2020年11月12日

ネガフィルムの簡易ビューア



株式会社HOLIDAY STUDIOは11月9日、スマートフォンアプリ「NEGAVIEW PRO」を更新し、新機能の追加や性能向上を行ったと発表した。対応OSはiOS/Android。アプリの価格は税込370円。

現像済みのカラーネガフィルムやモノクロネガフィルムを、スマートフォン上でポジ反転した状態で鑑賞できるアプリ。ライトボックスなどの光源と組み合わせて、フィルムスキャン前の画像確認などに利用できるとしている。

01.jpg


----

アナログフィルムのビューアと言えばライトボックスでフィルムを照らし
Hakuba Light Viewer + Fujichrome 4x Loupe

この手のルーペで確認するものだが、ポジ反転した状態でスマートフォンをビューア代わりにできるのが「NEGAVIEW PRO」(ライトボックス等の透過光は必要)。

対応OSはiOSなので、スマートフォン(iPhone)でなくともiPod Touchでも利用可能。ちなみに、私はスマートフォンを未だ所有していない(ガラケー)。ただし対応OSはver.11.0以降とのことで、第5世代の私のiPod Touch(ver. 9.3.5)には対応していない。

----

残念と諦めかけたが、iPod Touchの設定画面 → 一般 → アクセシビリティに「色を反転」機能があることを思い出した。
1.jpg

ポジ→ネガに画面を変えて「カメラ」の「写真」モードにし、ネガフィルムをカメラ越しに見ればネガ→ポジとなる。つまり、第5世代のiPod Touchをビユーアにすることができる。
1 (1).jpg

(「コスモスを追って」で撮影現像したネガフィルム)

NEGAVIEW PRO」と違って画面のネガ→ポジ像をポジとして撮影保存はできないがその場でフィルムの内容をさっと確認するには良いかもしれない。

(おわり)




posted by ihagee at 18:06| 古写真・映像

2020年10月30日

テープ録音(その5)



NATIONALのRQ-402(1968年製造のSolid State)の代替として、同じNATIONALのRQ-705をヤフオクで購入した。型番は新しいのに1962年製造・真空管2chモノーラル録再機の古手である。当然ジャンク扱いで他に入札などなく千円そこそこで落札。

i-img1200x898-159738984452cpto2501572.jpg


外観は昭和の白物家電然(レトロ)としていてなんとも古めかしいが、内も外も金属が主体だからそれ自体モノとしての質感(重量感)がある。先ずは点検を兼ねて筐体から内部のシャーシを取り外した。真空管やドライブベルトなど消耗し易い部品は簡単に交換前提の設計なのだろう、ネジを数本外すだけで簡単に内部を露出させることができる。RQ-402などSolid State(トランジスタ)製品はその前提がない。Solid Stateの売りであった「交換・修理不要」も換言すると、壊れてしまえば買い換えるサイクルとなるように耐用年数が短く設定されていることでもある。耐久消費財から交換修理を前提の「耐久」を外すことでメーカーは任意に製品ごとの実動年数を調整することが可能となり、常に新しい製品を市場に提供することで市場から事業資金を潤沢に調達できるようになった。メーカーの意図する通り(「修理するよりも買い換えた方が安いですよ。」)RQ-402は所詮ガラクタになるしかなかったのだろう(拙稿「百代の過客」「発想の転換(“最も古いまだ使用中の家電”コンテスト)」)。

そのような宿命が課せられていなかった時代の真空管のテープレコーダ。ガラクタにならないと期待しつつ点検を始めた。

----

ヘッドは摩耗が見られずまた周辺も綺麗。ピンチローラに付着した磁性粉を取り除く。
i-img1200x749-1597389844tfye4r2501572.jpg

機械部分は清掃し適宜グリスアップ&注油を施す。
2 (1).jpg

通電して真空管の状況を確認(球切れ無)。
1 (4).jpg


----

回転速度は19cm/sと 9.5cm/sの二段に切り替え可能だが、ピンチローラのテンションが適正でなく、 9.5cm/s側で再生時にスリップする。この現象はYouTubeでも報告されていた。

動画ではコイルばねを強いものに交換して対処しているようだが、私はRQ-402で使ったゴムベルトを加えて応力を調整した。さて、動画からも判るようにモータ軸とテイクアップリールとの間に布ベルト(平ベルト)とプーリが介在する。通電状態で常にモータ軸は回転しているが軸に接触する布ベルトはそれ自体の性質を利用したベルトテンションクラッチ機構となっている。すなわち、プーリのベルト押し上げ⇆下げによって緊張⇆弛緩し、テイクアップリールへの動力の入⇆切を行っている。布ベルト自体の滑りを利用しているので、通常のゴムベルトで代替することはできない。
1 (2).jpg

1 (3).jpg


----

さて、この状態で実際にテープをかけてみた。




この音源はRQ-402を使って拙稿「伊豆の踊り子」で採用している。RQ-402の再生スピードが適正でなかったことは一聴して明らかである。国語研究で掲載した音源は正しいスピードで再生されたものに更新しなければならない。そうこうするうちに、「ブツッ」と嫌な音がした。

内部を点検すると件の布ベルト(平ベルト)が粉々に断裂。経年劣化しているところをいきなり「緊張」させたのでそうなったのだろう。上述の通り、ゴムベルトに替えることはできず、RQ-705用の布ベルトはもはや入手不可能。さて困った。RQ-705の最大の欠点は布ベルトにあった。

