2020年06月21日

Wolverine MovieMaker Pro 購入(続き)



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(Wolverine MovieMaker Pro)


前回記事の続き。

8mm フィルムのエアリアル・テレシネ(空中結像)化で紹介した手法と、Wolverine MovieMaker Proでのフレーム単位のスキャンを比較してみた。

1970年に開催された大阪万博(千里)を父が撮影した8mm レギュラーフィルムの一部分をWolverine MovieMaker Proでデジタル化し空中結像と比較:



Wolverine MovieMaker Proはデフォルトの設定のままスキャニングを行いパソコンでの後処理(色味)は一切行っていない。明部の抜けが少し悪いなどと先のブログで書いたが、先の空中結像の明部の抜け(が良いと思っていたこと)はレンズの収差の色ズレによるハレーションに過ぎず、Wolverine MovieMaker Proでの結果が格段に好ましいことが判明。分かった風な口をきくものではないと反省した。細部の緻密さは一目瞭然、ジッターは皆無(先の空中結像では映写機の機械的振動がそのまま記録されている)フリッカーは無論発生しない。映写機では秒間18なり24フレームで猛然とフィルムが搬送されるのでフィルムゲージにたちまち埃が引っ掛かって写り込んでしまうが(空中結像の場合)、Wolverine MovieMaker Proでは事前にフィルムを清掃しておけばその懸念は一切ない。

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部屋を暗くし白壁に向けて父が自慢げに家族に披露していた映像のブレはいかにも8mm映画らしいと子供心に思っていた。しかし、これは映写機自体の振動であり、しっかりカメラをホールドして父が撮影していたと今回初めて判った。カタカタ秒間2フレームでスキャンする所々でスプライシングした箇所を通過する。スプライサーでフィルムを切ったり削ったり手際よく編集していた父の姿をセメントのシンナー臭と共に思い出す。

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その大阪万博で父の関心事は建築設計技師という仕事柄、展示物よりもパビリオンの箱ものだったようで、ロボットなどアトム的世界との邂逅を期待していた当時小学生だった私は少し不満に思ったものである。

その近未来の展示物の中で未だ実現していないのが「人間洗濯機」だろう。三洋電機のパビリオンでのこの展示物は当時大変話題を呼んだ。


(1970年当時、スペインのアイドル歌手 Karina)

1970年のついでに、フラメンコの踊り子から一躍アイドルになった MarisolとPalito Ortegaのデュエット(曲はCorazón Contento)。元々Ortegaの持ち歌だが、キーを下げてカンタオーラらしいドスの効いたMarisolはその歌唱でOrtegaを完全に食っている。何度聴いても素晴らしい。





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外見ばかりか心の内まで真っ黒に煤けた政治家や官僚たちを洗濯する機械はないものだろうか・・・

(おわり)


posted by ihagee at 11:17| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2020年06月19日

Wolverine MovieMaker Pro 購入



カラッとした初夏の陽気から一転、ジメジメとした梅雨となる。先週、普段から放ったらかしのままの防湿庫に保管している8mmフィルムの状態を点検した。40Lの箱に親父の遺品が寸分の隙間なく埋まっている。1950年代から(レギュラー)から1980年代の後半(スーパー)まで、600ft(180m)の長尺リールが大半の我が家の映像アーカイブの集積であるが、長年の住処を引き払ってマンションに越す際に、当時すでに年老いていた親父は断捨離をした。無用の長物と捨てようとしていたところを弟が機転を利かせて拾っておいてくれたおかげで今もある。他方、1970〜80年代の数百本のエアチェックのカセットテープ(音楽番組収録)はゴミになった。

さて、防湿庫に入れておいても扉を開けた瞬間酢酸臭が漂い、何とかしなければと親父が存命中に手前味噌のテレシネ化に着手したのは今から7年前。その顛末は「8mm フィルムのエアリアル・テレシネ(空中結像)化」で記載した通り。光源をフィルムに安全なLEDに換えたものの、映写機を使用するので古いフィルムに物理的にダメージを与えるおそれもあり何本かデジタル化しただけで終わった。

フレーム毎の静止画像をCMOSセンサーで撮影する形式の8mmフィルム専用スキャナーは当時存在したものの如何せんプロ用の高価な機材で手が出なかったが、断捨離に躊躇する少なからぬ人々の要望に応えてWolverine社がコンシューマ向けに手頃なスキャナーを販売し始めた。その最新の製品が以下のものである。

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(Wolverine MovieMaker Pro)


8mmフィルムを売りまくっておきながら、その結果たる映像資産を簡単且つ高品質にデジタル化する機材を開発提供しようとしない富士フィルムは社会的責任を放棄していると思わざるを得ない(「<8ミリフィルム>から考えること」)。その無責任ぶりは同様にフィルムを世界中で売りまくっていたKodak社にも言える。

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Wolverine社(米国)が孤軍奮闘といったところで、手元でデジタル化するに他にめぼしい手段がなく、防湿庫からフィルムの悲鳴も聞こえるようになって、先週、Wolverine MovieMaker Proを購入した。発売当時は十万円近くした製品も今は半値以下で買うことができる(アマゾンサイトで販売)。御国からの一時給付金(10万円)は申請するも未だ届かないが、その一部を充てることにした。有用な使途であると家内を納得させるのに苦労したが、あの世の親父はきっと喜んでいることだろう。

