2015年11月23日

8mmフィルムのデジタル化<フィルムメーカーの責任>

8mmフィルムのデジタル化について記事を投稿したが(<8mm フィルムのエアリアル・テレシネ(空中結像)化>、<8mm フィルムのスキャンとムービー化>)、この古い媒体についてはフィルムメーカー側の責任が問われている。

以下、引用(<8ミリフィルム>から考えること)。

「フィルム設計時の予測においてTACフィルムは普通の環境では少なくとも百年は寿命があると想定されていた(期待寿命)。ところが相対湿度50%、温度25℃の条件に置いた場合、期待寿命は僅か30年ということが1970年〜1980年の段階でわかってきたのである。我が国の一般家庭での保管環境はこの条件よりも悪い筈なので、少なくともPETフィルムに切り替わる1965年以前のフィルムについては(正確に言えば、レギュラーとスーパー8の各フィルムについてはTACのままで遂にPETには切り替わらなかったので、これらフィルムについては1965年以後も同じである)、一般家庭の通常の保管条件では期待寿命にすでに到達してしまっているとも言える。劣化が設計時の予測よりも早く進むことは1990年代までにフィルムメーカーは十分把握していたであろう。当初の期待寿命百年はフィルムメーカーにとってはフィルムの複製(PETなど安全フィルムを用いたリプリント)・劣化フィルムの修復や、フィルム映像の安全確実な電子化などの為の新技術開発の猶予期間でもあった。ところが、その猶予期間がもはやないことを知るや見捨ててしまったのである。自社製品の二律背反(トレードオフ)のジレンマを解消するための企業努力が新たな技術を生むが、その企業努力をやめてしまったとも言える。これは、企業側で取り組むべき製品欠陥問題のツケを消費者に押し付けて、電子化サービスに話をすり替え<8ミリフィルム>の安楽死やむなしとすることとも受け取れる。フィルムという単なるモノではなく、そこに記録されている映像の歴史的資料価値(後述)に鑑みればそうそう簡単に一企業の事業性の観点から見切りをつけられては困る話なのである。企業としての社会的使命と責任が問われることでもある。斯様にフィルムメーカーは<8ミリフィルム>(TACベース)をカメラや映写機とともに売るだけ売っておいて、フィルムの複製(リプリント)や劣化したフィルムの修復の技術を提案せず、さらにはそのフィルム映像の電子化には35ミリフィルムの場合のようなコンシューマ向けのスキャナーを開発・提供しようとせず、さりとて代わりに提供する電子化サービスはふつうの<テレシネ>でありながらその料金は高く事故免責を最初から掲げるなど、悉く及び腰でその製品の数十年来の愛用者にとってはアンフレンドリー極まりない。」

富士フィルム株式会社がその気になりさえすれば、コンシューマ向けの8mmフィルムスキャナーの一つも製品化できる筈だし、そうすることが8mmフィルムを数十年売ったフィルムメーカーの社会的責任だと思う。同社のテレシネサービス(デジタル化サービス)に於いて、「万一作業過程で事故が起きてフィルムが台無しになっても、記録されていた映像価値を金銭で補償することはできないと、初めからメーカー側は免責を掲げている。」
ならば、尚更のこと、<自己責任>で簡単に変換できる機械を富士フィルムは提供すべきだろう。前掲の記事で紹介したWolverine社の8mmフィルムスキャナーに自動的にフィルムを送る機構を付加する程度で良いのである。後処理までワンストップでしてくれれば、それこそワンダーである。富士フィルムの最新製品<ワンダーフォトボックス>での<魔法>は同社の歴史で最も長く販売した動画記録媒体(8mmフィルム)に対してもかけるべきと私は思う。
posted by ihagee at 11:04| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2015年11月22日

8mm フィルムのエアリアル・テレシネ(空中結像)化

父が撮った8mmフィルム(主にレギュラー・無声)が長尺で十数リール分ある。家族を中心にした催事を1950年代〜1980年代初めにかけて撮ったもので、これらについては光源をハロゲンからLEDに換装したエルモの映写機と凸レンズ(これは書見台を代用)を用いたエアリアル・テレシネ(空中結像)化でデジタルムービー化を行った。業者のテレシネサービスと比較しても自慢できる出来である。


(エアリアル・テレシネのサンプル)

映像は1958年-1973年の年度毎にアップロードした映像十数本からシーンを集めたダイジェスト版。アップロードした映像は全て凸レンズを使いElmo社製K-120 SM映写機(映写スピード微調整可能・LED光源搭載改造済)で投影したエリアル像で作成。フレームの周辺にゴミが映り込んでいるが、フィルムの清掃が足らない為に生じた現象なのでご容赦。8mm映写機用LEDランプはヤフオクでも入手可能である。

エアリアル・テレシネ(空中結像)とは、映写機の前にスクリーンの代わりに凸レンズを配置し、通常用いるスクリーンを透明にしてそのスクリーンの裏側から映像を見るということ。つまり、映写機から放たれた光は凸レンズに当たるとレンズ内で屈折し結像する。その像(空中像=エアリアル)をレンズの向こう側から直接デジタルカメラで動画撮影することでフィルムの映像をデジタル化するやり方。一般的な白壁に投影した映像を間接的にデジタルカメラで動画撮影する方法よりも、直接光を捉えられる点で色抜けが良い。

