2016年02月15日

8mmフィルムスキャナー 待望論(フジカのマクロシネコピーから考える)


フジカのマクロシネコピー

その昔、シネコピーと言って、ポジのムービーフィルム(16mm又は8mm)からスティルの写真を複製する為のアダプターが売られていたのを覚えている人はもう少ないかもしれない。(フィルムからフィルムへの複写)

今もカメラ中古のカメラ用品店やヤフオクで手に入れることができる。

<フジカのマクロシネコピー>がその代表的な商品で、これは、35mm一眼レフカメラのレンズを取り外して、代わりに装着するものだった。16mmと8mmフィルム用のマスクも付いており、実際にそれらのフィルムをコマ毎に35mmフィルムに複写することができた。

アダブタは以下の簡単な構成だった。
・画面マスク(8mm用)
・マスク台座
・ヘリコイド付きマクロレンズ(M42マウント)
・接写リング(エクステンションチューブ)

以下の写真は16mmフィルムでの使用例。

fujica.png

さて、時代は下って現在、一眼レフカメラはミラーレスのデジタルカメラとなった。つまり、ミラーレスカメラを前提にこのアダプタを眺めると一つの課題が生まれてくる。

即ち、このマクロシネコピーとミラーレスカメラを用いて、8mmフィルムをコマ毎に連続デジタル撮影し、後処理にて動画に仕立て直すことはできないか?という課題である。

たとえば、
マスク台座にフィルムをコマ送りする簡単な機構を設ける。フィルムの孔(パーフォレーション)を用いてフイルムを間欠送りする為の爪や歯(クローやスプロケット)とそれらを駆動する為のステッピングモーター。

電気的なステッピングモーターでなくとも、昔ながらのゼンマイを用いた8mmカメラのフィルム送り構造でも良いかもしれない。

上述の機構にさらにコマ送りと連動する電子的又は機械的なスイッチング部を設け、コマ送りがされる度にWiFi(無線)でミラーレスカメラに遠隔でシャッターを切らせる。コマ送り→シャッターを、間欠的に繰り返す仕組み。カメラ本体側のシャッター動作はWiFiによる信号を受けてから、実際にシャッターが切られる間のタイムディレイを考慮する必要があるが、今どきのミラーレスカメラならば、このディレイもほとんどないので、間欠送りのインターバルは短くて良いだろう。

フィルムは重力を利用して垂下するように、アダプターの上部からフィルムを入れて、下へ自由落下させる(床に箱でも置いてフィルムをその中に落とすなど)。フィルムを送り出す側にリール受けを設けては、簡単なアダプターとしての体裁にならなくなるので、この際、思い切って切り捨てる(リール受けは、8mm編集機の腕を利用するなど、ユーザの側で工夫・準備してもらう)。

<フジカのマクロシネコピー>の光源は室内の光や窓辺の光であるが、それでは一定の光を得られないので、LEDを光源にする。点光源にならない程度に光がデフューズすれば市販のLED光源のライトボックス(カードタイプ)でも良いかもしれない。受光の加減はミラーレスカメラを本体とする限り、どのようにでもカメラ本体の機能で調整できるだろう。

さて、上述のようにフィルムを孔頼りに間欠送りして、正確にフレームの位置を保ち続けられるかが課題となる。コマ単位に位置を物理的に決めることは上述の機構に位置決めの為のセンサーなど複雑な機構が必要になろう。

そこで、考えられるのはミラーレスカメラの撮影範囲(フォーカスエリア)をフィルムの一コマではなく、数コマ分にし、小量域をオーバーラップさせながら、数コマ単位で連続して撮影するということである(製品検査ラインのエリアカメラと同じ仕組み)。

overlap.png

フィルムの搬送はオーバーラップする程度のアバウトさで良い。
その為には、画面マスクを長手方向に数コマ分拡大したり、その範囲を撮影可能にするためにマクロレンズや接写リングを調整する必要がある。

オーバーラップさせた部分はソフトウェア上で合成代として用い、貼り合せて連続して切れ目がない画像にする。一般的なソフトウェアとしてはImage Composite Editor 2.0が知られており、おそらくフリーウェアで似たようなものもあるだろう。)そこからコマを切り出して動画に仕立てるには、CineToVidProなるコマ切り出し・動画作成の為のフリーウェアがダウンロード可能で公開されている。

