦災もくぐり抜けたが、オリンピックに先立つ都市改造によって敢え無く壊されてしまった。東京駅丸の内駅舎(重要文化財)もこの人の設計だが、あの時代は経済価値が優先していたのだろう。それは今も変わらない(「日本橋界隈」『「五輪」という破壊』)。

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トーニング(コーヒー)が過ぎて、全体に眠い絵になった。何事にも按配があるものだ。

さらに一枚。

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1972年撮影のドイツ国鉄52形蒸気機関車である(35mmフィルム)。これは英eBayから購入した。トーニングの結果もまずまず。

35mmフィルムを重ねてみた。UV光源の引き伸ばし機ならば、このレガシーな記録媒体をサイアノプリントに活かすことができる。

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52型は7000両以上製造され、戦後復興に西ドイツのみならず東欧圏でも活躍したようだ。052-440-5のプレートのこの機関車は模型にもなっている。独墺の鉄道模型は量産型の機関車であろうと百科的に網羅しているが、その徹底ぶりと鉄道模型趣味はゲルマン人の国民性なのだろう。いや、模型に止まらず動態保存で実際に走らせているが、その本気度やスケール感は凄いものがある。黒い森の狩猟民族に稲田にカエルの我ら農耕民族は全く敵わない。





機関車のフィルムは他もいくつかeBayを通じて購入したので追ってサイアノでプリントしてみたい。

(おわり)


posted by ihagee at 08:50| サイアノタイプ

2019年07月09日

サイアノタイプ - その83(引き伸ばし機)



SMDのUV光源を使ったサイアノタイプの続き。

タンスの中で眠っていた二年前の感光剤(Jacquard Products社:Jacquard Cyanotype Sensitizer Set A剤、B剤)を豆乳(無添加)に混ぜ、ウィンザー&ニュートン コットマン パッド 細目(B5)にスポンジ刷毛で塗布しての作例は前回の通り。刷毛塗りの刷毛目や泡立ちは感光剤が古い場合、露光に影響し汚れとして現れやすい。

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大判のアナログフィルム((MAXWELL - A student at the School of Modern Photography NYC, 1940s photo negative (approx. 7" X 5”) )を昭和11年(1936)製の乾板用ハンザ特許引き伸ばし機 (Anastigmat F=125, 1:6.3)にかけた。

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(露光中)

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(露光=約二時間・完了した状態)

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露光(約二時間)後、コーヒーでトーニングしミョウバン液で定着、水性ニスで仕上げた。深みのある像となったが刷毛目や泡立ちがシミのように残っている。

そこで、刷毛目や泡立ちを起こさないように豆乳の感光剤をスポンジ刷毛にたっぷり含ませて塗布した。面に液溜まりができるが構わずそのまま乾燥。

乾板(Pickerling一族の乾板(1880年〜1890年代撮影))を使う。

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(露光=約二時間、水洗・オキシドール浴後、ミョウバン水に漬け乾燥・水性ニスで仕上げ)

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露光を三時間にして同じ条件でもう一枚プリント。

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ほぼ同じ仕上がりだが、二枚目の方が良い。アナログの乾板に記録されていた情報をグラデーション(階調)の最大範囲で紙面に再現できた。


(Kansas, OlatheのPickering Houseは現在修復中)

(おわり)

posted by ihagee at 04:01| サイアノタイプ

2019年06月30日

サイアノタイプ - その82(引き伸ばし機)



SMDのUV光源を使ったサイアノタイプの続き(引き伸ばし機:昭和11年(1936)製の乾板用ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=125, 1:6.3)。

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UV光を長時間照射することによって、アナログフィルムなり乾板にダメージをもたらすのではないか?と懸念されるかもしれない。使用しているSMDは所謂パーティ用ブラックライトで可視光領域の395nm辺りがピークのようだ(380nmmまでを紫外線という)。サイアノタイプの感光領域は375nmから395nm辺り。375nmでは人間の目には暗く引き伸ばし機に用いるには不適であると共に直接目で光源を見ることは危険。従って、可視光を含むとなれば、パーティ用ブラックライトが引き伸ばし機のUV光源としては最適なのだろう。

太陽光の下、コンタクトプリント(密着焼)でならば数分〜十数分で露光完了となることからして(曇天下でさえ)太陽光はいかに多く紫外線を含んでいるかが判る。さらに太陽光には熱線(赤外線)も含まれている。

本稿で採用のパーティ用ブラックライトから転用したSMD UV光源は太陽光に比較にならない程、弱い紫外線で且つ熱線が含まれていないため、長時間の照射であってもネガにダメージを与えることはない。カラーネガであれば変色の可能性があるかもしれないが、サイアノタイプの場合、モノクロネガなので変色を心配する必要もなく、今のところフィルム・乾板ともにUV光源ゆえのダメージは一切見られない。

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とは言っても長波長紫外線(UV-A)である。イーゼルの露光面でピントを合わせる際にフォーカサーを用いるが、直接ファインダーを覗くのは危険。iPod Touchのカメラレンズをフォーカサーの接眼部に取り付けて、液晶越しにフォーカシングを行っている(小穴式ピーク・引伸用ピント・ルーぺI型(No. 2000))。作業中、紫外線カット・コーティングしたメガネをかけていることは言うまでもない。

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(iPod Touch液晶画面)

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感光剤(Jacquard Products社:Jacquard Cyanotype Sensitizer Set)の古い使い残しのボトル(A剤、B剤)がタンスの中で眠っていた。作ってから2年半経過。それぞれ1/3ほど液剤が残っていたが、防腐剤が入っていない液剤なので、クエン酸アンモニウム鉄のB剤の液面は糊状の膜が張っていた。このまま捨てるのも勿体無いと、シリンジのニードルを突っ込んでA, B共に2ccを採取し、豆乳(希釈せず)と混ぜて、ウィンザー&ニュートン コットマン パッド 細目(B5)二枚にスポンジ刷毛で塗布してみた。この状態では現在使っている液剤と変わらず塗りムラもなく未だ使えそうな雰囲気。

乾燥後、トウモロコシの束を撮影した乾板(Pickerling一族の乾板(1880年〜1890年代撮影)の一部)を使って一枚プリントしてみた。

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露光してすぐに、ボツボツと黒い点が現れた。古い感光剤ゆえか?どうにも気になるのでシャドーが潰れることも覚悟で敢えて露光時間を長くする(一時間半)。水洗後、トーニング(コーヒー)とミョウバン液浴を繰り返し最後にオキシドールをスプレーし水洗。生乾きの状態で百均の水性ニス(光沢有)をスポンジ刷毛で塗って仕上げた。

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結果は良好。素材とトーニングが合っている。シャドーに深みが出ているのはサイアノ液剤を豆乳と混ぜて塗布したせいか?デジタルネガのコンタクトプリント(密着焼)のような、メリハリ=明暗比(明るい部分・暗い部分の明暗の差)感もありながら、微妙な階調も表現されている。

捨てようと思っていた液剤だが思わぬ効果に残りも同様に楽しめそうである。

(おわり)


posted by ihagee at 18:06| サイアノタイプ