2017年08月28日

原発事故がもたらす過酷な時代を生きるには




東京電力福島第一原子力発電所の大量の放射性物質の漏洩を伴う原子力事故は国際原子力事象評価尺度でチェルノブイリ事故と同等の最悪のレベル7に位置付けられている。

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(3号機の水素爆発・海外では核爆発と専門家は分析している)


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そのチェルノブイリ事故(1986年)から31年が経過した。事故原発があるベラルーシでの政情不安、ベラルーシに国境を接するウクライナでの紛争など、この事故が直接・間接的に周辺地域の不安定化の地政学的要因になり続けている。ソ連邦の崩壊のトリガーもこの事故であると言われている。原発事故由来の放射性物質が環境の一部に組み込まれ人間を含め生態系全てに将来に亘って影響し続けることも疫学などの学術調査によって明らかにされてきた。

原発そのものについては、事故は幸いにも一基のみであり(4号機)、事故直後の当局の決死の作業(多くの人命が失われた)によって地上地下で外界から遮断(石棺化)し、地下水脈を介しての環境への放射性物質の持続的漏洩は食い止められ、原子炉爆発で当初に飛散した放射性物質(広島原発約20個分相当分)に汚染が留まっている。しかし、石棺という閉じ込めは未来永劫(人類の物差しからみて)続けなくてはならない。

人間の生活圏については、事故から5年後に、ウクライナでは「チェルノブイリ法」を制定し、年間被ばく線量が5ミリシーベルト以上の地域は「強制移住区域」、1〜5ミリシーベルトの地域は「移住選択区域」として住民に移住の権利が与えられた。移住を選んだ住民に対して国は、移住先での雇用と住居を提供、引越し費用や移住によって失う財産の補償も行った。移住しなかった住民にも非汚染食料の配給、無料検診、薬の無料化、一定期間の非汚染地への「保養」などを定めて、住民の健康と生活を守ることに努めている。

人間の生活圏を汚染源から可能な限り遠ざける<防曝>のスタンスは、政情不安となろうと内戦が勃発しようと為政者は変えようとしていないようだ。

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翻って、安倍首相の「アンダーコントロール」の一言は内外に向けたあからさまな印象操作だった。つまり、わが国の事故はチェルノブイリのそれとは全く違うと政治的に嘘をつき装うことにあった。「実害」を前提とする<防曝>のスタンスは取らず、「除染」「帰還」でわが国民は汚染に立ち向かえると国際社会に宣言した。「今この瞬間にも福島の青空の下、子どもたちはサッカーボールを蹴りながら、復興と未来を見つめている(安倍首相)」と「青空」ありき、子どもたちに<防曝>の選択肢すら与えない言葉はあまりに酷過ぎる。

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その通り、日本政府はチェルノブイリ事故から敢えて何も学ぼうとせず、さして何事もなかったかのように平常を保つことに終始している。「実害」は国内向けには禁語にしてその大半は「風評被害(根も葉もない噂)」と言い包める。他方、お友だち作戦で被曝したと主張する米兵には裁判の経緯によっては「実害」を認め巨額な賠償金に応じようとしているのだから(東電が払えなければ国民の税金が充てられるだろう)、安倍首相にとっていざとなって守るべき国民とは自国民のことではない。日米安全保障条約の真に意味するところである。

チェルノブイリ事故から学んで住民の健康と生活を守るようなことでもすればその対策にかかる経費は膨大となる上、「実害」を一つでも認めれば「安全・安心」なる日本のブランドイメージに傷がつき、経済活動の阻害要因としかならないと思っているのだろうか。平常心の天秤に吊るされた錘が2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会なのだろう。

環境に漏洩した放射性物質に政治的思惑を忖度する心などある筈もなく物性に基づく勝手気ままな挙動は一つとして「アンダーコントロール」でなく、ホットスポットやパーティクルになって我々の生活圏に潜在し動き回っている。そればかりか、8000ベクレル/kg以下の汚染土の公共事業への利用や、その焼却処理(フィルターなど何の役にも立たない)、地下とはいえども我々の生活圏下に高濃度放射性廃棄物の地下処分の検討を国が推し進めている。まるで放射性物質にとって手足が伸ばせ居心地の良い生活圏を広げるようなものだ。
(拙稿『国家ぐるみの壮大な「粉飾決算」』)