このソフトを用いた結果の動画は以下の通り



フラットベッドスキャナ=ラインイメージスキャナを用いた為か、フィルムの歪みがそのまま画像結果に現れているが、切り出しは適切に行われているようだ。

カメラ側が上述のソフトウェアを持っていれば、ワンストップで処理が終わる。そう考えると、デジタルのミラーレスカメラよりも、iPhoneなどカメラを備えたスマホの方がインテグレーション可能かもしれない。

その好例がLomography Smartphone Scannerである。

35mmフィルムというレガシーなソフトが最新のiPhoneとハイブリッドできるのなら、8mmフィルムだってできないわけがない。そのための資金ならクラウド・ファンディングで調達できる。あとはやる気のみ。チャレンジする人が現れるのを期待したい。

(おわり)
posted by ihagee at 18:09| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2015年11月25日

8mmフィルムスキャナー 待望論(続き)

8ミリフィルムがスキャンできる唯一のコンシューマ向け製品としてWolverine社のフィルムスキャナー(Wolverine Super F2D)を、本ブログ記事では取り上げてきた。

安価なコンシューマ向け製品としての立ち位置は、35mmフィルム(ネガ)やスライド(ポジ)のスキャナーとしては他社競合品がいくらでも存在するので月並みであるが、こと8mmフィルムに限れば、この製品しかない。公称スペックは、1/1.8" inch 5 mega pixel CMOS、Scan Quality 1,800 dpi、Data Conversion 10 bits per color channelで、接眼レンズはF2.0の4枚組ガラスのLED光源である。ハイスペックにすればそれだけ筐体が大きくなったりスキャンに時間がかかったりするので、このスペックが設計上の妥協点なのだろう。

Wolverine社の想定する8mmフィルムスキャンはおそらく、フィルムの任意のコマから静止画像を取得することが主目的であって、静止画像を合成して動画にすることは副次的目的だろう。副次的とは言え、動画にできることまでは同社のプロモーションビデオで説明があるので、あとはユーザのやる気だけである。スキャンに1コマ5秒、フィルムを手繰って次のコマを位置決めするのに5秒、つまり、1コマ10秒程度の作業を根気よく繰り返すことになる。映像として1分程の長さの8mmフィルムはコマ数にして1440コマ(24コマ/秒)なので、約240分(4時間)の作業である。今どきのビデオと違って昔はフィルムを無駄撮りしていなかったので、1分程の長さであっても想い出が詰まった箇所を探すのは容易だろう。その部分だけでもデジタル化できれば意味がある作業だと思う。どの範囲を作業するかは、事前に手回しのフィルム編集機(ヤフオクで中古品が安く手に入る)で当たりをつけておくと良いかもしれない。

そのようにして、部分的にWolverine Super F2Dで取得した静止画像を後処理にて動画に合成した事例を以下紹介したい。




(これは私がWolverine Super F2Dで試した例・再掲)


(これはWolverine Super F2Dで35mmキネフィルムをデジタル映像化した例)

先の記事でも述べたように、コマ位置は手で決めてスキャンするので微妙にスキャンしたフレームの範囲が前後にずれる。そのまま取得して静止画像を繋げて合成すると(GoogleのPiscaやiMovieで合成可能)、上下に細かくぶれが生じる。しかし、YouTube上のスタビライズ機能を用いれば不自然感はあるがこのぶれは軽減される。YouTubeのスタビライズ機能は被写体にかかる。つまり、ビデオカメラの撮影中の手振れをソフトウェアで補正するためのものであって、当然ながら、8mmフィルムから取得した静止画像の前後ブレを補正するものではない。

8mmフィルムからWolverine Super F2Dを用いて取得した静止画像ではパーフォレーション(孔)が写り込むので、孔の位置からフレームの位置を割り出してコマ単位にソフトウェアでトリミングしてくれれば、結果としてスタビライズされる。その意味で8mmフィルムに特化したフレームの切り出し機能をネットの動画サイト上で提供してくれれば、多少位置決めが不確かな静止画像であっても構わないということになるだろう。

イメージ1608.jpg
(パーフォレーションとフレームとの位置関係)

