2022年12月17日

サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その4


Duobondに問い合わせたところ(Alibaba.comはリアルタイムに英語でチャットが可能)、RGBで3つのサブピクセル(通常のLCD)はモノクローム専用設計のLCD(Duobond)では統合されて1ピクセルであるから、元の画像をサブピクセル方向にピクセルを3倍に拡大すれば正しいアスペクトでLCDに表示されるとの回答を得た。問題はアスペクト比の違いではなく、ピクセルの対応関係だということ。つまり、RGBの3サブピクセル=モノクロームの正方1ピクセル。


サイアノタイプ・ヴァンダイク(Virtual negative)-その3」から

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パブリックドメインのブラウン管用パターンテスト画像を取得し、サブピクセル方向のみピクセル値を3倍にした上でサイアノタイプをプリントしてみた(B5の安価な画用紙/露光時間は約2時間=不完全・本記事に掲載する為に色目をアプリで補正・強調している)。

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元がかなり粗い画像ゆえ輪郭にディザが現れ(元画像が精緻ならばディザは出ないだろう)、プリントが生乾きで紙面の撓みがパターンの歪みのように見えるが、実際にはパターンに歪みはなくアスペクトは正しいことが確認できた(サブピクセル方向のみピクセル値を3倍にすることは正しいと確認できた)。

ロイヤリティフリー(パブリックドメイン)の画像サイト(Pexels)から幾つか画像をダウンロードして、葉書大の水彩画紙を印画紙としてテストプリントを行うことにした。

以下、かなりイージーなやり方で画像(ポジ)からネガを作成した。

@ PC(Mac OS 12.5.1)に画像をダウンロード(とりあえず最高画質で)
A PCのディスプレイ上に画像を展開
B PCのアクセシビリティ設定でディスプレイのカラーを反転させる(画像がネガになる)
C iPhone 14でネガ画像を間接撮影
D iPhoneからiCloudを介してPCに転送された画像をプレビューし上述のリサイズを行う
E USBメモリを介して作業用PC(Windows 10)に画像データを移し、LCDに出力=プリント

Mac OS 12.5.1のiMacは5K 有機液晶ディスプレイゆえ、ディスプレイ上の画像は精緻である。同様に精緻な画像を得られるiPhone 14のカメラでの間接撮影だから、そこそこ鮮明な画像データを得られる(ただし、モアレは発生している)。テストプリントが目的だからこれでも良い。

以下、テストプリント例:

52568070692_9e93772b3c_k.jpg

52569738249_fa767ea0e9_c.jpg


いずれも露光時間約6時間。前者はジャスミン茶でトーニングを施している。

アナログフィルムや写真乾板と比較してLCDは画像の抜け部分の紫外線の透過率が低い。銀塩プリントならば許容の範囲だろうが、感光性の低いサイアノタイプやヴァンダイクでは感光が不十分となり易い。葉書大ならば何とかいけそうだが、B5以上の紙にプリントするには光源を強化しなければならないだろう。このLCDはそもそもの用途が3Dプリンター、つまり、LCDに接したレジンを二次元に可塑し機械的に三次元に積層するコンタクトプリント。紫外線量はLCDと接するレジンで足りれば良い程度にLCDは設計されている。LCDから離れた印画紙面まででは足らないのは当然と言える。

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LCDをDuobondに替えたついでにLPL Model 7451へ少し手を入れた。
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CotmanのF2水彩画紙の台紙=大きく固いボール紙を細工してLCDを脱着容易に収容する台座を作成。さらにLCDの基板(コントローラボード)を邪魔にならないよう垂下させた(軽いスチレン板上に配した)。

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また、UV光源の位置(高低)を調整容易にする為(引き伸ばしレンズごとの焦点距離に合わせて光源の位置を調整する必要がある為)、百均のフェライト磁石を積んでスペーサ(最底部の磁石は動かないように固定している)とし、UV光の無用なリークを防ぐ為、光源の位置に合わせて伸縮可能なベローズを配したことである。光源の真下、ライトボックスの元からあったディフューザは光源に使用した(UV) LEDの指向性(直進性)ではその用途を全く成さない為、15cm口径・二枚構成のコンデンサーレンズに替えてある。

このベローズは4x5 大判 カメラジナー製の中古品を転用した。プロ仕様・世界最高峰の大判カメラメーカーとしてその名を轟かせたスイス・ジナー(Sinar)の高級品も、今や都を追われた落武者の如く、ハードオフのジャンク箱に投げ入れられ二束三文の値札が付いていた。

(おわり)