3. Virtual negative
さて、諸物価高騰の折、アナログフィルムも現像代もその例に洩れずますます高価な趣味となりつつある。フィルムレコーダによるデジ⇨アナ変換は失敗やムダなく、サイアノタイプやヴァンダイクプリントのアナログネガを作成する手段であり、一般的なコンタクトプリントのコスト(OHPフィルムやインクジェットプリンターのインク代)に比較すればコスパに優れるが、それでも一考の余地がある。引き伸ばし機の利便性(ネガがあればいかなるサイズにもプリント可能な点)は捨て難い。したがって、アナログフィルムや乾板に拠ってきたネガを液晶ディスプレイ(LCD)に代替できないか?と思案した。
以上、サイアノタイプ・ヴァンダイクプリント(近況報告)から
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3Dプリンタ用のLCDはアスペクト比が16:10(横:縦)。かたや、そのLCDに画像を出力するPCのグラフィックボードがサポートするアスペクト比は16:9。LCDの最大解像度は2560x1620(アスペクト比16:10で2560x1600、ゆえ略16:10)だから、横ピクセルの数値(2560、所謂 "2K")を合わせると、モニターのサポートする解像度は2560x1440(アスペクト比16:9)となる。LCDに付属するグラフィックボードはアスペクト比16:9の2560x1440をサポートしていないから、PCのモニターとLCD(外部モニター)をミラーリングさせるとLCD上のミラーリングされた画像は縦に伸びて表示されることになる(1440/WQHD→1620/略WQXGA)。

(画像出典:Rene.E Laboratory)
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LCD(外部モニター)のアスペクト比(16:10)でも正しい縦横比で表示されるには、PCのアプリであらかじめ画像をリサイズする必要がある。つまり、LCD(外部モニター)にミラーリングされる画像の縦に伸びて表示される分(1440→1620)を補正しておくということだ。
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以下はその例:

コロタイプ印刷の100年以上前のポストカード(ガブリエル・レイ)
スキャンして(モノクローム)16:9でトリミング後、16:9のアスペクト比を維持せずに2560x1620にリサイズし反転(ネガ)。

(ポートレイトが横長になる)
さて、ミラーリングしてみて気付いた。LCDに付属するグラフィックボードのモノクローム動作周波数: 60hzであれば2560x1620の解像度となるが、最終解像度を確認すると2560x540。これは、このLCDがモノクローム専用LCDではなく、RGB LCDであることを示している。

3Dプリンター用のLCDは入出力共にカラー(RGB)であっても構わないのだから、そのLCDのRGBの内の1つのチャネルでしか出力させないようにして(カラーフィルタを外した上、サブチャネル(赤Rと緑G)を残したまま青Bのチャネルだけで)擬似的にモノクロームとしたのだろう。1/3にした分、短辺方向の画素は少なくなるということだ(1620/3=540)。RGB トリプレットの平均を取り、その値を 3 つのチャネルすべてで使用すれば良さそうなものだが(グレースケール)、このLCDに付属するボードはそんな仕掛けはないようだ。そこに2560x1620の画像を入力すれば、短辺方向に元の設定の3倍ピクセルが使われ、結果として画像がその方向に拡張されてしまう。
そこで、再びPC側で2560x1620をアスペクト比は固定せずに2560x540にリサイズ。つまり、最初から2560x540(モノクローム)にしておけば良かったということだ。
PCのモニターでリサイズ(2560x540)した画像は以下のように見える。

PCのモニター上では短辺方向にひしゃげて見えるが、最終解像度2560x540のLCDでは正しく表示され、UV光源下、印画紙(ヴァンダイク)には以下顕像する。


(引き伸ばし機の影が映り込んでいるが、実際は綺麗に感光している)
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PS. Cotman Water Colour Paper F4 (210 × 330 mm) にプリントした結果(露光時間約8時間):
短辺方向(この作例では水平方向)の輪郭にジャギーが現れている(首や肩周りで判るように)。ピントルーペでピントを追い詰めると却ってジャギーとなるのかもしれない。若干ピントアウト(アウトフォーカス)にした方が良いのか?他方、フィルムレコーダによるデジ⇨アナ変換で作成したアナログネガではどんなに大きく引き伸ばしてもこのような現象は発生しない。
フィルムレコーダでもこのLCDと同じく、モノクロームでの出力はRGBの内の1つのチャネルでしか出力させないようにしてアナログフィルムに焼き付けているが(ただし、LCDとは異なりCRTフィルムレコーダー上のカラー画像は赤、緑、青の3原色に分解されて同じグレースケールのCRTに表示され、順番に3原色それぞれのフィルターを通過してフィルムの感光面上に照射)、CRTのビーム(レーザーグラフィック)の物理的特性(セルがない)が奏功しているのか、フィルムレコーダの性能の高さをあらためて認識した次第である(フィルムレコーダで作成したアナログネガを用いた作例:Film Recorder (Digital to Analog Converter)。
ジャギーの原因は、使用した液晶の性能の低さにあると思われる。上述のようにRG成分を捨てると短辺方向(この作例では水平方向)の画素が低下するため(1620/3=540)、短辺方向は540画素の3倍に拡大し擬似的に1620画素(実行画素)としているゆえ、ジャギーは短辺方向(この作例では水平方向)で現れるということである。やはり、モノクローム用に最初から設計されたLCD(Duobond製LCD)を使うべきなのだろう。Alibaba.com(Aliexpressサイトでは入手不可能な為)から取り寄せることにした。
(おわり)
再追記:
3Dプリンター用のLCDは入出力共にカラー(RGB)であっても構わないのだから、そのLCDのRGBの内の1つのチャネルでしか出力させないようにして(カラーフィルタを外した上、サブチャネル(赤Rと緑G)を残したまま青Bのチャネルだけで)擬似的にモノクロームとしたのだろう。1/3にした分、短辺方向の画素は少なくなるということだ(1620/3=540)。RGB トリプレットの平均を取り、その値を 3 つのチャネルすべてで使用すれば良さそうなものだが(グレースケール)、このLCDに付属するボードはそんな仕掛けはないようだ。そこに2560x1620の画像を入力すれば、短辺方向に元の設定の3倍ピクセルが使われ、結果として画像がその方向に拡張されてしまう。
これは誤りだった。このLCDではRGB トリプレットの平均を取り、その値を 3 つのチャネルすべてで使用していることが判った。つまり、2560x1620の画像入力に対応するのは間違いではなかったということ。訂正したい。LCD上のネガ像の表示領域は大きく設定可能となり、印画紙と引き伸ばし機との間の距離が近くなったことで露光時間も短くなることが判った。
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