さて、本来ならフィルムを長年売りまくった富士フィルム株式会社が企業責任として、コンシューマ向けの8mmフィルムスキャナーと前回の記事に書いたような、ネット上の編集(上述のフレーム切り出し機能を含めて)・アーカイブサービスをワンストップで提供すべきと思うが、富士フィルムの<フィルム>がもはや、遺伝子工学や生物医薬の媒体としてのフィルムの意味に代わってしまった同社にとって、いまさら8mmフィルムに事業の光を当てることはないだろう。そのようにコンシューマ側に必要性がありそれなりに需要があっても、企業の腰が重い場合は、クラウド・ファンディング形式で共感する仲間がその夢を実現するやり方がある。今の時代、その方が手っ取り早い。その成功例がiPhone(内蔵のカメラ)を用いた光学35mmフィルムのスキャナー、Lomographyである。そしてそのLomoを動画作成マシンとして、その先にネット上の映像アーカイブ(映写室)を提供することまで夢が実現しているのである。35mmフィルムでデジタル動画の作成までできるなら、8mmフィルムでもできることだろう。キネフィルムとしての歴史と残されたフィルムの量、そして資料価値はLomoKinoとしてお遊び半分の35mmフィルムの比ではないからである。そう期待したい。
posted by ihagee at 18:32| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2015年11月24日

8mmフィルムスキャナー 待望論

前々回より8mmフィルムについてブログ記事を掲載している。
8mmフィルムでの映像記録に励んでいたのは、私の父の世代であった。昭和30年〜40年代の高度経済成長期、レギュラー、スーパー8やシングル8での<ホームムービー>世代である。

その世代は今や70才台以上だろう。彼らが残した8mmフィルムの多くはそのフィルムのことを知らないその子や孫の代で捨てられる運命にある。たとえ、それが8mmフィルムという古い映像記録媒体だとなんとなく知っていても、酸っぱい臭いがするフィルムはもうダメだと思って捨ててしまうことが多い。臭わなくても映写機がなければもう観られないとか、業者に頼んでデジタル化するにもコストがかかるとかで、簡単に諦めて捨ててしまうのである。

<ホームムービー>が<ホームビデオ>に切り替わった1980年代から今日までの30年間が8mmフィルムについてよく知っているか否かの世代間格差となってしまったのである。そして8mmフィルムの劣化問題と8mmフィルムを知っている世代の消滅が折悪しくも重なって、両者が共に日々消えゆく運命にある。

8mmフィルムの劣化については、前回記事で述べたが、劣化の程度にも色々ある。
リールに巻き戻せる程度フィルムに未だ柔軟性があるが、映写機内のフィルム搬送過程で受ける物理的な力の下では破断や折れ曲がりが懸念される程度の劣化、フィルム自体に軽微なよじれや、乳剤面に軽微な剥離がある劣化、パーフォレーション(孔)の一部破損やフィルムの繋ぎ合わせた部分の強度劣化、そしてフィルム同士が癒着し塊りとなってしまった劣化などである。

そういうフィルムは大抵、納戸の戸棚の奥や押し入れの天袋に放置されている場合が多い。将来もう一度フィルムの中身を観たいと思うならば、直ちに防湿庫でフィルムを保管することをお勧めする。劣化の進行を止めることはできないが遅らせることはできるからである。カメラ店に行けば様々なタイプの防湿庫が手に入る。カメラやレンズの保管を目的としているが、フィルムの保管にも最適である。とは言っても、フィルム同士が癒着・塊りと化したら諦めるしかないだろう(それでも将来再生技術が現れるかもしれない。ゴミとして捨てないことである)。

そのように長らく捨て置かれていた8mmフィルムを映写機にいきなりかけるのは禁物。何しろ秒間17〜24コマでフィルムが映写機の中をグネグネと搬送されるのであるから、一瞬のフィルム詰まりでそのコマ分が映写機の中でグチャグチャになる可能性がある。また、映写機の光源は高熱を発するハロゲン球なので、投射口辺りでフィルムが閊えるとあっという間にフィルムがメラメラと溶けてしまう。先ずは手回しのフィルム編集機(ヤフオクなどで中古品が安く手に入る)でゆっくりとフィルムの巻き返しをしてみることである(フィルムに柔軟性がなく折れてしまいそうな場合は除く)。

