「IOCを相手取った」IOC登録商標『五輪』無効審判については、同無効審判の請求人でもある三木義一氏(弁護士、前青山学院大学学長)および柴大介弁理士によるビデオ講座(YouTubeチャンネル『MIKI 庶民大学』の動画)を本稿で紹介している。
その最新動画(公序良俗違反「IOCには「主体に主体に着目した公序良俗違反」が適用されるべきである」)は以下マップから視聴可能:

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IOCは自らが表示主体となる標章及び商標の管理及び権利行使を適切に行っておらず、請求人を含む我が国における公共性と公益性を損ない、請求人を含む我が国の需要者が不測の不利益を被ることになるため、IOCには「主体に着目した公序良俗違反」が適用されるべきである。無効理由4である商標法第4条第1項第7号(公序良俗)での争点は以下:
・ 『五輪』が公有の標章・商標である
・ IOCの4条2項登録商標の違法ライセンス活動
・ IOCの違法ライセンス活動による国際信義の毀損
・ IOCの非営利公益性の欠如
・ 悪意の商標登録出願
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『五輪』無効審判は審決が出された。審決は「原告の請求は成り立たない」とし、IOCの登録商標「五輪」は維持される結果となり、審決を不服とする訴訟が知的財産高等裁判所(知財高裁)に提起された。
事件番号:令和4年(行ケ)第10065号
担当部署:知的財産高等裁判所第1部
詳しくは『MIKI 庶民大学』の動画「IOC五輪登録商標・舞台は知財高裁へ」で視聴賜りたい。
・ 請求人の負け
・ 特許庁は法律論に噛み合った議論を一切せず原告の無効理由を全て退けた
・ 審決の内容は空疎(請求人は負けた気がしない)
・ 知財高裁に不服申立(審決取消訴訟提起)
・ 知財高裁は特許庁が退けた無効理由を全て再審理する
・ 審決取消訴訟の主たる争点は公序良俗違反
(非営利公益性の欠如・違法ライセンスが認定される等で)
・ 訴訟に持ち込まれたことはIOCにとってリスクが高い
要するに、特許庁は法律論に噛み合った議論をせず(できず)上級審(知財高裁)に議論を丸投げしたことになる。その丸投げはむしろIOCとは何者であるのか?(権利能力および非営利公益性の法的根拠)、何者であるかが、権利能力なき社団に過ぎないと認定された場合、そのIOCを主体とする開催都市契約およびライセンス契約は無効(違法ライセンスの認定)といった問題が上級審にIOC共々引き摺り出されることになる。その審理には無効審決の内容からしてIOCに与していると疑われる特許庁は存在しない。
判決如何では国際信義が問われ、今後日本で今まで通りのビジネスモデルでオリンピックを開催することが不可能となるゆえに、IOCにとってリスクが高い訴訟となる。IOCおよびその事業を法的に保証している(政府保証)日本政府にとっても信義に関わる事件となる。
証拠の収集、違反事実の確定や争点整理が容易な行政庁(特許庁)下の商標法違反を理由とする無効審判を入り口に、その審決を不服とする審決取消訴訟(知財高裁)に持ち込むことは、国際信義や違法ライセンスといった民法など一般法での違反まで争うことになるから、原告からすればまさに瓢箪から駒ならぬ奇貨、被告=IOCからすれば、蟻の一穴天下の破れになりかねない。
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上述の審決取消訴訟とあたかも軌を一にするかに明るみに出た、大会組織委員会元理事とスポンサー企業との間の受託収賄事件は、審決取消訴訟での裁判官の心証形成に於いて被告に不利に働くことは想像に難くない。また、宗教法人として求められる公益活動が特定の政治家および政党の活動に専ら利し、また霊感商法など悪徳な搾取事業に於いて反社会性が浮彫りとなった旧統一教会問題については、その法人格すら持たず大々的に商標法に違反するライセンス事業を行ってきたIOCと、公序良俗に於いて相応する点がある。審決取消訴訟の主たる争点は公序良俗違反であるから、新聞など報道メディアにとって旧統一教会問題は一般大衆にIOCの問題を提起をし易い背景であるとも言える。
大手新聞各社は先般のオリンピックライセンス事業ではその名を連ねてスポンサーとなり、IOCファミリーの違法ライセンスの先棒を担いでいたわけである。換言すれば、社会の公器たる新聞が商標法の予定する秩序を乱す行為に加担したということだ。公序良俗違反を問う審決取消訴訟について、猛省と贖罪の意味から積極的に報道すべき立場にある。
また、「五輪」なる日本語文字文化をその文化圏にないIOCに収奪されたことについて、日本ペンクラブに意見を求めたが今に至っても何のリアクションもない。(拙稿「IOC登録商標『五輪』無効審判での無効理由を理解する」)。言論・表現の自由を掲げる資格が果たしてあるのか日本ペンクラブは自問すべきである。
(おわり)
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