政治家も官僚も御用学者も、彼らの生きている間だけ問題が起きなければ後は知ったことではないのだろう。ばら撒いて将来管理できなくなろうと、その頃にはこの世にいないから知ったことではない開き直りとも取れる。
(拙稿『いつまでも「うそつきロボット」で良いのか(原発事故なる国家の宿痾(治らない病)続き)』)

「痛みを分かつ」は心情的に国民に膾炙され易いが、こと原発事故に限れば「痛んだ所に抑え込む」しかないのである。つまり<防曝>のスタンスに立って年間被ばく線量が5ミリシーベルト以上の地域は人間の生活圏から遠ざけ(=人間がその地域から立ち退き)、その意味で棄地となった土地を国が収用管理することしかない。具体的には事故原発を中心として福島県太平洋側沿岸地域をその土地とし放射性廃棄物の集中管理処分場にする政治的決意が求められる。

原発由来の核のゴミを全土に分散管理し続けるのは現実的に不可能な上、自然災害などで予測不能に漏洩すればそれこそ日本中が副次的な放射能汚染の脅威に晒されることになる。特に地下水脈が至るところに走る日本では、どんなに深く埋めても廃棄物が水に触れて放射性物質が環境に漏洩する可能性が高い。地下水脈が汚染されれば人間の生活圏は根こそぎ奪われることになる。

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それでも「痛みを分かつ」ことをこの国は国民に求めるのであれば、誰かが喩えたように「トイレのないマンションに住むようなもの」となる。原発は今後次々と再稼働するだろうが、現状破綻状態の核燃料サイクルが回り出しても、廃炉や事故原発由来の処理しきれない放射性廃棄物は山積みとなって我々の生活圏で計画的に埋められたり燃やされたりすることは間違いない。

そうなれば各人が「痛み」の在処を知って可能な限り回避行動を取るしかないだろう。その手立ての一つは各人が線量計(ドシメータ)を携帯し長時間の積算の被曝量を把握すること(外部被曝)。

自治体がスポット的(点状)に観測するのではなく、各人が行動する範囲で線状且つ経時的に被曝量を把握し(いつ・どこで・どれだけ被曝したか)、次に汚染場所(特にホットスポット)を自主的に回避する行動に繋げることができる。

ただし、線量がμのレベルを超えてmSv/hの場所であれば直ちに退避行動を行う必要があり、その場合はブザーで知らせるなど警報器の役割もなければいけない。通常の線量計はγ線0.01〜9.99μSv/hが計測レンジなので、小数点以上二桁以上の数値が表示される計測器であって欲しい。

ゲルマニウム半導体検出器が原則の食品の放射能検査だが(ベクレルを単位とする内部被曝)、個人レベルで行う場合はその代替評価法として、表面近くの空間線量率を計測することになる。シンチレータでは表面のα線とβ線は計測不可能で、GM管(ガイガーミュラー計数管)でマイカ窓(α線検出)のある計測器が必要。

詳しくは「放射線測定器の種類と一覧」サイト参照。

国産の計測器で手軽(且つ安価)に入手できるものはシンチレータ。GM管(ガイガーミュラー計数管)であれば、チェルノブイリ事故以来実績のあるウクライナ製が手頃かもしれない。

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私事だが2011年の原発事故の数日後に都内で金属臭の空気を吸って(吸うというよりも金属を舐めた感じがした)、以前テレビで観た3Mの原発事故のドキュメンタリー番組での同様の証言を思い出しこれは大変だと、直ちにeBayを通じて放射線測定器を購入した。

購入した測定器は旧ソ連製(ウクライナ製)のMASTER 1。開発・製造されたのは1986年というからチェルノブイリ事故の申し子。外見はひどく安っぽく見えるがGM管で一分当たりのγ線を積算して平均値を液晶に示してくれる。早速、地震と液状化で被災した後復旧したばかりの東京ディズニーシーに持ち込んで計測した。ベンチなど測定したが平均して0.35μSv/hの値だった。