----

無い知恵は絞るもの。荷造り用の布テープに裾上げ用の布地(テープ状)を貼り合わせれば良いかもしれないと閃いた。布テープの表面の滑り性と布地のグリップ性を表裏に使うというアイディアである。

25mm幅布テープ(寺岡製作所製)を接着面を上に平らに伸ばし、23mm幅布地(百均のもの)を重ねて貼り付け、6mm幅 x 33.5cm寸にハサミで切り落とし(カッターは布地がひっかかるのでダメ)、その両端を繋いで代替のベルトを作成することにした。糊代は3mm程度とし、布地はその部分は切り剥がして布テープ同士が接くようにするが、布テープは表面に剥離剤が施されているので糊代部分は紙やすりで落とし「セメダインPPX」で慎重に接着、布面を内側にしてレコーダに組み込んだ。6mm幅 x 33.5cmの寸法はこの過程の試行錯誤で導き出した最適値である。接着剤の種類も同様。
1 (5).jpg

1 (6).jpg

(自作の布ベルト)


(動作状況・機械音がするがマイクを近づけている為)


----

レトロな外装はこの際ガンメタリックに塗り替えた。さて、自作のベルトの耐久性やいかに?
1 (7).jpg


(おわり)


posted by ihagee at 06:56| 古写真・映像

2020年10月18日

テープ録音(その4)



i-img898x1198-15993838650fglhu3057300.jpg


ビデオ工房トパーズ 記事引用)

ゴムベルトを交換する等して簡単な補修を行ったNATIONALのRQ-402(1968年製造のSolid State)で古い音源(国語研究)を数本再生・デジタル化した。芥川の「羅生門」解説を再生中、またもテープスピードが落ちる現象が発生した。コンデンサーがついに抜けたことは間違いない。「尾羽うち枯れてもNATIONALぞ、ダメ元などと思うなかれ」とレコーダは相変わらず強がるがここでどうやら投了のようだ。まだ使えそうな部品を外し、最寄りのクリーンセンターに野辺送りとすることにした。

私がレコーダで再生したいテープは音声であって音楽ではなく、またモノーラルゆえにオーディオ用のオープンリール録再機は襷に長しとなる。音楽を聴く機材環境はすでにあるのでポータブルの再生機があれば足りるということ。いずれにしても中古品から代替を探さなければならない。

----

「回りもの」への関心は私などアナログ世代の共通項と言えるだろう。

電話のダイヤル、アナログレコード・ターンテーブル、時計の針、映写機のリール、テープレコーダ、電力メータ、遊園地のティーカップでは自分が回る。

48656457611_f79da82ebe_k (1).jpg

(「回りもの」の代表格:観覧車)

撮影場所:川越(埼玉)丸広百貨店の屋上、撮影日:2019年8月31日(屋上遊園地閉園二日前)
カメラ:Zeiss Ikon (VEB) Tenax 1 / Tessar 37.5mm F/3.5(Yフィルター装着), フィルム:Kodak Ektar100

「この鏡には、なにやら句が印刷されておるようだがわしには見えん。君読んでくれないか?」俳句を趣味とする老先生が私にこう宣った。その先生が購読している文芸誌が或る日からCD媒体となった今から四半世紀以上前の笑い話だが、軌道(音溝)が視認できないCDはこの先生が言うように鏡と表向き大差がない。ゆえに、私なりの分類では爾来、CD(コンパクトディスク)はデジタル云々以前にモノとして「回りもの」ではない。

そういう何かとやたらクルクル「回る」ものに取り巻かれていた時代は過去となり、今は、何事につけ、回る、つまり、連続する必要が少なくなった。

デジタル(離散化)の非連続性は、たとえば時計にあっては数値での時刻表示となる。しかし、運針の方が時間の経過を把握し易い。デジタル時代にあっても車のスピードメータはアナログ表示(運針)が大勢を占めるのもむべなるかな、今現在に至る経過(プロセス)や軌跡(道筋)を物理的に感覚を以って認識できないデジタルへの心理的不安があるのだろう。「回る」はどこかしら安心感と直結している。

これは<綴るという行為>にも言える。<綴るという行為=筆順>はデジタルな日常生活において要求されることはない。脳とペン先が最短距離で直結した綴るという連続的な行為が、決められたルールに従って指先を動かすという遠回りで非連続な<変換作業>に切り替わったのは日本語ワープロが普及し始めた頃であり、スマホを四六時中撫で回す今はその作業は<変換>から皮膚感覚・条件反射的にポチッと<いいね>とクリックして済ませる<選択>へとさらに単純化しつつある。SNSとかラインのメッセージは、絵文字(ピクトグラム)共々、瞬間の情意を伝えるばかりの畳語のやりとりで、脳よりも脊髄に繋がり易い。斟酌論考の軌跡の一つとしてない思いつきばかりで、他者の意見に耳を傾けることができないデジタル時代の文盲は斯くして生まれる。

----

国語研究の古いテープ(1964年)は当時の高校生向け学習教材であるが、そこに記録された学者の解説はいずれも作家の<綴るという行為>を学生に追体験させ、且つ、ただ作品を理解するだけではなく作品の批評までも促している。大人であっても傾聴に十分値する内容ゆえに、変換や選択といった作業ばかりで長いこと働いていなかった脳領域がこれで多少は活性化するのではないかと期待するところである。

(おわり)

タグ:RQ-402
posted by ihagee at 14:18| 古写真・映像