2024年01月28日

科学の社会的価値は安全保障にあるとする「特許出願の非公開に関する制度」


日本国の経済成長戦略の観点で、安倍政権は武器輸出原則禁止から、条件を満たせば認める方向に踵を返した。重石としてばかりでなく、殺し合いに最終的に調整を求める戦争にもその武器は使用される。

防衛産業の育成。防衛産業が成長戦略(アベノミクス)の一丁目一番地と安倍政権では位置付け、菅政権にもそのままこの位置付けは継承されている。

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防衛産業が成長戦略(アベノミクス)の一丁目一番地であるなら、軍事(技術)研究も学問の自由の内(橋下徹)などと他の諸学と同等に言うことは正しくない。内閣府の機関たる日本学術会議にあって、軍事(技術)研究を「(自由意志で)するしない」といった「学問の自由」などではなく、「しなければならない」という国民が果たすべき義務となる。憲法第23条(学問の自由)とは別に、憲法第15条1項に専ら拠って日本学術会議の被推薦者の任命拒否を行う権利(義務に対する権利)を声高に言うとは須らくそういう意味がある。

ゆえに任命を拒否するということは、被推薦者が「公務員」として義務を果たさしていない(または果たさないであろう)からに他ならない。その義務が成長戦略たる防衛産業(実質は軍需産業)への貢献である。その妨げになるそれら被推薦者の言論は排除する、が任命拒否となった。任命拒否の正当性を憲法第15条1項で言うことは「学問の自由」云々ではなく、国策に余計な首を突っ込まないような事なかれ主義を「公務員」でもある科学者に強要することである。

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武器を突き詰めれば、人間が自由にできる破壊的力を最大化し人類を恐怖と破壊に追いやってしまう可能性の最たる核兵器となる。あえて極言すれば、核兵器開発に手を貸すことも科学者の良心なのか?日本学術会議は「科学者の良心」を設立の礎にしてきた。

ゆえに軍事研究をする・しないといった「学問の自由」が問われているのではない。「科学者の良心」が問われている。。(「科学の樹」のないこの国の暗愚・続き4


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秘密特許制度(特許出願の非公開に関する制度)を旨とする経済安全保障推進法が2022年5月11日に成立し、同月 18 日に公布された経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律(令和 4 年法律第 43 号。以下「法」という。)において、特許出願の非公開制度が整備された。

民生技術発明の中で安全保障上極めて機微な発明であって公にするべきでない発明については出願公開及び特許査定を留保する(保全指定する)ことで、民生技術発明を軍事など安全保障目的に活用することである。

「科学者の良心」なるテーゼを日本学術会議から剥ぎ取り、「デュアルユース」を国公立大学の研究成果に求めるものとも言える(国費による国公立大学に対する委託事業の成果にデュアルユースを求める)。

科学の社会的価値は先ずは国家の安全保障にあるというスタンスを「特許出願の非公開に関する制度」を以て明確化したわけである。

安全保障の観点を民生技術発明に持ち込み、安全保障と民生利用という「デュアルユース」を特許制度の枠組みを利用して内閣府が取り仕切り、民間の研究成果が戦争あるいは軍事に利用される可能性を意味する。特許制度での発明のあり方に、民生産業の保護育成よりも優位に軍事安全保障上の観点を持ち込み、突如として否応なく民生技術発明を国家が徴用することと言って良い(77条2項の規定による通知(保全指定の解除等の通知)を受けるまでの間は、保全指定特許出願人は特許出願の取下げによる離脱を禁じられる=特許出願を放棄し、又は取り下げることができない。)。

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保全指定を受けた発明の特許出願人及び発明共有事業者には、組織的管理措置(内閣府令第10条(法第75条第1項の内閣府令で定める措置))を講じることが求められる。その管理措置に伴い人的・物理的・技術的要件が保全指定を受けた発明の特許出願人及び発明共有事業者に課される(特許出願の非公開に関する制度における適正管理措置に関するガイドライン(第1版))。つまり、保全指定を受けた発明の特許出願人及び発明共有事業者に発明情報の適正管理措置を法は義務付けている。

