2020年01月11日

「低画質」コンセプト



そして、カメラの世界でも「低画質」コンセプトが最近話題になっている。

レジ用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラ(PrintSnap・未製品化)で、1本150円程度のレジ用感熱ロール紙で150枚の写真を撮ることができる。インクを使わないので故障の心配も少ない。このカメラは外部と一切通信手段を持たない上、感熱紙ゆえの保存性の「悪さ」が逆にメリットとなって、個人情報漏えいの心配もない。そして疑似グレースケールでディザリングの粗目の画像は、感受性・想像性を豊かにしてくれると、もっぱらの評判である。



枯れた技術に我々が求めていたミネラルがあったということかもしれない。

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以上、拙稿「半音下げへの期待」から再掲載。

そのレジ用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラが市販された(但しPrintSnapではない)。

”世界初!レジロール紙を使って、その場で写真やステッカーの白黒印刷ができるキッズカメラ「myFirst Camera Insta(マイファーストインスタ)」が登場”(Oaxis Japan株式会社



”世界初!" とはレジ用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラの市販製品としてだろう。

”感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラ” であれば1990年にキングジムから発売された「ダ・ヴィンチ Da VINCI」がある。キングジム純正の感熱ロール紙ということで、”レジ用感熱ロール紙”の使用を謳うmyFirst Camera Instaは ”世界初!" となるわけか。


(ちょディーなスポッと、ブログ記事から引用)

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感熱紙は濃淡による階調を再現できない。従って、撮像をディザリング処理・2値の印刷データに変換してプリントとなる。製品説明に掲載されているプリント例はいかにも階調がありそうだが、少し間引いて考えた方が良いかもしれない。

レジ用感熱ロール紙を使ったモバイルプリンタ(PAPERANG-P2)では以下プリント例が紹介されているので、これが一応の目安だろう。


(ファインテック株式会社 PAPERANG-P2説明記事から引用)

解像度として300dpiはあるものと期待したいが、Oaxis Japan株式会社のmyFirst Camera Insta説明には解像度の記載はない。amazonでのみ購入可能。(追記:amazonを介して販売元に問い合わせたところ、解像度は200dpiということが判った。)

amazonの商品の説明にある写真:



この通りの高解像度プリントとなることは期待しない方が良い。

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レジ用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラには「半音下げへの期待」で挙げた利点がある。myFirst Camera Instaは価格応分(¥15,580)にオートフォーカス機能があるので(PrintSnapはパンフォーカス)、会議やプレゼンテーションでのパネルや資料などその場での "メモ取り" に活用できそうだ。薄く小さな感熱紙はノート等に貼り込むのに好都合。SDカードでデータは保存できるようなので同じプリントを複数枚出力できるかもしれない。

ダ・ヴィンチの売り文句は「空間をコピーする」とか(ちょディーなスポッと、ブログ記事によると)。myFirst Camera Instaにも当て嵌まる。その場の "メモ取り" として、とても上手いキャッチワードだと思う。

キッズの遊び道具にしておくのは勿体ないが、いかんせん外観は「いかにも」で大人が仕事に使うには躊躇う(現状はブルーとピンク。「今後は色を追加予定」のようだが、自己責任で渋く塗装し直せば良いのかも)。2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会(オリンピック関連商標については商標法違反など問題点があり個人的には現状での開催に賛同できないが)に向けて諸外国から来日する観光客に貸し出して思い出を持ち帰ってもらうには高CP。顔認識機能で自撮り可能、粗い画像は却って「クール」と大いに受けるだろう。観光業者は検討されたし。売上増大に寄与することは間違いない。

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半音下げへの期待は、AI本格稼働社会の反対のベクトル。枯れた技術に我々が求めていたミネラルはある。購買欲を大いにそそられる商品である。

(おわり)

追記:
myFirst Camera InstaはOEMらしい。Dragon Touch InstantFun Instant Print Camera for Kidsなる見かけ同じ製品が米amazonで$59.99で販売されていた。



