2020年08月28日

Wolverine MovieMaker Pro 購入(続きその3)



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(Wolverine MovieMaker Pro)

Wolverine MovieMaker Proの続き。

「フィルム位置を確認してください」と突然エラーメッセージが表示されてスキャニングが止まる現象が頻発。フィルムがジャミング(詰まっている)しているわけではない。フィルム自体はマイクロファイバーで事前に清掃を行い、本体側のフィルムガイドやスプロケットはエアダスターで埃を払っている。したがって、フィルム搬送に物理的問題が生じて停止したということではなさそうだ。

同じ問題が報告されていないかYouTubeを当たったところ、旧型のWolverine MovieMakerで構造上熱問題があるとの動画がアップされていた。




フィルムをフレーム毎に送り出す機構にはステッピングモータが使用されている。高トルクで頻繁な起動・停止を行うため、モータのコイルが高温になり、その上に配置されている制御基板やSDカードのスロットが熱を帯びてパルス制御やデータ書き込みにエラーが生じ、結果としてスキャニングが停止するということが想定された。旧型ではテイクアップリールを回すためのベルトがこの高温で溶ける現象があるそうだ。

最新型ではこのベルトはダイレクトドライブのモータに置換されたが、その他の部品構成はほぼ旧型と同一なので、熱暴走を疑って対策を講じる必要があると判断し、別稿のサイアノタイププリントで、ハイパワーUV LED 光源の熱対策でCPU冷却用のヒートシンクとファンが極めて効果的だったので、今回も熱源たるステッピングモータに集中して対策を講じることにした。

ステッピングモータのコイル部の面積に合わせてW22.5×D22.5×H5mm大のアルミ製ヒートシンクと、W40×D40×H10mm大でUSB電源駆動(三段階の風力調整機能付)のファンをAmazonで購入。

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ヒートシンクをステッピングモータの側面(コイル面)と軸受部(金属)およびSDカードスロットの天板に貼り付ける。
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これら熱源に外気を当てて強制的に冷却するため、裏蓋の下部に穴を開けて対抗する内側にファンを配置した。
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(穴部のベンチレータは35mmフィルム容器の蓋を細工して利用・雑な細工だが効果重視)

さらに、帯電防止(防塵)効果があるFCJ製の帯電防止剤スプレーREP7を樹脂部に薄く施した(発光板は避けた方が良い。わずかな塗布ムラも影として映り込んでしまうゆえ)。

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上述の施工後、スキャニングが何度も止まったレギュラー8のフィルムを使って、同じ症状が再現されるかテストを行うが、今度は何の問題も起きない。心なしかスキャンされる画像も綺麗に見える。ファンの風量は最大(H)にし、裏蓋上部のスリットに指をかざすと熱を帯びた空気が排出されているのが判る。ファンが外気を取り入れてヒートシンクから熱を逃し、結果として制御基板の熱暴走を防止しているのだろう。

Wolverine MovieMaker Proを使っていてエラー表示が頻発するようであれば、上述の措置を施すことを強くお勧めしたい。アナログ映写機ではフィルムが詰まるとたちまち溶けるなど光源の高熱に悩まされた。このアナ=デジ変換機はLED光源だからと熱対策を油断していた。ステッピングモータが熱問題のただならぬ伏兵であることを今般気付かされた次第である。

(おわり)




posted by ihagee at 18:22| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2020年08月08日

Wolverine MovieMaker Pro 購入(続きその2)



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(Wolverine MovieMaker Pro)

Wolverine MovieMaker Proの続き。

この一ヶ月で何本かレギュラーとスーパーの8mmをデジタル化した。本体で色々設定が可能だが、まずは初期設定(ホワイトバランスと露出は0=オート、シャープネスや色味も変えず)で様子を見た。

結果は思わしくない。特に明るい背景(たとえば空)と暗い背景(山)が連続する部分では明暗のちらつきが激しい。また、映像を拡大するとディザリングで輪郭が極端にぼやけて見える。後処理でソフトウェア的に補正をしてみたが改善されなかった。 Wolverine MovieMaker ProはデータをMPEG-4 (MP4)で書き出すが、 MPEG-4 (MP4)にしては芳しくない画質である。