さらに過酷なことに、法第 76 条第 1 項は、保全対象発明の内容を知る者の範囲がむやみに広がることを防ぐため、保全指定後に新たに他の事業者に保全対象発明に係る情報の取扱いを認めるときは、あらかじめ、内閣総理大臣の承認を受けなければならないこととしている。したがって、指定特許出願人は、例えば、保全指定中に他の事業者に製造を委託したり、他の事業者と共同で更なる研究をする場合や、弁理士に特許手続の相談をする場合など、保全指定中に事業者単位の枠を超えて、新たに他の事業者に保全対象発明の内容を共有する場合には、この承認を受ける必要がある。

保全指定:
「国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれが大きい発明について保全指定をし、情報流出の防止に万全を期することは、安全保障の確保という我が国の国益に鑑みて重要なことであるが、その一方で、保全指定という措置は、権利者が国内外を問わず発明の内容を開示することや実施することを制約するものであるとともに、第三者にとっては、非公開のまま特許法上の保護を受ける先願を生じさせるものであるため、以下に述べるとおり、経済活動やイノベーションに対する影響にも留意が必要となる。」
令和5年4月28日付閣議決定から)


保全指定とは、保全審査の結果、発明に係る情報の保全が適当と認めるときは、内閣総理大臣は当該発明を保全対象発明として指定することである(保全指定)(法70条1項)。保全指定の概要は以下の図の通り。
スクリーンショット 2024-01-28 9.44.57.png


RESEARCH BUREAU 論究(第 19 号)(2022.12)から引用)

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保全審査の期間に法律上の上限はないものの、実質的には、外国出願の禁止が我が国での特許出願後最大 10 か月(10 か月を超えない範囲内において政令で定める期間)で自動的に解除される仕組みとなっていることから(法第 78 条第 1 項ただし書 7)この期間内に保全審査を終える必要があるとされている。

また、保全審査の実施に当たっては、内閣総理大臣は、発明の内容に応じて、安全保障や対象技術について専門知識を有する関係行政機関への必要な情報提供要請や協議を行い、その知見を十分に活用して審査を行うこととなる(法第 67 条第 3 項、第 6 項)。

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米国特許出願の実務者には馴染みがあることだが、合衆国において行われた発明については、合衆国における出願から6月が経過するまではその発明を基に外国特許出願の許可が得られない(特許法第184条)制度がある(foreign filing license)。これは秘密特許を前提とした国家安全保障上の制度である。

わが国においては2013年に、国家安全保障会議(NSC)、国家安全保障局(NSA)が導入され、2016年3月には、安全保障関連法が施行されたものの知的財産分野においては具体的な対応がなかったことから、内閣府の下での保全審査はいよいよこの分野に及んだということだ。秘密保護法(特定秘密の保護に関する法律)の観点から保全指定の発明が同法による「特定秘密」に指定される可能性までもある。「特定秘密」を漏らした人、それを知ろうとした人を厳しく処罰する方向に働く可能性があるということだ。日米安全保障上の米国側の意向が絡むことから、この伏線を国民に知られないようにとの「配慮」なのか以下のような発言まで国会で繰り出されている。

「秘密特許という制度,これは考えなければいけない.秘密特許というから悪いんですよね.これは非公開特許とかといったらどうですか・・・・1948 年にマッカーサーによってこの秘密特許制度はだめだというふうになったという経緯もあってこれができていない ・・・・ けれども,こういう時代になりました.ここはそろそろ検討されるべきではないか ・・・・」(2018 年 2 月 23 日,衆議院予算委員会第 7 分科会.中谷真一議員(自民)).(「秘密特許制度導入の動きと 科学者・技術者のあり方」から引用)


事実、内閣府は日米安全保障のきな臭さが芬芬と漂う「秘密特許制度」ではなく「特許出願の非公開に関する制度」と言い、特許制度の話に落とし込もうとし、また、大新聞の第一面を埋めるべき重大な話であるのに、知的財産権という狭い分野にのみ関わる問題として知財専門誌に書かれる程度の扱いであることからも、「ナチスの手口」が働いているのだろう。

『「静かにやろうや」ということで、ワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか。』(麻生太郎「ナチスの手口」)


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保全指定の効果として、指定特許出願人に対しては、発明の実施の許可制(法第 73 条)、発明内容の開示の原則禁止(法第 74 条)、発明情報の適正管理義務(法第 75 条)、他の事業者との発明の共有の承認制(法第 76 条)及び外国への出願の禁止(法第 78 条)の制限が課される。こうした制限により、指定特許出願人に特別の犠牲が発生する場合があると考えられることから、法第 80条では、実施の不許可又は条件付き許可その他保全指定を受けたことにより損失を受けた者に対して、国が「通常生ずべき損失」を補償することを規定している。