従来のテレシネの場合も同様、フィルムは事前に巻き直しと清掃を行う必要がある。手回しのフィルム編集機(富士フィルム製)を箪笥から取り出して、光源を明るいLEDに換えた。ワンコインで買える小さなLED懐中電灯程度で、編集機のスクリーンに映像を明るく投射することができる。元々あったライトボックスを取り外しマグネットを介してLEDを装着した。

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いささか不恰好だが、編集機で映像を鑑賞するわけではないのでこれで良いだろう。編集機で一旦、記録されている映像を確認し、巻き直す際にマイクロファイバークロスにフィルムを通して汚れを除去した。長年の汚れがマイクロファイバークロスによって安全且つ綺麗に落ちた。

さっそく、1960年撮影のフィルムをデジタル化した。この5月3日の旗日(憲法記念日)の映像には、約一ヶ月後に安保闘争のデモ隊(樺 美智子さんが犠牲となった)に埋め尽くされることになる国会議事堂周辺も記録されている。タクシーに乗り込んで車窓を撮るなど一編の映画(もどき)に仕立てているが、当時は趣味に8mmフィルムで景色など撮る人など少なかった。8mm映画やホームムービーが流行りだしたのは1970年代に入ってからなので、1950-1960年代の個人が趣味で撮影した8mmフィルムは希少な記録とも言える。親父は仕事柄(建築設計)カメラが道具のようなものだったので、ほかの誰よりも早く趣味にしていたのだろう。仕事と称して母には内緒で随分と出費したに違いない。なお、冒頭のタイトルを掲げる男性は父方の親族。


(無編集 / 映像中の中心部分の歪みはフィルムの経年劣化によるラップ=撓みが原因)

8mm フィルムカメラ(親父の遺品:上掲の映像は別のカメラで撮影したものと思われる)

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キャノン・レフレックス ズーム8-3

Wolverine MovieMaker Proでは1080P/20 fpsのMPEG-4に変換される。秒間2フレームでカタカタとフィルムを送っても20分程度の映像も変換に数時間を要する。フィルムは経年変化でラップ(変形)したり、パーフォレーションが痛んでいたりするので、巻き取りを行わずそのまま自由落下させ(床に箱を置いておく)、同様に送り出し側のリールもフィルムをあらかじめ若干繰り出しておいて、フィルムと機材に無用なテンションがかからないようにする。こうすることでジッターや詰まりを防ぎ安定して変換を行うことが可能。万一、フィルム送りが滞ってもWolverine MovieMaker Proはその箇所で直ちに自動停止するので、フィルムゲージを開いてフィルムを少し手で送ることで簡単に変換作業を再開できるのも良い。作業の一時中断・再開もボタン一つで容易である。フレーム位置の上下左右の調整やコントラスト・シャープネスなどの調整もWolverine MovieMaker Proの液晶画面上で設定できるが、フレーム位置以外はデフォルトの設定のまま変換を行うのが良いだろう(パソコン上の後処理でどうにでも調整できるゆえ)。

なお、古い樹脂製のリールはフィルム同様に経年劣化し表面がざらついたり撓むなどしてフィルムと不要に干渉している場合がある。デジタル変換したフィルムを再びこのリールに巻き戻すと不均一に巻かれフィルム自体にもいずれ悪影響を及ぼすことになる。できれば新しいリールと交換するのが良い(未だヤフオクなどでは未使用のリールが販売されている)。金属製のリールであれば長期保管にも適している。




8mm フィルムのエアリアル・テレシネ(空中結像)化」での結果と比較すると、明部の抜けが若干悪く、またMPEGの圧縮でのノイズが乗るが、パソコンやネットで鑑賞するには十分の画質がある。20 fpsの速度は若干パソコン上のソフトウェアで後処理を要するがそのままでもほぼ自然だろう(8mmは18 fps=1秒間に18コマもしくは24 fps=24コマ)。フレーム毎の静止画像をCMOSセンサーで撮影する形式ゆえ、従来のテレシネの難点であったフリッカー(同期ずれによる走査線の映り込み)が無い。なお、カラー映像の場合は色味やコントラストが厳しいので後処理は必須かもしれない。

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都知事選の立候補者が出揃った。オリンピック開催是非も選挙争点となっている。来年に延期されたとしても開催が不確実且つ開催に至る期間中さらに数千億円の支出が必要なオリンピックなどに税金を使わず、市井の8mmフィルムなどに残された過去の映像(プライベートな映像ではなく、街並みや暮らしぶりなど社会資産に関わる映像)のデジタル化(保存・公開)に政府・自治体は本腰になって欲しい。そのオリンピックによって破壊された暮らしぶりや都市景観を記録として残すフィルムはどんどん劣化していく(「五輪」という破壊)。記録をことごとく破棄したり改ざんする「未来志向」のこの国の昔を知る手がかりが失われることがあってはならない。

