2017年04月08日

Voigtländer Superb 顛末記 - その10


4月2日、国営武蔵丘陵森林公園でのVoigtländer Superb(前期型)の作例(Kodak Tri-X 400)。当日は未だ桜が咲いておらず、モノクロームに似合う被写体を探しに木立の間に分け入った。𣏓木や倒木、切り株など材料には事欠かない。尚、同日はExakta RT1000でも撮影したがその結果は別に掲載したい。

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Yフィルターと純正のフードをつけて逆光もトライする。ピントタブの指掛りはナカナカ操作感が良い。
以下作例(Scanner: EPSON GT-X980):

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(この切り株は面白かった)

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良い絵が撮れたと思う。Rolleiflexに張り合っただけのことはある。84年前のSkoparの目は曇っていなかった。次は昨日レストアが完了した後期型(「Voigtländer Superb 顛末記 - その8」)をテストを兼ねて撮影に連れ出す予定である。

(おわり)



posted by ihagee at 22:14| Voigtländer Superb

Voigtländer Superb 顛末記 - その9





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Voigtländer Superbを二台(1933年と1935年製)分解修理して初めてわかったことは、ビューレンズ自体がパララックス補正(視差補正)するというRolleiflexすら実現しなかった機構を至極合理的且つ単純な仕組みで実現している点だった。そして、シャッター機構を除けば、いくつかのヘリコイドとギヤの組み合わせだけでできている点だ。そしてヘリコイドは2箇所、ギアは1箇所だけの噛み合わせでパララックス補正・レンズ繰り出し・距離表示を行う。フィルムカウンターすらフィルムの走行距離をそのまま利用するもので、Rolleiflexなど他のTLRでそれら目的のために採用した複雑な機構など何もないということだ。ネジも数えるほどしかない。


(Rolleiflexがいかに複雑な設計であるか)

二重露光防止やセルフコッキングなど設計や組み立てを複雑にする要素、レンズボードという面積全体に歪みがかかり易い機構がないだけ、他のどのTLRよりも堅牢な筐体を得たと言える。


(1929年製 Rolleiflex Original)


(Rolleiflex Originalのレンズボード)

Voigtländer Superbの勝負はレンズであり、テイクレンズのSkoparやHeliar、ビューレンズのHelomarは十分その期待に応えていることも、すでに試写してわかった。

(おわり)

posted by ihagee at 15:01| Voigtländer Superb

Voigtländer Superb 顛末記 - その8



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ビューレンズをドナーとして提供した後期型のVoigtländer Superbも復活させるべく、またドナーとなるジャンクのVoigtländer Superb(前期型)がeBayドイツを介してスロヴァキアから届いた。

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まさにジャンクそのものである。落としたのかファインダーフードが全壊状態で、ピントレバーは固着しテイクレンズのシャッターも不動である。さっそく解剖に取り掛かる。ビューレンズをバレルごと摘出し、レンズ部分(前玉・後玉)は解体してエタノールで清掃した。80年分の経年の汚れがびっしり付いていたがまずまず綺麗になる。そしてテイクレンズとビューレンズを組み込む作業を行う。すでに前回経験値を積んでおいたので(詳しくは「Voigtländer Superb 顛末記 - その3」)さほど困難もなく組み上がった。距離表示とレンズの繰り出しも完全に同期している。その上でRickから届いたフレネル・スプリット入りのスクリーンと表面鏡を組み込む。Rickに組み込んだ状態の写真を添えてメールで謝意を伝えたら大変喜んでくれた。

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無限大でピントずれがないかファインダーとフィルム室の焦点面で確認し、すべての部品を元に戻してレストアが完了した。ミラーとスクリーンを交換しただけのことはある。オリジナルと比較にならない程、ファインダーは明るくピントの山を掴み易い。解体清掃・グリスアップしたのでテイクレンズのピントレバーも動きがスムースになった。

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(ピントグラス越しのファインダーの見え方・周囲が暗く見えるが実際はもっと明るい)

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(左が前回レストアの前期型・右が今回レストアした後期型=スポーツファインダー状態)

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(以前のオーナーが細工したのだろう。赤窓のシャッターがある)

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功芳さんなら、重連機関車と喩えるだろうか。クナとアーベントロートの揃い踏みのよう)

わざわざ海を越えてやってきた前期型のVoigtländer Superbはさらにドナーを迎えることもなく今度ばかりは正真正銘のオブジェと化した。現存する個体を減らす結果となったがこればかりは仕方ないだろう。復活した後期型を用いていずれテスト撮影してみたい。

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(オブジェとなったVoigtländer Superb前期型・テイクレンズのシャッターも壊れていた)

(おわり)

追記:
薄汚れてくたびれた感じのカメラも、あれこれと手をかければ背筋の伸びた老紳士の佇まいとなる。全く景色が違ってみえるから不思議だ。設計当初の精度を取り戻すだけの確かな工作がしてあるのだろう。人の手の温もりを感じ取って応えてくれる道具である。そういう道具を名も無い職工たちが黙々と作り続けた過去の良き時代のプロダクティビティなのだ。電子制御のいまどきのカメラで80年後も難なく使えるものなどない。

posted by ihagee at 10:41| Voigtländer Superb