しかし、出願段階に過ぎない発明の保全指定特許出願人に対して、基本指針案では「損失補償を受けようとする者は、補償請求の理由や補償請求額の総額及びその内訳、算出根拠等を示し、その損失について補償を受けることの相当性を示す必要がある。例えば、実施の許可の申請時の事業計画等を基に補償を請求することが想定される。このとき、十分な根拠が示されていない損失については、補償の対象とならないこととなる。」などと、補償を受けることの相当性の説明責任を課すものでもある。相当性について判断の根拠とすべき算定基準が未だ不明であるのだから、この補償制度は画餅の域を出ない。

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以上の事柄を総覧すると、「特許出願の非公開に関する制度」なる秘密特許制度の民間での経済活動やイノベーションに対する心理的影響は少なからずあるだろう。それよりももっと懸念されるのは戦争遂行の原動力としての「学術」の意義付けと国家による学術への行政的関与であり、「学術行政」の強化に踵を合わせ軍事目的の科学研究に励んだ戦前の「日本学術振興会」に日本学術会議を立ち返させようとする動きである。国費で紐付けられた国公立大学や研究機関も然りである。「特許出願の非公開に関する制度」の射程は安全保障上極めて機微な発明を偶然した民間の事業者などではなく、学術行政の対象となる国公立大学や公的研究機関なのかもしれない。

保全指定が解除されない場合もあり得るわけだし(その場合、保全指定された発明は米国の軍事当局、更には国防総省と関わりが深い米国大企業に取得される虞がある)、解除されるまでは非公開であるのだから「秘密の先行技術」となり得、それを知らない他の出願人にあっては潜在的な主題の重複を避けるため保全指定の発明と自分の発明を区別する機会がなく発明活動(インセンティブ)を弱めることにも繋がりかねない。反面強まるのは学術と軍事との関係である。

知的・文化的価値と経済的・社会的価値との双方にまたがる豊かさの源泉たる「学術」の意味が今まさに問われている。

日本学術会議は 1950 年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明(声明)」を、1967 年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発出した。近年、軍事と学術とが各方面で接近を見せている。その背景には、軍事的に利用される技術・知識と民生的に利用される技術・知識との間に明確な線引きを行うことが困難になりつつあるという認識がある。他方で、学術が軍事との関係を深めることで、学術の本質が損なわれかねないとの危惧も広く共有されている。(安全保障と学術に関する検討委員会資料から)


(おわり)


posted by ihagee at 08:57| 政治

2022年03月27日

彼はKreshchatykのいくつかの木にぶら下がるだろう



" 独自の調査ジャーナリズムと分析を専門とする独立したニュースWebサイト、グレイゾーン(Grayzone)は受賞歴のあるジャーナリストで作家のマックス・ブルーメンタールによって設立された。2016年1月から2018年1月まで、AlterNet.orgはグレイゾーンプロジェクトを後援しました。それ以来、グレイゾーンは完全に独立している。グレイゾーンは独立したジャーナリズムのイニシアチブであり、政府や政府が支援するグループや個人から金を受け取ることはない。私たちの仕事は読者のサポートに依存する。私たちのジャーナリズムを維持するために、PayPalまたはPatreonで私たちをサポートすることを検討して欲しい。" (The Grayzone)

そのグレイゾーン2022年3月5日付記事『ウクライナ ゼレンスキーとファシストたち。"彼はKreshchatykのいくつかの木にぶら下がるだろう" 』(筆者:Alexander RubinsteinとMax Blumenthal)はグレイゾーンサイトに今は存在しない。備忘として私自身が書き留めておいた内容(サマリー)と記事中で参照のあった関連画像を併せて、以下紹介したい(プーチンの言う「正当性」(関連記事参照)とも符合する、以下内容の真偽については一切コメントしない)。

注)Kreshchatyk:ウクライナの首都キエフにある大通り

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Alexander RubinsteinとMax Blumenthalは、Zelenskyが選挙前に約束した平和主義者から、ファシストの「超国家的」民兵の積極的な支持者に転じたという記事を掲載している。彼らはその転機を、2019年秋に行われたゼレンスキーと民兵の戦闘員との最前線での会談に突き止めている。