その後、同じく旧ソ連製(ウクライナ製)のGM管が二本装備されマイカ窓のある箱型の測定器やら、元は軍事用で民生に転用されたカナダ製の測定器(RD 108DB)を購入したりした。後者はγ線測定器だが単位がr/hなので、針が一つ振れるだけで(1r/h)で10mSv/hに相当し、普通に過ごして1年間に浴びる放射線量を15分足らずで浴びる計算となる。原発事故や核戦争を想定した測定器。針が振り切れるのを見ることになれば死を覚悟しなければならないだろう。

最近の製品としてはSOEKS Ecotester(ウクライナ製)を使っていたが、乾電池の液漏れでプリント基板が溶け使用できなくなった。旧ソ連製はすべて半田付け配線で頑丈だったのに、新しい製品ほど作りがチャチなようだ。

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ドシメータとしても、警報器としてもまた食品検査としても、それなりに用を果す計測器は高価で個人に手が出る代物ではない。しかし、ロシアのベンチャー企業の製品でこれら要件を概ね満たした比較的安価な測定器が販売されている。

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ドシメータとしてはcsv形式でパソコンに時間軸で線量をグラフ化してくれるし、閾値を超えた線量を検出すれば即座にブザーで警報し、鉛の裏蓋を外して食品表面に密着させればα、β線を検出してくれるようだ。両線種の検出に威力を発揮するパンケーキ型GMが内蔵されている。β線も過不足なく検出できるところからもしかしたらGM管も備わっているのかもしれない(追記:GM管は追加されておらずCPUがアルゴリズムで算出しているようだ)。

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(使用例・デイスプレイは英語に表示切り替え可能)




(チェルノブイリ事故原発周辺での使用例)


近々購入して使ってみようと思う。

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放射線測定器など原発事故以前であれば、鉱物コレクターなどニッチな人々の需要しかなかったのに、事故後、急速にコモディティ化し私を含め少なからぬ人々によって日常的に使われるようになった。放射線測定器が日常生活にあること自体が異常なことだが、現実を数値として見、我が身の安全を他人任せにしない意識はかえって育まれたのではないかと思う。信ずるものは救われるとされてきた原発の安全神話が崩壊した今、同じ神話に再び騙されないようにと、放射線測定器は我々の意識を覚醒させる役目も帯びてきたようだ。

(おわり)

posted by ihagee at 18:20| 原発

2017年07月28日

「リニア中央新幹線」が「オンカロ」になる日



経済産業省は28日、原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)について、最終処分場の候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」を公表した。日本の基礎自治体約1750のうち、約900が安全に処分できる可能性が高い地域にあたる。日本の陸域の約3割を占める。経産省はマップをもとに9月から自治体への説明を始め、候補地の選定作業に入る。

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ゴミ屋敷にはゴミが投げ込まれるのが世の常。杜撰に捨てようものなら杜撰に世界中から投げ込まれることになる。「食べて応援」とか「痛みを分かつ」とか「笑っていれば放射能は取り憑かない」とか政府や御用学者達が言えば、核のゴミに寛容な国民性であるかのごとく国際社会にも発信していることになる。フランスの企業が世界の核のゴミの捨て場を日本に見つけたようだ(日本が「世界の核のゴミ捨て場」になる?〜仏ヴェオリア、日本で低レベル放射性廃棄物処理開始へ!〜

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「世界の核のゴミ捨て場」が日本という国土の相場になるかもしれない。

大深度法案が参議院を通過したのは原発問題など一般に語られることもなかった2000年5月19日。特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律案の通過は同年5月31日とほぼ同時だった。当時議員をしていた俳優の中村敦夫氏は高レベル放射性廃棄物の地層処分に反対する集会で「とんでもねえよ。俺が反対したのは、この二つの法律がセットになったらやばいと考えたからなんだ」「このままでは、私たち住民は核に怯えて暮らすことになります」と言ったとされる。

中村氏の懸念は今や現実化しつつあるのではないか?以下、再録する。

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「リニア中央新幹線」。計画そのものへの懸念や批判・反対意見が巷にはあふれている。ネットでも多くの識者が批判的に見識を述べている。ところが、不思議なことに、それらについてマスメディアで報じられることはほとんどない。事業主体(所有者・運営者)は民間企業=JR東海旅客鉄道(JR東海)である。