通常、8mmフィルムのデジタル映像化は、映写機にフィルムをかけて白壁やテレシネボックス内のスクリーンに投影した光像を間接的にデジタルカメラで動画撮影して行う。所謂、テレシネである。しかし、前述のように経年劣化によって柔軟性を失ったり、パーフォレーション(フィルム孔)が一部千切れたり欠けたり、フィルムの繋ぎあわせた箇所の強度が劣化していたりすると、映写機においてフィルムが破損する可能性が高い。破損したフィルムを再び繋ぎあわせる為には専用のスライサーとセメントやテープが必要であるが、そんな機材を持ち合わせている人は少ないだろう。たとえあったとしても使い方もよくわからないし、また別の箇所で破損すれば修復の繰り返しでキリがない。

従って、できれば高速でフィルムが複雑に走行する映写機は使いたくないところである。フィルムを曲げない・フィルムの孔(パーフォレーション)をフィルムの搬送に使わない・高速走行させない・フィルム面の多少の反りはクリアする、そして一コマ毎にスキャンする。が理想である。Wolverine社の8mmフィルムスキャナはこれらの要件を満たしているが、なにぶんにもフィルムを手で送らなくてはならない。そしてコマの位置決めは目視で行うのもつらい。パーフォレーション(フィルム孔)に頼らず、フィルム給送量を検出し、ローラを駆動させてフィルム面を正確にステッピング搬送する技術はすでにオリンパスのモータードライブのカメラで実現済(特開平7-092530)なので、この辺りは技術的にクリアできそうである。また、リールに巻いたフィルムをこの機械で扱うにはフィルムのサプライとテイクアップの部分でそれぞれリールを支持する部分がないと具合が悪い。簡単に考えるならサプライ(フィルムの送り出し)側のリールを支持する部分だけを備え、テイクアップ(フィルムの巻き取り)側はフィルムの自由落下でも構わない。機械を机の端に設置してスキャンが終わったフィルムは重力を利用して床上の箱の中に自然に落下させる。全て処理が終わったら手でサプライ側のリールを手回しして巻き取れば良いのである。モーターで無理やりテイクアップしてサプライと同期が取れなくなって事故が起きるよりもフィルムには自然なテンションのかかり方でその方が良いかもしれない。ここまでは周知技術のアセンブリですぐにできそうだ。

H07092530.png
(特開平7-092530)

コマ単位の静止画像を自動的且つ連続的に取得できれば良しとしたい。合成し動画とするには後処理が必要だが、GoogleのPiscaでとりあえず合成し、YouTubeにアップロードしてからYouTubeの機能(スタビライズ・トリミング・速度調整)を行えば、それなりにデジタル映像(動画)となる。

(Wolverineの8mmフィルムスキャナーでのPiscaを用いた後処理説明・英語)

この後処理を一括してネット上で行い、そのまま映像を投稿するサービスを機械ごと提供してくれれば御の字であろう。例えば、Wolverine社の8mmフィルムスキャナの新製品ではフィルムからコマ単位の静止画像の取り込みは自動化され(一晩寝ている間に終わり)、その先、Wolverine社のネットサイトにそれら静止画像をまとめてアップロードすると、専用のサイトで動画に自動的に合成され(ネット上でさらに編集可能)、仮想空間(映写室)で電子化した動画を他者と共有することができるようになれば素晴らしいかもしれない。Lomoが35mmフィルムを用いたLomoKinoですでに仮想空間での映写室を提供しているのでこれが参考になる。こんなサービスまで用意されている8mm フィルムスキャナーの登場を待望したい。

ところで、reflecta ScanSuper8 が話題のようだ(216000円)。ドイツ製だが国内で販売されるようだ。でもこんなことになったら目も当てられない。

(reflecta ScanSuper8 でのフィルム詰まり)

パーフォレーション(フィルム孔)頼りでフィルムを搬送するreflecta ScanSuper8の欠点である。またこの機械はスーパー8にだけしか対応していない。孔を頼ってフィルム搬送をする限りそうなる(レギュラーは孔の位置と大きさが異なる)。そして、フィルムの経年劣化でその孔が途中で欠けたり裂けていたりするとたちまちこうなる。寝ている間に処理が済むと思って朝ビックリということになりかねない。日本と違って湿気が少ない国の製品であるから、湿気で劣化の程度の重い我が国のフィルムを想定していないのだろう。値段も筐体もでかいので、やはりWolverine社の製品程度の値段と大きさがコンシューマでの収まり限度である。
posted by ihagee at 19:54| 8mmフィルム(アナ→デジ)