ドンパス戦争に係る)ゼレンスキーの和平イニシアチブに対して、ネオナチ・アゾフ大隊は頑として「降伏に反対」と唱えた。ゼレンスキーはカメラを前にネオナチ・アゾフ大隊の民兵との直接対決に臨んだ。しかし、ゼレンスキーは頑強な壁にぶつかった。

前線からの離脱を(ゼレンスキーは)訴えるも拒絶され、ゼレンスキーはカメラに向かって憮然とした表情を浮かべた。「私はこの国の大統領だ。41歳だ。私は敗者ではない。私は、あなた方のところに行き、武器を捨てろと言ったのだ」と、ゼレンスキーは戦闘員たちに訴えた。



この時の映像がウクライナのSNSで拡散されると、ゼレンスキーは怒りの反撃の的になった。

「世界の白色人種を率いて、セム人主導のUntermenschenに対する最後の聖戦を行う」と誓うファシスト・アゾフ大隊の指導者であるアンドリー・ビレツキーは、「ゼレンスキーがこれ以上迫れば、数千人の戦闘員をZoloteに連れて来る」と宣言した。一方、ウクライナの前大統領ペトロ・ポロシェンコの政党の国会議員は、ゼレンスキーが過激派の手榴弾で吹き飛ばされることを公然と妄想していた。

注)セム人:アーリア族との対比で、ユダヤ主義を「セム主義」と呼ぶ(人種差別用語)
Untermenschen:劣等人種(ドイツ語)(人種差別用語)
Zolote:ウクライナのルハンシク州(地域)のポパスナライオンにある町

ゼレンスキーはある程度の(戦闘員の前線)離脱を達成したものの、ネオナチ準軍事組織は「ノー・キャピタレーション」キャンペーンをエスカレートさせた。そして、数カ月もしないうちに、Zoloteで再び戦闘が過熱し始め、ミンスク協定違反の新たな連鎖を引き起こしたのである。

この時点で、アゾフは正式にウクライナ軍に編入され、国家隊と呼ばれる街頭自警団がウクライナ内務省の監視のもと、国家警察とともに全国に展開された。2021年12月、ゼレンスキーはウクライナ議会での式典で、ファシズム右翼セクターの指導者(Dmytro Kotsyubaylo)に「ウクライナの英雄」賞を授与した。


(Dmytro Kotsyubayloへの「ウクライナの英雄」賞授与/Focus.ua記事引用)

ファシストによるゼレンスキーへの殺害予告は、もっと前から行われていたことを以下のように指摘できる。

ゼレンスキーの大統領就任から1週間後の2019年5月27日、ウクライナのインターネットニュースサイト「Obozrevatel」は、右派セクターの共同創設者で、当時ウクライナ義勇軍の司令官だったドミトロ・アナトリーヨビッチ・ヤロシュへのロングインタビューを掲載した(以下、ヤロシュ:Y, インタビュアー:I)。ゼレンスキーは平和とミンスク協定の実施を約束していた。他方、ヤロシュや彼のような人たちは、国会議員になろうとしたときにはほとんど支持を得られなかったが、マイダン革命で明らかなように彼らは銃でその支持を得ようとしている。

Y) もしゼレンスキーがウクライナを裏切ったら、彼は地位ではなく人生を失うだろう
I) どういう意味ですか?
Y) ミンスク方式は--私はいつもこの話をしているのですが--、時間をかけて勝負し、軍隊を武装させ、国家安全保障と防衛のシステムにおいて世界最高の基準に切り替える機会なのです。これは作戦のチャンスなのです。しかし、これ以上はない。ミンスク協定の履行は、わが国家の死である。この戦争で死んだ男や女、男や女の血の一滴にも値しない。一滴もだ。我々はこの外交ゲームの間に、ロシアの大規模な侵攻の可能性に対してより良い準備をした。
I) あなたは「ミンスク」を放棄する時期が来たとお考えですか?
Y) 間違いなく。
I) しかしゼレンスキーは選挙直後から「(放棄?遵守?)他に選択肢はない」と言われていた。
Y) 「言われていた?」...ゼレンスキー自身は何も言わなかったんですか?
I) はい。
Y) 怖いですね。全く何も言わない最高司令官。なんだか空しい。それに、とても不思議な感じがする。
I) 新しく選ばれた大統領が何を言うか待っている?
Y) それだけじゃない。戦おう、準備しよう。私たちは、彼が何を言うか、そして最も重要なのは、彼がどう行動するかを待っているのです。聖書には、「その実によって、あなたがたは彼らを知る」とある。秋のどこかで「実」を見ることができるだろう。ゼレンスキーは未熟な政治家だ。そして、従者が王を作る。そして、「従者には」誰がいるのか、すでに見えはじめている。それは、楽観主義を加えるものではない。なぜなら、ゼレンスキーは有権者(私はゼレンスキーの有権者ではない)に、寡頭制を打破すると約束したからだ。しかし、すでに最初の人事から、寡頭政治体制が生き続け、繁栄していることがわかる。そして、明らかに、今後もそうであろう。ただ、流れが移されるだけだ。

