2017年10月21日

Voigtländer Superb 顛末記 - その15




(Voigtländer W/w FOCAR 30を搭載したVoigtländer Superbと84年前の広告切り抜き)


「コスモス街道」のフィルム写真の続き(前回「コスモスの咲く散歩道での作例(Schneider-Kreuznach TELE-XENAR 135mm/F3.5)」)。

Voigtländer Superb (Skopar 75mm F/3.5)とクローズアップレンズ(Voigtländer W/w FOCAR 30)を持ってモノクローム(フィルム:Kodak Kodak TRI-X 400 & Y-filter)で10月7日に撮影を試みた(表示用のサムネイルよりもクリックして拡大した像の方が鮮明です)。

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Voigtländer W/w FOCAR 30で接写すると(以下、Scanner: EPSON GT-X980、デジタル処理でのエフェクトは一切かけていない):

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かなり寄って写すことができた。逆光にもかかわらずSkopar 75mm F/3.5は破綻しない。フレクサレットIVのシアンコートされた80mm Belarと比較すればその違いは明確だった(「フレクサレットIV(Flexaret IV)・ 吉祥寺」)。またモノクロームの濃淡と緻密さにおいて描写力も明らかにフレクサレットIVを上回っている。84年前のノンコートレンズは伊達にローライフレックスの向こうをはっていなかったことが判る。

また、Voigtländer Superbにしかないビューレンズの前傾によってパララックスを補正する機構もその効果の程を確認することができた。その機構とはライトボックス(ミラーとスクリーン)もビューレンズと一体となって前傾するもので、Superbの前面の上部に角のように見える部分はこのユニットの傾きの構造上の支点で飾りではない。カメラ本体の上部にこのような大きな可動部を収納することができるのも、「変態的」と称される横送りのフィルム搬送のおかげである。

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すなわち、フィルムを縦方向に送る通常の二眼レフではこのような大きなユニットを構造上備えることはできないので、接写用補助レンズのビューレンズ側にパララックス補正のための特殊な光学系(取り付けに天地がある)を組み込むことで解決を図っている。スクリーンにも視角を補正する為の機構が必要となる。しかし、Voigtländer Superbはカメラ本体でその機能を一元的に担保する為、レンズ側にそのような特殊な細工を要せず(ビューレンズに天地はない)スクリーンに映るありのままを写真に収めることができる。

たとえば、ローライフレックスでは接写(1m以内)にはビューレンズ側に特殊な光学系を組み込んだ接写用補助レンズ(ローライナー)として最短接写距離に応じて3つユニットが必要となる(1m〜0.45m、0.5m〜0.31m、0.32m〜0.24m)。他方、Voigtländer Superbは接写補助レンズを用いない場合でも0.8mまで寄れる。さらに接写用補助レンズ(Focar 30)では0.5m〜0.33mとなる。

Voigtländer Superbであれば、極端な話、Focar 30でなくとも、レンジファインダーの接写用補助レンズも代用が可能ということである。ビューレンズに搭載してスクリーン上にピントが合って見えれば使えるということだ。レンジファインダーカメラでは接写時のパララックスはシューに別途取り付けるパララックス補正用のファインダーで解決する場合が多いので、レンズ自体には特殊な光学系を組み込んでいない。このレンズの同じものを二つ用意すれば足りるので探し易い (+安い!)。

VoigtländerのRolleiへの技術的対抗心は数々の独創的な設計を生み出したが、それが単なる変態ではなく合理性に適っていたことをあらためて理解することができる。言い換えれば、目的に比してローライフレックスの方が複雑な設計や機構が多いということである。

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(花びらの立体感が表れている)


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二重露光も試みた:

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FOCAR 30はいかんなくその威力を発揮したと思う。

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FOCAR 30を外して、新河岸川の木染橋近くの畑にあったトラクターの荷台を撮影。

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(デジタルカメラ(Casio EXILIM EX-ZR10)で状況撮影)


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ローライフレックスに負けてはいない。

おまけ(Rolleiflex SL66)での作例:

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(Rollei HFT Planar2.8 / 80, Ilford Delta 400 群馬県南牧村)


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(Rollei HFT Planar2.8 / 80, Ilford Delta 400 軽井沢近傍)