さらに一つ困ったことに気付いた。Wolverine MovieMaker Proのイメージセンサーは、3.53 Mega pixels (2304H x 1536V) 1/3" のCMOS 、つまり2:3(V:H)のアスペクト比となる。対するフィルムのフレーム内のアスペクト比(スクリーン縦横比)はレギュラー8で1:1.33、スーパー8で1:1.36。つまり、CMOSとフィルムのアスペクト比が同じではない。

Wolverine MovieMaker Proのフレーム調整の初期設定ではフレームは拡大してスキャンするモードとなっており(W:13前後)、その状態でスキャンを行なえばCMOS自体のアスペクト比でフレームの横方向が一部トリミングされることになる。フィルムに記録された情報を一部ではあるがデジタル変換できないということでもある。

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そこで、フレームを「縮小」調整し(W:0)フィルムのフレームを丸ごとスキャンすることにした。この場合、フレームの外側、つまり、縦方向では前後のフレームの一部、横方向ではパーフォレーションまでスキャンすることになる。この状態で何本かレギュラーとスーパーの8mmをデジタル化した。驚くべきことに、上述のちらつきはほぼ解消され、画質も大幅に改善された。パーフォレーション部分はWolverine MovieMaker Proの光源からの光が透過するので、ホワイトバランスと露出設定をオートにした状態では常に一定の閾値がイメージセンサーに働くことになる。これが幸いしたのかもしれない。

フレームの外側までスキャンしたので、ソフトウェアでトリミングする必要がある(後処理)。liquivid Video Improveなるソフトウェアをアップルストアから購入した。

iMovieを普段ビデオ編集に使っているが、トリミングの自由度が乏しく、シャープネスの機能がない上にやたらとCPUとメモリーを消費するので(処理時間も長い)、もっと使い勝手の良いソフトウェアはないものかと探した結果がliquivid Video Improveである。

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liquivid Video Improveはアップルストア上でレビュー評価がないが非常に使いやすい。iMovieと比較すれば動画の演出機能(トランジットや字幕など)は欠けるものの、映像自体に係る品質改善機能は一通り揃っており、トリミング(クロップ)は任意の比率で行える。また、レベル調整は映像全体を解析し(任意の範囲の解析も可能)自動的に最適値を導き出してくれる。シャープネスの強さは3程度で十分輪郭を引き締める効果がある。

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比較動画(左:初期設定のままスキャン / 右:フレームを「縮小」調整(W:0)、liquivid Video Improveで後処理を施したもの:



この8mmフィルムは1977年に父が母と共に北海道(札幌・函館)を旅行した際に撮影したもの(レギュラー8)。

1970年代前半迄のフィルム(レギュラー8)はフィルムベースの経年劣化が程度の差こそあれ一様にあり防湿庫から出した瞬間に酢酸臭が漂う。フィルムベースが柔軟性を失っているので、Wolverine MovieMaker Proのテイクアップリールで巻き取りながらスキャンするのはお勧めしない(巻き取らずに自由落下させた方が良い・先の記事参照)。

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テイクアップリールのテンション(張力=かなり強い)でスプライシングした箇所が破断する可能性がある。スプライシングについては、ヘンケルの瞬間接着剤をセメント代わりに使用できるなどと先の記事で述べた。しかし、この方法ではアセテートベースのフィルムの接合は不完全であり、事実、テイクアップリールで巻き取りながらスキャンすると悉く破断した。スプライシングで破断しなかったのは父が専用のセメントで丁寧に繋いだ箇所のみで、フィルム専用のセメントがないと無理だと気づかされた。

残念ながらもうそのようなセメントは一般に販売されておらず、やむなく、eBayを介して英国のセラーにKodakのデッドストックを注文した。さらに、歪みや劣化が起きないメタル製のリール(長尺400ft用)を蓋つきのキャニスターと共にeBayから入手し、劣化の激しい1950〜1960年代のフィルム収納に用いることにした。半世紀以上前の米国製メタルリールは頑丈で作りも良い。Wolverine MovieMaker Proのサプライとテイクアップに使った。経年劣化で撓んだプラスチックのものに比べると、安定してフィルムを搬送することも判った。



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1970年代の終わりから父はスーパー8を使い始めた。フィルムベースはレギュラー8と同じアセテートだが経年劣化は少なくテイクアップリールで巻き取りながらスキャンが可能であることも判った。