ウクライナの「超国家主義者」にとって、ミンスク合意は常に再武装のための時間を確保するためのイチジク葉に過ぎなかった。ミンスク合意から5年後の2019年、彼らはすでにドンバスの反乱軍を再び攻撃し、圧倒する能力と準備ができていると感じていた。

ゼレンスキーとオリガルヒについてのヤロシュの発言は間違ってはいない。ウクライナ人や外国の篤志家から吸い上げた金の流れは、ゼレンスキー政権下で、彼を支持したオリガルヒ、とりわけイゴール・コロモイスキーの利益のために振り向けられたのである。

そして、インタビュアーはヤロシュに、ドンバス紛争を内戦と呼んだコロモイスキーとの関係について質問する。ヤロシはコロモイスキーのことは気にしていないが、「内戦」の主張は否定する。

Y) おそらく、何かが彼をそのような発言に駆り立てているのでしょう。どうやら、ある種のビジネス上の利害関係があるようです。これが、私としては、寡頭政治の主な危険性です。彼ら、寡頭政治家は才能のある人たちです。才能がなければ、そのようなビジネスを構築し、何十億も稼ぐことは不可能だからです。しかし、オリガルヒの危険性は、彼らがコンプラドールであるということだ。彼らは祖国のことなどどうでもよいのだ。金さえあればいいのだ。利益はすべて見て見ぬふりをする。そうすれば、ロシアとどんな条件でも交渉できる。だからゼレンスキーは我々ウクライナ人にとって非常に危険な存在なのだ。私はそれを感じています。
I) その危険性とは?
Y) どんな犠牲を払っても平和になるという彼の発言は、我々にとって危険だ。彼は単にこの世の代償を知らないだけだ。彼は前線の近くでコンサートをしていたのかもしれない。しかし、私の息子たちがロシアの砲弾で細かく引き裂かれ、その破片を集めて母親に送らなければならなかったとき、その値段はどういうわけか全く違って見えるのです。
I) 今、彼に会おうとしてるんですか?
Y) はい。もう何度もメッセージを送ったんだけど、彼は沈黙しているんだ。もしかしたら届いてないかもしれない。彼は忙しい人だから......。でも、たとえこの出会いが実現しなくても、大丈夫。彼はただ一つの真実を理解する必要がある。ウクライナ人は屈辱を受けることはできない。700年にわたる植民地支配の後、ウクライナ人は国家を建設する方法をまだ完全に学んでいないかもしれません。しかし、我々は蜂起の仕方をよく学び、ウクライナ人の汗と血に寄生しようとする「ワシ」どもをすべて射殺したのだ。ゼレンスキーは就任演説で、視聴率、人気、地位を失う覚悟があると言ったが、いや、彼は命を失うだろう。ウクライナと革命と戦争で死んだ人々を裏切れば、彼はフレシャティクの木にぶら下がるだろう

Khreshchatykはキエフのメインストリートである。ゼレンスキーに対するこれらの脅威は、彼を平和主義者から温情主義者、そして様々な「超国家的」民兵組織の友人へと変えるのに確実に役立った。

2021年春、ゼレンスキーは、ウクライナがクリミアを武力で奪還すると発表した。その後、ロシアは大規模な軍事演習を行い、ゼレンスキーは引き下がった。2021年11月になると、ウクライナは再び騒ぎ出し、ドンバスを力づくで奪還すると言い出した。ロシアは再び武力示威として軍事演習を行ったが、今度はさらに状況が悪化した。2月中旬からドンバス周辺のOSCEオブザーバーは、日報で停戦違反や爆発が強くなっていることを指摘した。

