2022年03月20日

只者ではない(タモリ)



城の死を受けて、タモリが<笑っていいとも>の番組中《テレフォンショッキング》のコーナーの冒頭で「城達也さんが亡くなられました。私は城達也さんに薬の使用上の注意を読み上げてもらったことがあるんですが、聞き入ってしまって言葉にならない感動があった。あれは感動しましたね。」と語った。

誰もが知るJET STREAMの機長としてではなく、「産業映画の声」たる城に花を手向けたのである。その最後のナレーション作品がOsteocyteであることをタモリは知っていたのかもしれない。城にとってはこの一言は最上の褒辞となった。その相応しい代名詞を以て城を偲んだタモリもまた只者ではない。

関連記事(エッセイ):縁(えにし)の糸

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番組冒頭のあいさつから1時間以上“沈黙”を貫き、終了間際に「一日も早く平和な日々がウクライナに来ることを祈るだけですね」とコメントした。(2022年3月19日付中日スポーツの記事から引用)

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思想家の内田樹氏はこのタモリの態度を「知らないことについては沈黙を守る」と評した(2022年3月19日付ツィート)。

恐怖、不安、憎しみ、怨讐を掻き立てるような報道を連日繰り返す強烈なメディア・バイアスは、感情的な状態に人々を導き「沈黙を守る」ことも許さない、つまり心の自由を奪ってかかる。常に自分を抑え、落ち着いて、信念を差し控える。それが心を自由に保つ唯一の方法であると彼は知っているのだろう。それは決して「沈黙は金」などという経済的打算ではない。

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メディアの情報の受け売りはしない。自分の目と耳で確かめたこと以外は所詮知らないことなのである。メディア・バイアスに巻かれ感情的な状態にある人々は物事を深く考えようとしなくなる。「○○を守る」という前提ならば、ヘイト・スピーチやヘイトスクラムすらも寛容化する、そういう世の中が怖い。

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彼は静かに最も大切なメッセージを我々に伝えているように思えてならない。それこそ「戦争戦う(戦争放棄 / 憲法第9条の理念)」ことだと私は勝手に理解した。かたや、言論の府(国会)に武器を!(やられたらやり返す・軍事的に復讐をする)と叫ぶ人を招こうとする議員は「絶えず戦争をする国」の眉間の顰みに倣うばかりの者である。われわれの憲法はそれを決して許してはいない。憲法は戦死者の遺言(俳優 鈴木瑞穂氏)であり「二度と戦争はしない」と我々は憲法で誓っている。ゆえに「絶えず戦争をする国」と同じ価値観など我々は一つも共有しない。「絶えず戦争をする国」の代表を招き(それがたとえロシアに軍事侵攻されたウクライナの代表であろうと)、我が国の国会で武器を!(やられたらやり返す・軍事的に復讐をする)と叫ばせ、言論の府を「社会的比較増幅メディア」にさせてはならないのである。

ウクライナ戦争を利用し、軍事侵攻の脅威を煽るだけ煽り、憲法に書いた「戦争放棄」など所詮絵空事に過ぎないからやめてしまえと言い、むしろ「絶えず戦争をする国」と同じ「戦争戦う」価値観の共有こそ我が国の安全保障上必要であるとの声が喧しい(「日本・ウクライナ友好推進議員連盟会長」兼「自民党憲法改正推進本部長」森英介氏(元法相))。

そんな世の中にあってだからこそこの人は只者ではない。

社会的比較増幅メディアについては「社会的比較バイアス Social comparison bias」項、メディアの情報・政治家による疑わしい主張については「継続的影響効果(信念形成)Continued influence effect」項を、ロシアが主張するウクライナの歴史的検証(人種差別問題)をメディアが一切行わないことについては、議論の入り口にも入らず、立証責任を果たさないまま批判する方法=「悪魔への制裁 Sanctioning the devil」項を、以下マップで参照されたし。
認知バイアスマップMindMeister

認知バイアスマップ Cognitive bias map(Re nomor 2022 コピーライトマーク️ ver.1.0):


(Re nomor 2022 コピーライトマーク️)



関連記事:
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ほぼ全ての戦争がメディアの嘘の結果である
事実を要求すること
戦争に戦うのであって、戦争で戦うのではない
二つのウイッシュ・カード
参考文献:「正当戦争vs.正義の戦争 ― キリスト教の正戦論の落とし穴

(おわり)



posted by ihagee at 07:47| 日記