英文のユーザレビュー、プリント例、動画の通りなのだろう。解像度はあまり高くない。myFirst Camera Instaも同じ仕様とすれば、手元の資料やプレゼンのパネルなどの細かい文字を "メモ取り" するには向かない。

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(大人向けでもあると、好評価)

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Dragon Touchなる会社(所在地:米国メリーランド州・製造は深圳辺りなのだろう)のプロファイルを読む限り、ウォルトディズニー・ストアと提携してキッズ用タブレットのブランドを立ち上げるなどそれなりに信頼のある会社のようだ。プロダクツリストにある製品はどれもamazonでよく見かけるもの。

”世界初!" に心躍ったが、”日本発!"ではなかった。 Made in Japanはどこに行ったのだろうか?ホワイトラベルの他国製のOEMが幅を利かせる。製品開発製造における我が国の退潮ぶりをあらためて気付かされた。これでは"Cool Japan" なる官製ブランド戦略のキャッチワードを以って外国人観光客に使ってもらうことはできない。

「我が国の生活文化の特色を生かした商品又は役務を通じて我が国の生活文化が海外において高い評価を得ていること(具体例:映画・音楽・漫画・アニメ・ドラマなどのポップカルチャーやゲームなど言った、日本のサブカルチャーなどのコンテンツ、他)」(クールジャパン戦略推進会議)

「ダ・ヴィンチ Da VINCI」があった時代(1990年)は中小の事務機器メーカさえ画期的な(ダ・ヴィンチな)製品を出していた。官製ブランド戦略など大げさな鳴り物がなくとも、”世界初・日本発!"が日本の製造業のお家芸だった。

AIやIoTが世界のトレンドなら、その逆を行く "「低画質」コンセプト" / 「半音下げ"」コンセプトにこそ、 ”世界初・日本発!"となる余地がある(特に中小企業)。"Cool Japan" にサブカルチャーを重ねるのであれば、レジ用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラなどは本来、他国に先駆けて自家薬籠中にしていなければならなかった。キッズカメラではなく、仕事で使うことができる(「低画質」であっても解像度600dpiは欲しい)レジ用感熱ロール紙プリンタと一体化した ”世界初・日本発!" インスタントカメラなど。

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専用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラでは、深圳の新興企業Shenzhen Amkovery Tech. Development Co., Ltdから豚型のキッチュなカメラが発売されている。WiFiで通信機能もあるようだ。専用感熱ロール紙は57mm幅。ネット民の情報では、汎用の58mm幅レジ用感熱ロール紙も使えるとのこと。とすれば、myFirst Camera Instaの ”世界初" はこの豚型カメラに譲らなければならない。この豚型カメラはamazonで¥8,369で購入可能。myFirst Camera Instaはその倍の値段。プリント画質自体大差はないかもしれない。フラッシュ、15メガピクセルのソニーのレンズが盛ってある分、myFirst Camera Instaよりもコスパが良い。その上、色ペンまで付いている。豚型も蚊取り線香の器のように見えて意外と納得できるデザインである(特にピンク)。amazonのユーザレビューでも高評価。





(YouTube上の商品PR / とてもセンスが良い)

新興企業でありながら、自社製品のイメージ戦略に長けており、権利化(特許/商標/意匠)についても余念がない。クラウドファンドから開発資金を調達しているのかもしれない(GREEN FUNDING)。

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About AMKOVから各国登録商標)
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(登録意匠)

国際特許出願件数で日本は中国の後陣を拝している。(「国際特許出願、アジアが初の5割超、中国がけん引世界知的所有権機関(WIPO)調べ」(日本経済新聞 2019/3/19記事)

「がんばれ!ニッポン!」をスポーツ馬鹿だけの専売特許にしてはならない。メダルの数など予想して浮かれている場合なのだろうか。

再追記:
eBayで "thermal" "printer" "camera" で検索したらレジ用感熱ロール紙プリンタと一体化したインスタントカメラが他にもあることが判った。無論、中華製のno brand。これら玉石混交の中でDragon TouchやAmkovなどはOEMに甘んじず自社ブランド戦略を以って差別化を図ろうとしている。