注)OSCE: Organization for Security and Co-operation in Europe:欧州安全保障協力機構

違反行為のほとんどはウクライナ側からのもので、発射された砲弾やミサイルの爆発はドンバス側の敷地内で起きている。その最中の2月19日、ゼレンスキーはミュンヘン安全保障会議で演説を行った。彼は、ウクライナがソ連から受け継いだ核兵器を放棄したブダペスト覚書について以下言及した。

「2014年以降、ウクライナはブダペスト・メモの保証国との協議を3度招集しようとした。3回とも成功せず。今日、ウクライナはそれを4回目に行います。大統領である私は、初めてこれを行うことになります。しかし、ウクライナも私も、これを最後にするのだ。私はブダペスト・メモの枠組みで協議を始めている。外務大臣に召集を依頼した。協議が再開されなかったり、協議の結果、わが国の安全が保証されない場合、ウクライナはブダペスト・メモランダムが機能していないと考えるのが当然であり、1994年のパッケージ決定のすべてが疑問視されることになるのです。」

1994年にウクライナが行ったパッケージ決定の1つは、ウクライナの核兵器不拡散条約への加盟であった。

ロシアは、ミュンヘンでのゼレンスキー氏の発言を、ウクライナによる核兵器獲得の脅しと理解した。ロシアとの国境に核兵器を持つファシスト政権が存在することは、ロシア政府は到底容認できない。ドンバスでの新たな戦争のための砲撃準備とあわせて、この脅威が、ロシア政府にウクライナへの武力介入を確信させることになった。2月22日、ロシアはドンバス共和国を独立国家として承認し、2月24日、ロシア軍は国境を越えてウクライナに侵攻した。ロシア軍の狙いは、ウクライナの非軍事化、脱ナチス化である。前者は分かりやすい。ロシア軍はウクライナの持つ重火器をすべて破壊、あるいは無効化するだけである。第二の目的は、上記のドミトリー・ヤロシュへのインタビューでの言葉にわかる通りである。

そして、2021年11月、そのウクライナで最も著名な超国家主義的民兵の一人であるドミトロ・アナトリーヨビッチ・ヤロシュが、ウクライナ軍総司令官の顧問に任命された。ヤロシュは、2013年から2015年まで右派セクターを率いたナチス協力者バンデラの信奉者で、ウクライナの「脱ロシア化」を主導すると公言している。

ファシストたちの脅威によって、ウクライナの政治家は誰も、国の平和につながるまともな政策を実行することができなくなっている。ウクライナのファシストは比較的少数である。しかし、彼らは銃を持っており、彼らと彼らの目的に反対する者は誰でも殺す。彼らは国家の重要な地位に就いている。(その上、コロモイスキーのようなオリガルヒが彼らに金を払い、自分たちの目的のために使っている)。

問題は、このようなイデオロギー集団は、いったんしっかりと確立されると、大きくなる傾向があるということである。右派はウクライナの若者のために「愛国的」サマーキャンプを開催しており、ウクライナ国家はそれに資金を提供している。彼らは成功し、ウクライナの若者たちは彼らを尊敬している。ロシアが恐れているのは、こうした動きである。プーチンが言っているのは、ソ連が1933年以降に行おうとしたこと、つまりヒトラーが動き出す前に止めようとしたことだ。今回は、ロシアはそれを行なっている。つまり、プーチンは1941年6月を阻止するために先制攻撃をしているのだと考えているのです。これは実に重大なことで、ロシアは安全に止められると思うまで続けるつもりであることを示している。ロシア軍は、現在マリウポルの人々を人質にしている右翼セクターやアゾフ大隊のような民兵組織を壊滅させるだろう。生死を問わず、すべての指導者を捕らえようとするだろう。その任務が完了したら、ロシア軍はウクライナから撤退する。強力なファシストから解放されることで、ウクライナの政治家は再びまともな政策をとることができるようになる。それが計画だ。

注)1941年6月:第二次世界大戦中の1941年6月22日に開始されたナチス・ドイツとその同盟国の一部によるソビエト連邦への侵攻

しかし、うまくいくのだろうか?