小細工せずに素直に語りかけるフィルム写真。レンズやフィルムの素性がわかる。Voigtländer Superbの操作感も然り。レバーを介してフィルムを搬送する単純な機構だが、指先にフィルムの厚みやらプレッシャープレートとの摩擦感まで伝わってくる。現実感そのもの。

さて、衆議院議員選挙投票日が間近となった。素直な政治を取り戻したいものだ。

(おわり)
posted by ihagee at 09:11| Voigtländer Superb

2017年10月14日

Voigtländer Superb 顛末記 - その14



Voigtländer Superb (Skopar 75mm F/3.5)については、前回ブログ記事で接写用補助レンズについて触れた。今が盛りのコスモスで試写してみたいと思う。

1933年(昭和8年)製の84歳のカメラ。一昨年死んだ母と同い年ゆえに少し感慨がある。油絵を趣味にしていた母は、絵の仲間と新宿で集うことが多かった。新宿を見たいというので先週の土曜日(9月30日)に連れ出した(フィルム:Kodak Kodak TRI-X 400 & Y-filter)。

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(母の油絵)


世界堂で画材を集め伊勢丹の画廊の先生の個展に顔を出し、仲間とレストランで食事をしたりしていた。あれから少し街並みが変わったよと見せてやりたくなった。晩年脚を悪くしたので代わりに少し歩き回った。

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ビルの足元から上を見上げて一枚。そういえば、青児の絵が飾ってある自由が丘のモンブランでよくお茶してたね。

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一つ目の巨人(キュクロープス)が真向かいに建っているね。

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新宿文化センターの周辺も変わったよ。

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NTTドコモ代々木ビル

このビルは見ていたかもしれないけど、周辺は2020東京五輪に向けて再開発中らしいね。

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さて、帰るとしますか母さん。お疲れ様でした。

(おわり)







posted by ihagee at 22:05| Voigtländer Superb

2017年09月30日

Voigtländer Superb 顛末記 - その13



1933年製前期型Voigtländer Superb (Skopar 75mm F/3.5)は自己流メンテナンスで復調し(拙稿「Voigtländer Superb 顛末記 - その3」)、その後は何度か撮影に連れ出している。このカメラは一昨年急逝した母と同い年。そのせいか、母と外出するような気分になる。

このSuperbには純正の接写用補助レンズ(クローズアップ / プロクサー)がある。二眼なので当然、テイクレンズとビューレンズのそれぞれに必要で、接写距離に応じて二種類あるようだ(被せ式のFocar 30とFocar 52)。

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Voigtländer社は戦後二眼レフを製造していないので、二眼用としてのFocar 30またはFocar 52は戦前(80年前)製造発売されたものを探すしかない。ペアで揃えるのはなかなか至難である。

実際、私もeBay(英米独)で探し回ったがペアでの出品はなかった。テイクレンズ用のFocar 30をまず手に入れ、そしてようやく最近ビューレンズ用のFocar 30が入手できた。

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Superb は他の二眼レフにない視差(パララックス)補正機構がビューレンズ側にあるので、Focar 30なり52のペアはテイクレンズ、ビューレンズの区別は実用上はない。ただし、テイクレンズでレンズフードを使う場合、補助レンズの先端部がフードを装填できる形状になっている必要がある。Focar 30の場合はその形状のものとそうでないものがあり、前者が実際にはテイクレンズ用、後者がビューレンズ用となる。テイクレンズ用のFocar 30はレンズ前面の縁に "Voigtländer W/w FOCAR 30"と印字してあり、

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ビューレンズ用は同じ印字がレンズバレル側面にあるのでわかりやすい。

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なお、視差(パララックス)補正機構があるため、ビューレンズ用のFocar 30に上下はない(通常の二眼レフであればビューレンズの側面に赤点があって、視差補正の為にはその表示を上にして装着する)。

Focar 30での最短接写距離は0.33mとある(接写補助レンズを用いない場合は0.8m)。Focar 52では0.5mなので、花などのマクロからポートレイトまで撮るのならFocar 30の方が間に合いそうである。

以下、ファインダー上での見え方を確認してみた(レンズを上下交換しても同じ見え方だった)。

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(被写体はインドエア・マスコットのマハラジャ君)


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(Rolleiflex用純正スクリーンを移植したので呉越同舟)


実際にフィルムを用いてFocar 30を試してみるつもりである。

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(おわり)


posted by ihagee at 09:04| Voigtländer Superb