全国新幹線鉄道整備法に事業をのせることによって、2027年に開業を目指している首都圏 - 中部圏間の総事業費は約9兆円とも試算される資金面での全面的な支援(財政投融資や税制上の優遇など)をJR東海は国に取り付けることができ<国策民営プロジェクト>とも言われている(最終的には30兆円の税金がこの<国策民営プロジェクト>に投じられることになるという見方もある)。

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高齢化率で世界一の我が国において鉄道旅客の伸び代は将来減る事はあっても決して増えるようなことはないだろう。既存の東海道新幹線の輸送力が限界に近づいており、その補完・代替手段として「リニア中央新幹線」が必要だとされてきたが、新幹線の利用者は近年、高速バスや航空路にシフトし続けておりその輸送力に於いて将来の限界を想定する状況にない。建設後半世紀を経た東海道新幹線の老朽化や近い将来必ず起こるとされている巨大地震の影響へのリスク対策として「リニア中央新幹線」が必要とする説明もあるが、日本列島を左右に分断する大活断層「糸魚川静岡構造線」に抗って建設すること自体がリスクであると指摘する声もある。僅かの断層のズレであっても構造物に影響が及んだり、悪くすれば大事故になる可能性もある。そんなことは判り切っているのに、発展途上国並みの右肩上がりの経済効果があたかも旅客事業によって創出されるかの如くかくも巨大なプロジェクトが現れる。イノベーションの創出というもっと大きな枠で捉えるべきとの意見もあるが、リニアの先に何が生まれるのか何も予見されていない。投資したところでその先の見えにくい話ゆえに、「リニア中央新幹線」は日本ではいまだ専売特許であっても、欧米ではすでに見切りをつけた「過去の先端技術」でもある(日本とかつてその技術を競ったドイツはすでに撤退している)。

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「リニア中央新幹線」と「原発」との社会・経済システム上の構図の類似を指摘する声もある。その構図とは共に<国策民営プロジェクト>であり、多分に政治的且つ闇雲な必要性から始り、後から様々と理由を付け加える点にある。それら理由が理由になっていない点も共通している。

東京電力福島第一原子力発電所の事故がきっかけで殆どの原発が止まっても懸念されていた「江戸時代に戻る」が如くの事態になっていない。原発の電力がなければ、凍え死んだり熱中症で倒れたりするという理由も理由にならなかった。それどころか原発を動かさなくても、火力・水力などの既存のインフラからの電力供給で足りていたということが判ってしまった。我が国に於いて省エネルギー社会に向かって電力需要においても将来減る事はあっても決して伸びるようなことはない。発展途上国並みの右肩上がりの電力需要と供給の限界を想定する社会・経済状況にない。いやいや、地球温暖化防止の為には火力発電よりもクリーンな原発、と相変わらず言う人もいるだろう。原子力=クリーンを以て、核兵器=クリーンとならないことからも明らかなように、同じnuclearを都合に合わせて言い換えただけである。原子力は多重の防護壁によって制御可能だから核兵器とはそもそも違うという言い訳も、原発事故が起きれば詭弁でしかない。環境にnuclearが暴露されてしまえば核兵器と何の変わりもない。「アンダーコントロール」は政治的願望であって現実ではない。そして原子力の実態とは、一瞬の灯の為に百万年のオーダーで残り火を管理し続けなくてはならない、一時の利益の為に将来を質に入れ、未来永劫(人類の時間軸を超えて)害毒を生み出すシステムであり、クリーンさを導き出す官僚の計算式からは、その将来へのコストや環境負荷は都合良く省かれている。不都合な理由は理由とされない。彼らの得意とする無謬の象徴である。