それはおそらく間違った質問だ。どの程度、どの程度の期間、それが機能するのかを問うべきだろう。ウクライナの独立後、「超国家主義者」が権力を握るまでに22年、CIAの力を借りた。一旦、排除された後、彼らは這い上がってくるかもしれないが、それには時間がかかるだろう。ウクライナは経済復興に忙殺される。武器に使う金はほとんどないだろう。 30年後、ロシアは再び対立を繰り返すかもしれない。しかし、30年というのは、かなり長い時間だ。

(おわり)

追記:「戦争戦う平和主義」と、「戦争戦う平和主義」は互いに全く異なる概念にも関わらず、同義と次第に錯覚し後者に傾斜していく(定義主義的誤謬 Definist fallacy)。そう傾斜する背景(「従者が王を作る」)がゼレンスキー大統領にあったのだろうか?上掲の記事はその背景(従者)の存在を示唆するが、デニス・キレーエフ氏(対露交渉団のウクライナ側メンバー)は、ゆえにKreshchatykの木に吊るされたのか(ウクライナ保安庁(SBU)によって殺害された)、私にはわからない。

関連記事:戦争戦うのであって、戦争戦うのではない

posted by ihagee at 06:22| 政治

2022年03月26日

Tim Morozovの寡黙





廃墟系パラノーマルチャネル(YouTube)で世界的に人気の高いTim Morozov(ロシア)の最新動画。

この最新動画の異変が話題になっている。それまでの動画と打って変わって Timが一切喋らない。各国の視聴者から理由を問うコメントが多数寄せられているが、本人はその理由を一切明かさない。

” ティムさん、こんにちは。動画ありがとうございました 一言もしゃべらずに見ているのは珍しいですが、それには理由があると思うんです。多くの人が現状を理由にし、その背景にはコメントで対立をあおろうとするものが多くあります。みんなもっと優しくしてください。誰がどの国の人かは関係なく、私たちはまず第一に人間なのです。ティムは議論を見たり、他人を中傷したりするのが好きではないと思うんです。皆さん、ごきげんよう。ティムさんいつもありがとうございます。(ポリーナ・フェドロワ)”

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ロシアの電気通信規制当局であるRoskomnadzorは、AlphabetのニュースアグリゲーターサービスであるGoogleニュースを禁止し、ウクライナで進行中の戦争に関する「信頼できない情報」へのアクセスを提供するためにnews.google.comドメインへのアクセスをブロックした。
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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナでのロシア軍の作戦に関する「故意に偽のニュース」を広めることを違法にする新しい法律に署名し 、最長15年の懲役を導入。
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今月初め、RoskomnadzorはGoogleに、ロシアのウクライナ侵攻に関する誤った情報をYouTube動画に広める広告キャンペーンを停止するよう要請。
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これに応じて、Googleはロシアの侵入に関する偽情報キャンペーンに対して措置を講じ 、欧州連合の要請に応じて、ロシアトゥデイ(RT)とヨーロッパのスプートニクに属するYouTubeチャンネルをブロック。
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2月26日、電気通信規制当局は、 ロシアの独立系メディア (Ekho Moskvy、InoSMI、Mediazona、New Times、Dozhd、Svobodnaya Pressa、Krym。Realii、Novaya Gazeta、Journalist、Lenizdatnotなど)に砲撃に関する誤った情報を広めないよう通知。ウクライナの都市の、そしてウクライナでの「進行中の軍事作戦」を攻撃または侵略と呼ぶのをやめるよう要請。
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今月初め、ロシアは 、検察庁の要求に応じて、FacebookとTwitterのソーシャルネットワークをブロックし1週間後に Instagramも禁止。
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Facebookを禁止する決定は、プラットフォームのプロクレムリンメディアアウトレットと通信社(たとえば、RIA Novosti、Sputnik、Russia Today)を起動するMetaによって動機付けられ、Instagramブロックは、Metaが一部の暴力の呼びかけを許可することを決定したことに拠る(その後Metaは許可を撤回)。
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Roskomnadzorはまた、Voice of America、BBC、DW、Radio Free Europe / Radio Libertyなど、外国エージェントとして指定された複数の外国の報道機関へのアクセスをブロックし、進行中のウクライナ侵攻に関する偽のニュースを広めたと非難。

以上、Sergiu Gatlanのレポート記事引用(2022年3月22日付)

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戦争は言葉(言論)を封じる(タイトルでの彼の指がそれを示している)。

コメント欄での対立を避けるためなのか、それともロシア政府への暗黙の抗議なのか、寡黙にして語らない。

(おわり)


posted by ihagee at 09:47| 政治