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(他のカメラは背面にシャッターボタンがあるが、このカメラだけは普通に人差し指がかかる位置にあり且つ外観は子供っぽくなく好ましい。このカメラのレビュー記事がネットにあった。)




posted by ihagee at 08:13| 日記

2020年01月08日

ゴーンの逆襲



”カなき正義は無能であり、正義なき力は圧制である。力なき正義は反抗を受ける。なぜならは、つねに悪人は絶えないから正義なき力は弾劾される。それゆえ正義と力を結合せねばならない。” (パスカル 「パンセ」)

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海外渡航禁止の保釈条件に反し、レバノンへ逃亡した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が会見を開く。

「公正な裁判(a fair trial)は期待できるのだろうか」、逃亡前ゴーン被告は弁護人にしきりに質問していたそうだ。公正であるか否か、事犯を裁く裁判なり、裁判に関する法そのものが「公正」であるかを問うことは、法そのものが普遍的価値を有するか否かを問うに等しい。しかし、法は「公正」という理念に対する未完の規範でしかない。

”法律が信用されているのは、それが公正であるからではなく、それが法であるからである。これが、すなわち法律の権威の不可思議な基礎であり、これ以外に基礎はまったくないのである。”(モンテスキュー 「随想録」)

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ゴーン被告は日本の法から逃れた。今後は国際社会に「人質司法」なる「公正」なる理念と反する我が国の法規範を、刑事司法における検察の絶対的権力(裁判官ですら検察官の判断に従い、検察官が起訴すれば99%の確率で有罪になるという)と共に ”正義なき力は圧制”と、”力なき正義” の被告として暴き立てるだろう。

そして、今やその力を国際社会・国際世論に得ようとしている。ゴーン氏を侮るべきではない。

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「ほら、日本ってめちゃくちゃでしょ」 ゴーン氏の逆襲をナメてはいけない(窪田順生氏・ITMediaビジネスONLINE記事・2020/1/7配信)は、アルベルト・フジモリ氏の例を挙げるなど、とかく「ゴーン氏やレバノンに対して過度に攻撃的」になる我々にその怒りの前提が間違っているかもしれないことを教えてくれる。

この記事には慧眼がある。一読を薦めたい。

(おわり)

追記:
”【ベルリン時事】日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告が逃亡先のレバノンで8日に行った記者会見をめぐり、複数の独メディアが「日本が恥をかいた」(シュピーゲル誌)など、ゴーン被告の罪状にかかわらず、日本の司法制度の不備が世界にさらされることになったと指摘した。”(『「日本司法「恥かいた」』 ゴーン会見で独メディア」(時事ドットコム記事引用・2020/1/9)

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ゴーン被告の罪状(逃亡含め)にのみ焦点を当てる国内メディア(裁かれる前にすでに罪人扱い)。

他方、海外メディアでは「日本の司法制度の不備」に焦点が当たっている。ゴーン被告にとって逃亡とは、国際社会・世論に力を得、自らの「正義」を発信する為の唯一の手段であって、その目論見通りになっていると言える。逃亡という罪を犯さなければ、裁判が始まるまでの長い期間寡黙を強いられ、保釈されていようが実質独房に留置されているに等しく、国際社会・世論から隔離されその存在が忘れ去られる一方、検察の嫌疑内容のメディアリークと日本のメディアの増幅によって「クロ」の印象操作が行われ(裁かれてもいないのに罪人扱い)、剰え検察官が起訴すれば99%の確率で有罪になることへの恐怖は、彼と同じく世界を股にかける欧米企業の最高経営責任者(CEO)たちにも共有されつつある。こんなことでは日本企業のマネージメントはできないと。

そもそも大元の犯罪とされる行為については、日産社内の問題として取締役会で諮られるべきことであって(CEOの個人的特典など他の企業でも探せば幾らでも見つかること)、いきなり検察が刑事事件に持ち込むこと自体非常に奇異である。政治家や公務員と民間企業との間の贈収賄であればまだしも、民間企業内の問題に検察捜査が入ることは日本政府が初めから関わっているに違いない、は海外メディアの共通した認識であり、その政治(国策)に司法制度がべったりと都合しているという認識でもある。