(おわり)


posted by ihagee at 20:33| 8mmフィルム(アナ→デジ)

2020年06月26日

Wolverine MovieMaker Pro 購入(続きその1)



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(Wolverine MovieMaker Pro)


Wolverine MovieMaker Proの続き。何本かデジタル化して気づいた点を述べたい。

半世紀以上前の8mmフィルムを優先に同機でデジタル化を図る。経年劣化で変形したフィルムを閊えずに送るにはテイクアップリールで巻き取るよりも自由落下させた方が良い。

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この自由落下はまさにフィルムを「自由」に落下させること。落ちた状態はすなわち拾う状態ゆえ、落下したフィルムを下手にいじると、後で巻き取る際に絡み合って大変なことになる。なお、巻き取りは8mm編集機(手回し)を使う。フィルムは経年で曲がり癖が付いているので自由落下させる際、Wolverine MovieMaker Proのテイクアップ側のピンチローラから捩れて浮き上がり結果外れ易い。そこで、ピンチローラにメタルクリップで腕を付けてフィルムに捩れの遊びを持たせた。

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1958年の最も古いフィルムを収容していたリールはプラスチック製だった。プラスチックのリールはこの当時から普及していたのだろう。しかしフィルム同様劣化変形しておりWolverine MovieMaker Proのサプライリールとするとフィルムを円滑に送り出すことができない。

海外出張した際に撮影したフィルムを父は大切に保管していたのだろう、そのリールだけはメタルリールだった(Canon Auto Reel Made in Japan)。このリールは大変精巧な作りで変形一つない。重心バランスが良いのか絶妙なタイミングでフィルムをソロリと送り出すのでプラスチックリールの場合のよう手を添えてフィルムを余分に繰り出しておく必要がなく円滑にフィルムを送り出してくれた。リールの重さが幸いしてはずみ車効果(慣性モーメント)が働いている。

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このメタルリールは7号 (18cm)。父が残したフィルムの長尺フィルムは全てこの範囲内ゆえサプライリールとして拝借することにした。巻きついていたフィルムは空いたプラスチックリールに巻き取り、一連のデジタル処理が終わったらまたこのリールに戻す予定である。

さて、フィルムは先の記事で述べたように、デジタル化作業を行う前に手回しのフィルム編集機(富士フィルム製)でまき直しと清掃を行う(その際に上述のメタルリールに巻き取る)。半世紀以上前のフィルムの編集接合箇所はフィルム同様劣化しており、この作業過程でフィルムが係る箇所で切れることがある。切れ端同士、パーフォレーションの位置を合わせて正確に接合するには専用のスプライサーが必要となる。マイネッテ製セメントスプライサーは父が断捨離の際に捨ててしまったので(父はセメントを信頼しテープは使わなかった)ヤフオクで程度の良いものを探すことにした。簡易接合のテープ式スプライサーであれば安価でいくつも見つかるものの(しかし肝心のテープはもう発売されていない)、レギュラーとスーパーの両形式に対応し且つセメント接合形式のスプライサーはなかなか見つからない。手頃な価格の新古品を運良く見つけ購入できた購入した(LPL製の3way セメントスプライサー)。

購入早々、清掃過程でフィルムが断裂しスプライサーの出番となった。セメントは現在販売されておらず、代用として(独)ヘンケルのブラシ付瞬間接着剤を使用した。フィルムを揃えてカットし接合面の乳剤層をスプライサーに付属するヤスリで慎重に削り取り、削り取った面に針先程度(極少量)同剤を塗ってプレートで挟み込んで待つこと1分で接合完了。有機溶剤の臭いがしない点を除けば、父が行ったと同じ作業である。

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オールメタルの頑丈さに信頼性が満ち溢れた半世紀以上前のスプライサーは日の丸を一身に背負って外貨獲得の尖兵となったのだろう。Made in Japanの銘板も誇らしく英独仏伊の使用書が付いていた。安価・簡単にモールド成型できるからとなんでもかんでも樹脂製になり身近な品から精密金属加工品が消えて久しい。今、メタルで同等品を作ろうものならとんでもない価格の高級品になるだろう。

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(昔ならありふれたフィルム缶・今はコレクターズアイテム)


(おわり)


posted by ihagee at 19:41| 8mmフィルム(アナ→デジ)