2017年12月03日

「五輪」という破壊(続き4)



(オレンジ色の囲いの向こうは伐採予定林。池には絶滅危惧種のメダカが棲息する。=2日、中野区立・平和の森公園)



(同公園の池)


ナラやカシの生い茂る武蔵野の森、絶滅危惧種のメダカの棲む池、市民に暫しの憩いを提供し続けてきた。それも今年が最後となるかもしれない。中野区の「平和の森公園」内の5万4,700u・1万7千本もの樹木が来年の1月9日から一斉に伐採されるという。

目的はトラックや体育館を作るため。「東京オリンピックで海外から訪れた選手の練習場に充ててもらう」 (中野区職員)

区民の税金を使って区民の共有物を破壊する目的は、五輪、それも海外の選手のためという。住民らは11月28日、「樹木の伐採と陸上トラック設置で子ども達の遊び場等が奪われる」などとして、中野区に対して住民監査請求を提出した。監査請求が却下されれば訴訟に持ち込む。

(出典:田中龍作ジャーナル『「オリンピック」口実の公共工事 中野区が樹木1万7千本伐採』)

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「平和の森公園」ばかりでなく「上野公園再生整備工事」では都が主導しより大規模に樹木の伐採が行われ、上野の森はすっかり痩せてしまった。「幹回り90cm以上の高木だけで244本が伐られました」と言う。鬱陶しく見苦しい雑木は刈り払って小洒落たカフェやら商業施設で海外からお越しいただく方々に「おもてなし」をするそうだ。


(上野公園の「樹木整理平面図」。濃く塗られた円が伐採された木を示す)


わずか数週間のイベントにすぎない「五輪」のために、それもスポーツにかこつけた経済活動のために、数十年分、否、百年以上の年月分の歴史的資産・資源を損なっても良いとする行政。市民の<優先席>であるべき公園を「俺こそ優先」と言うアスリートやゼネコン、商業活動の拠点としようとする企業。その心根は浅ましいとしか言いようがない。

巨費に見合う「スポーツの価値」があるのか。発信力を持つはずの著名なアスリートがほとんど声を上げていない。著名なアスリートほどスポンサーシップ契約で企業側の利害に縛られ、その企業の経済活動に影響を及ぼしかねない発言はできないのだろう。ここにも商業五輪の病みがある。五輪憲章の唱える「均整のとれた総体としての人間」どころでなく、心と体が別々に器用に動く操り人形のようなアスリートが大増産されるだけである。

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五輪は破壊しかもたらさない。五輪旗の下にモラルハザードが大手を振ってまかり通り心が破壊されていく。「オリンピック災害」という言葉さえ現れた。

オリンピック災害.jpg



経済活動=五輪。歴史的資産さえ薪のように経済のかまどに焼べてしまう。発展途上国ならいざ知らず、経済成長を遂げ成熟した国家にとって、破壊を前提とする五輪はもはや不要なのではないだろうか?

「均整のとれた総体としての人間」を目標とし「人間の尊厳保持」に重きを置くことをその憲章に定めるオリンピック。この精神にしてその現実はどうであろうか?尊厳の保持どころか、尊厳なるものをバッサバッサと刈っているではないか!「アンダーコントロール」とか「(福島の)影響は(東京に)及ばない」とか言い募って、レベル7が今尚続く原発事故を過小化し、その風下の住民たちの尊厳を踏み台にしてまで「おもてなし」と満面笑顔のどこが「均整のとれた総体としての人間」であろうか?

尊厳を蔑ろに、「均整のとれた総体としての人間」とは呆れるばかりである。

「人間の尊厳保持」に重きを置くからこそ、その人間こそ五輪は要らないと言うべきである。

(おわり)
posted by ihagee at 07:08| 東京オリンピック

2017年11月15日

「五輪」という破壊(続き3)




五輪というわずか数週間のスポーツイベントのために、歴史が消される。市井の人々の暮らしが数十年と染み付いた街並みが壊される。(拙稿『「五輪」という破壊』『「五輪」という破壊(続き2)』)

スポーツをすることと都市を再開発することは本来無関係なのに、五輪においては密接に関係する。そればかりか、主客転倒し都市再開発のために五輪なる理由を持ち込んでいるにすぎないようにも思える。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会で我々が日々目にし耳にするのはカネの話ばかり。

前回、昭和39年(1964年)の東京五輪も同じだった。そしてそれまで都心にあった街並みは破壊された。人間の疎外を目的に作られた都市構造物を象徴するのが日本橋を無様に跨ぐ首都高速高架である。

小池都知事がその日本橋の上の高架の地下化を叫んでいるが、そんなことに血道を上げるのなら新たな人間の疎外たる都市構造物を作ろうとする2020年東京五輪の開催をIOCに返上すべきだろう。過去のお粗末な行政を糊塗しながら新たなお粗末を自ら招こうとすることである。都税をつぎ込んで作ろうとしている競技施設は2020年東京五輪開催後は都民の負債になる話がすでに出ている。負の遺産となることがわかっているのに今さえ儲かればと群がる蟻。もりかけ問題と一脈通じる。モラルハザードが繰り返される。