”ゴーン氏の逆襲をナメてはいけない”

posted by ihagee at 04:10| 日記

2020年01月03日

五千頭の龍が昇る聖天宮



正月二日、自宅から車で小一時間程の「五千頭の龍が昇る聖天宮」を訪ねた。

”五千頭の龍が昇る聖天宮は、台湾・中国の伝統宗教、道観である。道教の最高神・三清道祖(元始天尊、道徳天尊、霊寶天尊)と道教の神々が祭祀されている。五千頭の龍が昇る聖天宮は台湾出身の康國典大法師が建立した。大法師は、若くして不治の大病を患ったが「三清道祖」に祈願し、7年の闘病生活を経て病が完治した。大法師は感謝の気持ちを抱き、他の多くの人々も自身と同じように「三清道祖」にすがれるようお宮を建てることにした。建立地を探していたところ、日本国埼玉県坂戸市に建立するようお告げがあったため、同地に聖天宮を建立することになったという。五千頭の龍が昇る聖天宮は、1981年より着工し、15年の歳月を経て、1995年に開廟した。現存する道観としては日本国内最大級である。装飾品は、台湾より運び、台湾の宮大工によって建造された。” (wikipedia より)

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埼玉に住んでいながらその存在すら知らなかった道観。百聞は一見にしかずの百聞すらなく初めて目にする「五千頭の龍が昇る聖天宮」は一見の価値が十分ある威容だった。道観の純然たる宗教施設ゆえに観光化されていない点も良い。

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(前殿)

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(前殿屋根飾り)

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(一枚岩の透し彫り)

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(本殿)

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(本殿と翼廊)

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(本殿内陣)

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(鐘楼)

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(翼廊)

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(楼閣上から眺める前殿屋根)

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(石の彫刻)

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(楼閣上から眺める本殿)

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(鼓楼)

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(本殿内陣)

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(前殿)


以上、 Sigma DP2s (ISO: 100) using RAW processing software “SIGMA Photo Pro 6.5.2”

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似たような建物として、横浜中華街の関帝廟が思い浮かぶが、関帝廟は商売繁盛を願って華僑が建立した関羽を軍神として祀る武廟であり、平癒を感謝した台湾人の大法師がお告げで建てた三清道祖(元始天尊、道徳天尊、霊寶天尊)と道教の神々を祭祀したこの聖天宮とは祭神・願い事が異なる。

”建て主は康國典大法師。 四十歳半ばにして不治の大病を患い、ご本尊「三清道祖」と縁起をもたれたのを期に一命をとりとめ、完治されました。 深謝の念と、何人にも神様のご利益にあやかれるお宮を建てたく建造の地を探していたところ、なんと生国の台湾ではなく日本国のこの地にとお告げを授かりました。聖天宮の名、佇まいや方角もお告げがあり、当時、正面の道、最寄の若葉駅もなかった雑木林のこの地を一から整地し昭和五十六年より着工に至りました。 台湾の一流の宮大工を呼び寄せ、十五年を掛け、平成七年に聖天宮を開廟しました。”(聖天宮由来から)

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私の母方の祖父は幼少期(明治時代)から中学卒業までを内地と行き来しながらも多くは台湾で過ごした。その父親が当時の五大製糖会社の一つ帝国製糖の役員を務めていたからである(社長:松方正熊、専務:牧山清砂)。

”今ははや幻の母校となりにける 若きよき日を語る楽しさ”(総督府立台北第一中学校・同窓会好老爺会での祖父の一句)

台北一中在学中は、当時の民政長官の秘書官であった石井光次郎氏(シャンソン歌手・石井好子氏の父)に南門外の官舎で世話になったようだ。

祖父は台湾の話を色々私に語り聞かせたのかもしれない。幼かったゆえ私はそれを記憶に繫ぎ止めることはできなかった。この道観を目にしたら何を語ったことだろうか、などとふと祖父の顔が浮かんだ。

(おわり)


posted by ihagee at 22:54| 日記