過去の膨大な教育文化映像資産ではNPO法人科学映像館が中心となって、民間からも提供されたデジタル化された映像を含めた、保存・公開が積極的に行われている(「縁(えにし)の糸」)。このような活動がもっと裾野を広げることを期待したい。

(おわり)


posted by ihagee at 07:17| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2018年02月03日

8mm フィルムスキャナー 最新情報




8mmフィルムデジタルコンバーター「スーパーダビング8」については拙稿でも取り上げた。サンコーレアモノショップばかりでなくケンコーやその他メーカーから同一機種が販売されているが、元は中華製のOEMである。一般紙の広告にも度々登場するようになって話題を呼んでいる。

米国Wolferine社のようなスキャナー専門メーカーが定番商品として出して欲しいものだと前回記事で書いたが、その後、サンコーと同じ機種が同社から販売された。



(Wolverine 8mm/Super 8 MovieMaker)


従来のテレシネ(壁に投影した映像を間接的にデジタルカメラで撮影する)よりも簡易且つ鮮明に光学8mmフィルムをフレーム・バイ・フレーム(テレシネと異なりフリッカーはない)でデジタル化するに「スーパーダビング8」や「Wolverine 8mm/Super 8 MovieMaker」は当を得た製品であるが、以下の問題点がユーザから報告されているようだ。

1) 5号(12.5cm)リールまでしか懸架できない。
2)フレームレートが30fpsなのでデジタル化した映像は早回しとなる。
3) 初期モデルではスキャン解像度 720Pと低い(Anytyという商品名でのモデルでは1080P)。
4) フィルムが読み取りゲージで閊えたり巻き取り側のトルクが強くなって読み取り位置がずれる場合がある。
5) 小型モーターゆえに加熱して(特にリールの巻き取り時)不具合が起きやすい。機械部分の強度が弱い。


従来品での処理例:上下に細かくフレームが動いている(4)の問題)。YouTube上や画像処理ソフトでブレを除くことが可能だがフレームをある範囲でトリミングする必要がある。

米国Wolferine社からついに対策品が登場した。


(Wolverine Data Film2Digital MovieMaker-PRO)


1) 9号(27cm)リールまで本体にて懸架可能となった。9号は再生約1時間分に相当する。
2)フレームレートが20fpsとなった(18fpsと24fpsの中をとるレートで合理的)。
3) スキャン解像度 1080Pとなった。
4) フィルム搬送経路や読み取りゲージが改良されて上掲の問題の軽減が図られている。
5) 不明
なお、露出とシャープネスについてはマニュアルで調節可能(従来品と同じ)で、ホワイトバランスは自動調整される。SDカードスロットに最大32GBのカードを挿入可能(従来品と同じ)。 3.53 Mega pixels (2304 x 1536) 1/3" CMOS を読み取りに用いている(従来品と同じ)。



Wolverine MovieMaker-Proは国内では未販売だがWolverineのサイトから購入することができそうだ(米国仕様だが、電源・コンセントの仕様が同じなので日本でも使うことができるだろう)。

Wolverine MovieMaker-Proを用いたデジタル化例はYouTubeなど動画投稿サイトを検索したが見当たらなかった(販売して日が浅いためか?)

画像処理ソフトでブレを除くなどの後処理を行えば以下の程度までそこそこ鮮明な(拡大するとアラが見える)映像を得ることができるようだ(Wolverine 8mm/Super 8 MovieMaker:従来品での例)。しかし、シャープネスを上げればエッジが立ち、圧縮フォーマットゆえに背景にディザ(ザラザラ感)が現れ、不自然な色調・階調(べたっとした塗り絵調)や透明感や抜けの悪さ(全体に映像が眠い)は致し方ない。だからか8mmフィルムを映写機でスクリーンに投影し感じ取るイメージとはかなり異なる(映写機で投影したことのない人には比較のしようもない・8mmフィルムなんてこんなもんかと誤解を与える)。

8mmフィルムに記録されている情報を最大限拾い上げてデジタル化することを目的とするプロユースの数百万円のコンバーターと比べるのは酷なことだろうが、是非進化を続けてもらいたい(特にセンサとレンズ系)。なぜなら、この程度のレベルでユーザに妥協を求め元のフィルム(元情報)はもはや不要と捨てさせてしまうことになるからだ。電子化すれば「捨てられる」という誤ったメッセージをユーザに発信することになりはしまいか「(拙稿『「捨てるに捨てられなくて」!?』)?もっと鮮明にデジタル化できるに違いない・それまでフィルムは捨てないでおこう、と期待させる製品を是非メーカー側は出し続けて欲しい(フィルムを売るだけ売った富士フィルムならその社名「フィルム」の沽券にかけて真剣にコンバータを開発すれば、Wolverine MovieMaker-Proを超えるコンシューマ向け製品を作ることができる筈だ・アナログ時代の大量の情報=眠った資源を漏らさずデジタル化できればそれこそ「クールジャパン」と世界から賞賛されることだろう)。




(おわり)

posted by ihagee at 09:16| 8mmフィルム(アナ→デジ)