石油・ガスなどエネルギー資源を諸外国から調達せざるを得ない我が国に於いて、国際情勢の変化によって、それらの供給が不安定化しても、安定した電力需給を行うには原発をベースロードにする必要があると国は言う。しかし、その事故は人も含めて生態系を破壊し国土を毀損するというリスクを伴っており、社会が許容可能な一般の産業事故でのリスク規模を遥かに超える地球規模のクライシスと天秤にかけて、電力を得るアンバランスぶりである。「戦車で茶を沸かすこと」と揶揄されるように、目的に不釣り合い過ぎる手段である。原発事故にみるように、外因を心配する以前に内因によって原発そのものが稼働を停止せざるを得ない状況になったことは何とも皮肉である。オイルショック(外因)の頻度よりも巨大地震など(内因)による原発事故の頻度の方が大きいことが図らずも証明されてしまったわけである。

また、原発による電力の恩恵を受ける世代がその後始末の責任を負わず、その恩恵を受けない将来世代に責任を転嫁する点、社会倫理的な問題(罪悪)も孕んでいる。ドイツはこの社会倫理に照らして脱原発に踵を返した。恩恵を受けた世代から責任を以って片付けに入ると決めたのである。

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冷静に考えれば「リニア中央新幹線」も「原発」も要らないのに、なぜ、現政権はそれらをゴリ押しするのか?

この二つに共通項を指摘する声があり、「リニア中央新幹線」が消費する電力に原発が必要との関連付けが多い。事実、山梨県のリニア実験線の主な電力供給先は東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)だった。原発再稼働に正当性があると主張する経済界の代表格がそのJR東海の名誉会長であることからも、この点が強調されがちである。しかし、試算によっても、「リニア中央新幹線」に必要な電力はせいぜい原発一基分程度しかなく、それを以て、停止中の原発全ての再稼働の必要を説くには無理がある。

そして、そのJR東海の社長からして「リニアはどこまでいっても赤字です」と言っている(2013年9月)。<国策民営プロジェクト>と呼ばれていながら、その事業主体となる民間企業の社長が「ペイしない」と公言する。旅客鉄道を業とするJR東海がその本業でペイしないとなれば、何を以てペイするのであろうか?それをJR東海に問い質すマスメディアは一つとしてない。

世界で「リニア中央新幹線」を必要とする国は殆どない。費用対効果・環境問題・健康への影響(電磁波)などに加えて、テロの恰好の標的となるなど、治安面での懸念は欧米で特に多い。専用軌条で在来線と接続できず且つ設計上の制約も多い為、輸送力も劣る。そんな「速い」だけが取り柄の輸送手段でもある。従って、「リニア中央新幹線」をショールームとして海外にその技術を売り込むのも「ない需要」を想定するかの如くの話である。

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「リニア中央新幹線」からその売り物たる「リニア」と「新幹線」を取って残るは、長大な大深度トンネルだけである。2001年(平成13年)に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(通称:大深度法)では、地下40m以深又は基礎杭の支持地盤上面から10m以深は、その上に地権者がいても公共の用に利用できるようになったが、JR東海が建設を計画している中央新幹線(東京都 - 名古屋市間)でも同法律の認可申請に向けた手続きが進められている。

「大深度地下の公共的使用」と「原発」には因果関係がある。言うまでもなく、使用済核燃料・放射性廃棄物の捨て場としての「大深度地下」である(フィンランドの「オンカロ」の例)。特に、日本列島を左右に分断する大活断層「糸魚川静岡構造線」を横切るには、地表からトンネル天井までの土被りは1100mとなると言われている。さらに、日本屈指のウラン鉱床「月吉鉱床(東濃)」などがルート上に近接する。僅かな地殻変動も高放射線も「リニア中央新幹線」にとってはマイナス要因だが、ドラム缶に詰めたりガラスで固化した使用済核燃料・放射性廃棄物にとっては、トンネルが崩落しない限りは置場として用いることができると考えても不思議でない。人目にも付かず、トンネル故に保安管理もし易い。放射性廃棄物を運ぶトンネル内がウラン鉱床由来のラドンガスで充満しようが旅客を想定しなければこれも問題がないと考えるだろう。福島の原発事故でメルトアウトした核燃料の在処さえ不問とするこの国である。たとえ、トンネルが地殻変動で崩落しても「直ちに影響はない」とこれまた不問にすることだろう。

