フジカのマクロシネコピー
その昔、シネコピーと言って、ポジのムービーフィルム(16mm又は8mm)からスティルの写真を複製する為のアダプターが売られていたのを覚えている人はもう少ないかもしれない。(フィルムからフィルムへの複写)
今もカメラ中古のカメラ用品店やヤフオクで手に入れることができる。
<フジカのマクロシネコピー>がその代表的な商品で、これは、35mm一眼レフカメラのレンズを取り外して、代わりに装着するものだった。16mmと8mmフィルム用のマスクも付いており、実際にそれらのフィルムをコマ毎に35mmフィルムに複写することができた。
アダブタは以下の簡単な構成だった。
・画面マスク(8mm用)
・マスク台座
・ヘリコイド付きマクロレンズ(M42マウント)
・接写リング(エクステンションチューブ)
以下の写真は16mmフィルムでの使用例。

さて、時代は下って現在、一眼レフカメラはミラーレスのデジタルカメラとなった。つまり、ミラーレスカメラを前提にこのアダプタを眺めると一つの課題が生まれてくる。
即ち、このマクロシネコピーとミラーレスカメラを用いて、8mmフィルムをコマ毎に連続デジタル撮影し、後処理にて動画に仕立て直すことはできないか?という課題である。
たとえば、
マスク台座にフィルムをコマ送りする簡単な機構を設ける。フィルムの孔(パーフォレーション)を用いてフイルムを間欠送りする為の爪や歯(クローやスプロケット)とそれらを駆動する為のステッピングモーター。
電気的なステッピングモーターでなくとも、昔ながらのゼンマイを用いた8mmカメラのフィルム送り構造でも良いかもしれない。
上述の機構にさらにコマ送りと連動する電子的又は機械的なスイッチング部を設け、コマ送りがされる度にWiFi(無線)でミラーレスカメラに遠隔でシャッターを切らせる。コマ送り→シャッターを、間欠的に繰り返す仕組み。カメラ本体側のシャッター動作はWiFiによる信号を受けてから、実際にシャッターが切られる間のタイムディレイを考慮する必要があるが、今どきのミラーレスカメラならば、このディレイもほとんどないので、間欠送りのインターバルは短くて良いだろう。
フィルムは重力を利用して垂下するように、アダプターの上部からフィルムを入れて、下へ自由落下させる(床に箱でも置いてフィルムをその中に落とすなど)。フィルムを送り出す側にリール受けを設けては、簡単なアダプターとしての体裁にならなくなるので、この際、思い切って切り捨てる(リール受けは、8mm編集機の腕を利用するなど、ユーザの側で工夫・準備してもらう)。
<フジカのマクロシネコピー>の光源は室内の光や窓辺の光であるが、それでは一定の光を得られないので、LEDを光源にする。点光源にならない程度に光がデフューズすれば市販のLED光源のライトボックス(カードタイプ)でも良いかもしれない。受光の加減はミラーレスカメラを本体とする限り、どのようにでもカメラ本体の機能で調整できるだろう。
さて、上述のようにフィルムを孔頼りに間欠送りして、正確にフレームの位置を保ち続けられるかが課題となる。コマ単位に位置を物理的に決めることは上述の機構に位置決めの為のセンサーなど複雑な機構が必要になろう。
そこで、考えられるのはミラーレスカメラの撮影範囲(フォーカスエリア)をフィルムの一コマではなく、数コマ分にし、小量域をオーバーラップさせながら、数コマ単位で連続して撮影するということである(製品検査ラインのエリアカメラと同じ仕組み)。

フィルムの搬送はオーバーラップする程度のアバウトさで良い。
その為には、画面マスクを長手方向に数コマ分拡大したり、その範囲を撮影可能にするためにマクロレンズや接写リングを調整する必要がある。
オーバーラップさせた部分はソフトウェア上で合成代として用い、貼り合せて連続して切れ目がない画像にする。一般的なソフトウェアとしてはImage Composite Editor 2.0が知られており、おそらくフリーウェアで似たようなものもあるだろう。)そこからコマを切り出して動画に仕立てるには、CineToVidProなるコマ切り出し・動画作成の為のフリーウェアがダウンロード可能で公開されている。
このソフトを用いた結果の動画は以下の通り
フラットベッドスキャナ=ラインイメージスキャナを用いた為か、フィルムの歪みがそのまま画像結果に現れているが、切り出しは適切に行われているようだ。
カメラ側が上述のソフトウェアを持っていれば、ワンストップで処理が終わる。そう考えると、デジタルのミラーレスカメラよりも、iPhoneなどカメラを備えたスマホの方がインテグレーション可能かもしれない。
その好例がLomography Smartphone Scannerである。
35mmフィルムというレガシーなソフトが最新のiPhoneとハイブリッドできるのなら、8mmフィルムだってできないわけがない。そのための資金ならクラウド・ファンディングで調達できる。あとはやる気のみ。チャレンジする人が現れるのを期待したい。
(おわり)