私が用いている凸レンズは、実は私の住んでいるマンションのゴミ置場に捨ててあった拡大鏡をそのまま再利用したものだ。この拡大鏡はホームセンターで数千円程度で売っているものでありきたりの商品。(レンズ直径は12cm程度)拡大鏡の自在腕を用いて、レンズ面が映写機の投射レンズと正面対抗するように配置。拡大鏡のレンズの上下位置やレンズの微妙な角度をもたせるにはこの自在腕が役に立つ。

拡大鏡.jpeg

実際には映写機にフィルムをかけて、LED光で映像を静止した形で投射し、拡大鏡のレンズ面に光が当たってレンズ内で結像する位置を目視しながら探ることになる。映写機の投射レンズの調節機能も用いる。この位置合わせには案外時間がかかる。通常のハロゲン光だと、この時間でフィルムが焼損してしまうが、LED光源だと、この心配は全くない。(ハロゲン光源でエアリアルでのテレシネをされている方はこの作業においてかなりフィルムをダメにしていると思う)

その状態で拡大鏡を覗くとある位置で、くっきりと映写機から投射された画像がレンズ内に見える。その状態で、映写機と拡大鏡の位置を固定し、デジタルカメラ(固定焦点・露出はマイナス3程度に固定)の動画モードでレンズ内に結像した像がカメラ側のファインダーでどう映るかを確認。デジタルカメラも拡大鏡とレンズ面同士が正確に対抗する位置を探す。その位置を固定するには三脚でカメラが動かないようにした上で、映写機をまわして、カメラ側のファインダーでフリッカーの程度を確認し、映写機側の速度調整機能を用いて見た感じでのフリッカーが少なくなるように調整。

デジタルカメラに記録された映像は、左右反転イメージなので、パソコンの動画編集ソフトで正転させ、コマ速度を調整し、撮影時の音声(映写機の音など)をすべて消去し、さらに、ソフト上で色味や明度を調整して動画に仕立てる。

これらが一連の作業。実際にはかなり大掛かりで、映写機・拡大鏡・デジタルカメラをこの目的で配置するにはそれなりの空間(1.2メートル程の光路)が必要となる。しかし、何回かやって馴れてしまえば簡単な作業となる。デジタル変換業者に高い金を払って結果物があまり満足いかなかったり、業者側の作業でフィルムをダメにされたりすることを考えれば、自己責任で納得いくまで試行錯誤する方が良いと私は思った。
posted by ihagee at 13:01| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2015年11月21日

8mm フィルムのスキャンとムービー化

父が撮った8mmフィルム(主にレギュラー・無声)が長尺で十数リール分ある。家族を中心にした催事を1950年代〜1980年代初めにかけて撮ったもので、これらについては光源をハロゲンからLEDに換装したエルモの映写機と凸レンズ(これは書見台を代用)を用いたエアリアル・テレシネ(空中結像)化でデジタルムービー化を行った。業者のテレシネサービスと比較しても自慢できる出来である。そのエアリアル・テレシネについては追って投稿したい。

ところで、アセテート・ベース(TAC)の8ミリフィルム(レギュラー)はビネガー・シンドロームという経年劣化が始まっていた。酸っぱい臭いがしてフィルムベースが変形したり脆くなるのである。テレシネの過程でもフィルムの一部が千切れてしまったり、映写機の中で詰まってグチャグチャになってしまった。それら千切れたり、グチャグチャになったフィルムのかけらを再びつなぎ直して映写機にかければ同じことになりかねない。かと言って捨てる気にもならない。かけらと言えども記録が保存されているのである。

8mmfilm.jpeg

そこで かけらとなった8mmフィルムをスキャンしてデジタル化できないかと思案した。米国のWolverineという会社が8mmフィルム(スーパー)もスキャンできる機械を販売していることを知り、eBayを通じて購入した。

Wolverine.jpeg
(Wolverine 4-in-1 F2D 20-Super)

送料込みで15,000円程である。スーパー8対応だが、フィルム幅の同じレギュラー8でもスキャンできる。さっそく、かけらとなった8mmフィルム(レギュラー)をスキャンし、フレーム毎の静止画像をiMovieでつなぎ合わせ、YouTubeにアップロードした後、スタビライズとトリミングをして記録をムービー化した。


(1967年撮影:鈴鹿サーキットにあった<ホンダランド>での一コマ)

上述の自家製テレシネと比較すると画質は落ちるがそれでも記録が残せることに満足した。一コマスキャンするのに約5秒(上掲の映像ではその部分は早送りにしているが)、フィルムを手送りしてはポチッとボタンを押す操作の繰り返しなので至って簡単である。スキャンした静止画像はWolverine本体の背面に差し込んだSDカードに記録される。これをパソコンに読み込んでの後処理である。フィルム送りまで自動化したお手軽スキャナーをWolverine社が製品化してくれることを願うところである。
posted by ihagee at 13:47| 8mmフィルム(アナ→デジ)