以下は昭和39年(1964年)の東京五輪で破壊される前の東京の景観(1950年代・いずれもKoni PanSSブローニー・ネガフィルムから直接スキャンしたもの)。日常の生活が一体となった景観が、その負ってきた歴史とともに何の違和感もなくその地割に組み込まれているのである。先進諸国の首都景観にその負ってきた歴史を消し去り続けているのは我が国ぐらいだろう。その負ってきた歴史を寸断し身勝手・ご都合に解釈してやたら「未来志向」を叫ぶ政治の世界にも共通する。われわれは間違っているのではないか?立ち止まって考える時間が必要だ。

Bygone days in Japan (1950s)

(空が広かった日本橋)


Bygone days in Japan (1950s)

(銀座・不二越ビル上の森永広告塔が懐かしい)


Bygone days in Japan (1950s)

(銀座界隈・戦前からのビルも残っている)


Bygone days in Japan (1950s)

(上野・2020東京五輪に向けて古い景観はさらに少なくなった)



Bygone days in Japan (1950s)


浅草・仲見世商店街は今存亡の危機に晒されている。「ある種、大変格安のところで営業してこられたと思う。」と小池都知事の弁は、これも新自由主義経済であれば当然の自由競争でしょ、と言いたげである。文化的価値さえある街並みまで経済性の天秤にかけては結局何も残らない。スタバやマックが並ぶ仲見世商店街など文化的に無価値だ。国際文化都市を標榜するのならば都知事もそれなりの物言いをすべきだろう(「大変格安」という言い方がカチンとくる)。小池都知事は常に上から目線の言葉を口にするが少し感性がおかしいのではないか?無粋な物の言い方しかできない人のようだ。江戸時代以来、仲見世商店街が続くのも、その風情が庶民に買われているのであってその文化的価値と「大変格安」なる経済価値観をひょいと天秤にかけること自体がおかしい。都知事を含め都職員がどんなにカネを使おうと頭を使おうと仲見世商店街と同じレベルの日本を表すアイコンは作れないのだから、その宣伝効果にもっと敬意を払うべきだろう。それと浅草寺もあまり慈悲のないことはしないこと。無粋と無慈悲でもやっていけるのは大資本の企業だけ。そういう大資本があの場所が転がり込むことをホクソ笑んでいますよ。

同じく都が強制的に閉園させた「上野こども遊園地」の跡地には『上野恩賜公園再生基本計画』なるお題目で「日本の顔としてふさわしい・国内外の多くの人々が集い、にぎわっている」がその再開発の将来像だとか。こういう言い方は良くない。「上野こども遊園地」があたかもそうでない・そういうことに貢献してこなかったと言わんばかりだからだ。ここにも営々と事業を行ってきた人々への敬意というものがない。それを愛してきた人々の気持ちさえ汲もうしない冷たい行政が垣間見える。

「大阪府市から一億円程度の補助金が文楽に出ている。世の中一億の金を引っ張ろうとしたらどれだけのことをしなければならないか。文楽協会の経費は、無条件で赤字が填補される。そんな会社は世の中に存在しない。皆売り上げを上げるために必死になっている。(橋下大阪市長=当時、弁)」を思い出した。伝統芸能ですら経済性の観点から潰しても構わないとする。文楽=会社=売り上げという短絡思考。小池都知事と橋下氏が仲が良いのも頷ける。

巨額な利益を内部留保している大企業に文化事業へのスポンサー(商売抜き)となるよう強く働きかけるのも(メセナ)、首長の役目であることをお忘れなく。弱い者に責任を押し付けて良いはずがない。

Bygone days in Japan (1950s)

(上野駅前)


(おわり)



posted by ihagee at 03:48| 東京オリンピック

2017年09月15日

東京、リオ五輪で買収と結論 (英ガーディアン紙報道)



2020年東京五輪招致に関連する裏金(2.4億円)の疑惑。

【ロンドン共同】2016年リオデジャネイロ五輪と20年東京五輪招致の不正疑惑を巡り、ブラジル司法当局が両五輪の招致委員会から、当時国際オリンピック委員会(IOC)委員で国際陸連会長だったラミン・ディアク氏(セネガル)を父に持つパパマッサタ・ディアク氏に対し、多額の金銭が渡った可能性があると結論づけたことが分かった。英紙ガーディアン(電子版)が13日、報じた。(共同通信47News/ 2017/09/14報

 フランス当局の捜査を基に書類をまとめたブラジルの当局は、IOC内で特別な影響力があったラミン・ディアク氏を買収する意図があったとしている。

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ロシア陸連のドーピング疑惑を端緒としてまさに驚天動地の展開となった。裏金を差し出したのが招致委員会だったのか、そのエージェント(電通)だったのかは未だ不明だが、招致の為の買収を目的とした裏金であり、その金の出先は日本・東京と国際的に報じられてきた。

ブラジル司法当局の今般の結論は、先に捜査を開始している仏の検察当局の捜査資料を基にしている。そして、東京オリンピック招致活動においてIOC実力者の金銭授受の事実を確認したようである。

疑惑が犯罪として立件される可能性もあり、事と次第に拠っては2020年の東京開催中止をIOCは決断するかもしれない。そうならないとしても、このまま何の自省も道義的責任も示さずに東京都が五輪を開催することについて国際世論は黙っていないだろう。嘗てのモスクワ五輪のように参加を見送る国も現れるかもしれない。

そもそも福島での原発事故を「アンダーコンロール」などと嘘をつき、被災者を踏み台にした招致であった。北朝鮮動静も一層不安定化している。そしてこの結論。そもそもに立ち返って開催返上を含めて見直すべきだと思う。

(おわり)
posted by ihagee at 03:37| 東京オリンピック