原発技術を安倍総理大臣自らトップセールスする我が国。JR東海の名誉会長は総理大臣のブレーンであり且つ経済界きっての原発推進者である。「リスクを覚悟して原発推進」と唱える。原発売り込み先の国々へは、放射性廃棄物の引き取りまで密約しているとも噂されている。リスクが放射性廃棄物と覚悟するのなら、何をそのギャベージ(ゴミ置き場)にするか当然念頭に置いてのことだろう。また、収束の目途が立たない原発事故では日々膨大な放射性廃棄物(汚染水・瓦礫)が発生し、除染作業で集積した汚染土の処分も行き場が迷走している。

即ち、その目的でのトンネルが「リニア中央新幹線」のトンネルであれば、原発輸出事業と組み合わせれば十分に「ペイ」する話となる。不要家電引き取り前提の量販店のセールスと同じで、最初からプレファレンスな立場でセールスができるだろう。

そして「リニア中央新幹線」なる<国策民営プロジェクト>であれば始めるのは易い。そして、完成間近、又は運用開始をして程なくして地殻変動など「止むを得ない事情」を持ち出して、目的の事業を断念せざるを得ないと言い、国民の税金をムダにしない為にも、使用済核燃料・放射性廃棄物の置場に転用すると政府は言い出すだろう。もし反対するのなら、汚染土などは全国自治体の公共事業で使わざるを得ないと脅すかもしれない。

世界中で嫌われる放射能のゴミを一手に集め、処分場として国土を供する。そのバーターとして原発技術を国策化して諸外国に売り込むという図式である。安倍総理大臣の「法衣の下の鎧」に騙されないようにと巨泉さんは遺言した。法衣が「リニア中央新幹線」で、その下の鎧が原発技術であり、原子力に名を借りた核拡散であってはならない。「ペイしない」と事業主体が公言する「リニア中央新幹線」に、国策としてペイする鎧は隠れていまいか?と疑う目が必要である。

原発事故はこの国の宿痾(不治の病)となりつつある。この国が亡びるとすればそれは外因などではなく原発事故なる内因だと思う。金融政策の禁じ手を平然と用い「毒を食らわば皿まで」がアベノミクスの基調であれば、原発事故についても同じ基調の最終章が待ち構えている気がしてならない。チェルノブイリの森に帰る「サマショール」と呼ばれる老人達さながら、我が国に於いても同じような人達(私も含め一般庶民)が近い将来、放射性廃棄物の墓守となり、富裕層のみがモーゼの出エジプト記のように、TPPの大海原の向こうに生き場所を求める。そんな「美しくない国」もあながちナンセンスとは言えまい。

ソ連邦崩壊の原因こそ、チェルノブイリ原発事故であり(ゴルバチョフの証言)、その余波はウクライナの内戦で今も続く。一基の事故で大国が脆くも崩れ去ったこの歴史の事実を鑑みれば、我が国は尚のことであろう。

高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が廃炉になる可能性が出てきた。「もんじゅ」に代表される実現の見通しが立たない核燃料サイクルに、12兆円以上の税金が費やされてきた事実。これも闇雲な必要性で始めておいて、何も生み出さないプロジェクトの典型である。ただ維持するだけで今後も毎年1600億円ずつ消えていく。核燃料サイクルの頓挫は、トイレがない限り原発がこれ以上続けられないことを意味している。換言すれば、原発がエネルギー政策のベースロードであり続けるのであれば、トイレを安倍政権は探すだろう。そのトイレをモンゴルに断られ、使用済み核燃料の再処理目的でのフランスへの輸送もテロの脅威を考えれば将来難しくなるだろう。それどころか、原発輸出の条件として輸出先の放射性廃棄物の引き受けまで約束してしまえば、「あの場所しかない」と考えも不思議ではない。

(おわり)
posted by ihagee at 22:48| 原発

2017年07月20日

いつまでも「うそつきロボット」で良いのか(原発事故なる国家の宿痾(治らない病)続き)


かつて命が輝いていた町は、死の町になった・・
チェルノブイリ事故被災者の言葉。

そして、我々はこれを見ても、何度でも同じ過ちを繰り返すのだろうか? (お役立ち情報の杜サイト)


(図(原発事故の避難基準) 出典:阿部憲一氏のフェイスブック投稿資料)

そして、ヒアリの大騒動は国民の耳目を政権醜聞から逸らすためのフェイク(ウソ)、稲田朋美防衛相の答弁は虚偽(ウソ)だった。

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ウソを振りまきウソをつくことが、この政権の常套手段となっている。この政権のウソの本源は原発事故にあり、「アンダーコントロール」なる虚飾・粉飾(ウソ)でこの国はすっかり汚染された。ウソの主体が首相と取り巻きであることは言うまでもないだろう。正確には首相個人の性状(性質と行状)に由来する。もうホトホト、ウソにはうんざりした。

「この様に息を吐くようにウソをつかれたら、やってられません!国民は。」と西尾氏。

以下、拙稿を再度掲載したい。

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2016年12月2日、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏が参議院のTPP特別委員会で意見陳述を行なった。
医療の現場を統括する立場からTPPによって生ずる看過することができない問題点を鋭く指摘している。



TPPについての意見陳述であったが、放射線治療の専門家として最後に東京電力福島第一原子力発電所の事故についてこう述べて締めくくっている。

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「最後に、大変深刻なのは、今、福島から出ている放射性物質、これは微粒子として浮遊してます。残念ながら。そういうものと、農薬も含めた化学物質が人間の身体に入った場合、相乗的に発ガンするって事が動物実験で分かってます。こういう多重複合汚染の社会になって来て、恐らく2人に1人がガンになるっていわれてますけども、多分20〜30年経ったら3人のうち2人はガンになります。僕はとっくに死んでますから、若い議員さんは是非確かめてください。この場で西尾が嘘を言ったかどうか確かめて欲しい。本当にガンがどんどん増える社会になります。自分たちの国でキチッと法律で、ある程度規制出来る様な体制を作る為には、決してTPPに加入すべきではないと私は思っております。」

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TPPを容認すれば「多重複合汚染の社会」が到来すると警告する。
原発事故が招来した(し続けている)内部被曝という「国家の宿痾(治らない病)」を直視すれば、食品を含めた放射線防護が政治の最優先の課題であるにも関わらず、内部被曝と相乗する要因を市場の原理に委ねて敢えて取り込むTPPには断固反対するという意見陳述である。

対米関係で医療・食品という国民の生命に関わる分野で国家としての自主性を発揮できない経済協定はTPPに限らない。TPPに代わる日米間のFTAでも同じだ。

2011年あの原発事故の後、4ヶ月ほど経過した梅雨明けの頃、首相官邸下三宅坂(私の通勤経路)の道路脇の植栽が一斉に赤く枯死した。あまりに異様な光景だったので写真に撮った。撮影後、一週間ほどでおおぜいの道路作業員が枯死した植栽を撤去していた。その一人にこんなことはいつもあるのか?とたずねると、経験したことがないとのことだった。生まれてこのかた経験のない突然の大量の鼻血に見舞われたのもこの頃だった。半日ベッドで仰向けになっても止まらず、喉の奥に黒い血餅がべったり貼りついた。指の関節がキリキリと痛み、咳が止まらなかったことなど、身体中が異常を感知していた。そして今、駅の階段を降りる際に以前は早足で降りていたのに、蹴つまずきはしないかと足元を気にしながら降りるようになった。

そんな身体の警告すら「風評被害」やら「放射脳」とあざ笑って、なおも「福島の影響は及ばない」などとウソをつき、その影響がさらに深刻になるような要因を一部の富裕層の金儲け目当てに招き入れようとする政治に対して、西尾氏は「(政治家以前に)一人の人間として、共に生きる社会をどう作るかっていう事を本当に真剣に考えて頂きたい。」と憤っているのだろう。

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「この様に息を吐くようにウソをつかれたら、やってられません!国民は。」と西尾氏。
いつまでも「うそつきロボット」で良いのか、東京オリンピックでもカジノでも万博でもなく、この国の喫緊の課題は放射線防護でしかない筈だ。原発事故なる国家の宿痾(治らない病)を正しく診立て、政治を糾す西尾氏の言葉は重い。

(おわり)
posted by ihagee at 03:04| 原発