ゼレンスキー・ウクライナ大統領の米議会演説。(ゼレンスキー大統領は16日午前、日本時間の16日午後10時すぎから、アメリカ連邦議会の上下両院の議員を前にオンラインで演説)
ロシア軍機による攻撃から国土を防衛するためウクライナ上空に飛行禁止区域を設定するよう求め、それが難しい場合は、防空システムや戦闘機を供与してほしいと、ゼレンスキーは演説した。
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ウクライナ上空の飛行禁止区域を設定とは、アメリカおよびNATO諸国とロシアとの直接の軍事衝突を意味するし、その代わりが戦闘機とは、ゼレンスキーとして戦う一択に完全に傾斜し切っているということである。バイデン米大統領は、その要請を受けてウクライナへ追加武器供与=対戦車ミサイルなど総額8億ドル供与を決定。まさに火に油を注ぐことである。
英国議会でのビデオ演説では「われわれは決して屈しない。海で、空で、畑や道の上で、どんな犠牲を払っても、われわれの土地を守るために最後まで戦う」とハムレットの一節まで引用して、やはり、戦う一択である。
どんな犠牲を払ってもと言うが、その「犠牲」はすなわち自国民。一億総火の玉・玉砕と叫ぶ為政者の下でもっぱら死んでいくのは一般市民で、そう叫ぶ者は愛国者を気取った偽善者であることは、我々は歴史に学んでいる。
その犠牲もウクライナ国民の総意であれば仕方ないが、数百万の人々がウクライナの国境を超えて避難している現状は、必ずしもゼレンスキーに命を託すウクライナ国民ばかりではないということだ。自衛隊を「わが軍」と言った総理大臣が日本にもいたが、同様に自国民の生殺与奪までわがもの扱いにする辺り、プーチンと同類である。
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このように「目には目を歯には歯を」、要するに「やられたらやり返す」とゼレンスキーは各国議会で復讐を誓っているが、なぜ停戦に向けて「戦争に戦う」と言えないのか?誰でも良いから間に入って調停して欲しい、食料や医薬品を提供して欲しい、となぜ言わないのだろうか。
「やられたらやり返す」との軍事的復讐を誓うかの演説は、世界に要らぬ怨讐を撒き散らす唾吐き(ヘイト)だ。事実、唾吐きの文脈に呼応してインスタグラムやFacebookを運営する米メタ社はロシア兵への暴力を呼びかける投稿(ヘイト)を「容認」した(その後、撤回)。
ヘイトを根付かせたり寛容化した国ほど戦争を招くばかりか、戦争を呼びかける。ロシアもウクライナもこの点において互いに血は争えないようだが、その兄弟にして血で血を洗い、さらに兄弟揃って、世界中に汚い唾吐き(ヘイト)や中指立てをしているようにしか見えない。夫婦喧嘩は犬も食わぬとは言うが、この兄弟喧嘩だけは誰かが入って仲裁しなければ、世界大戦に発展する可能性が大きい。間違っても、どちらかに助太刀などしたらダメだ。どっちも化け狐だから取り憑かれることになる(ちなみにアメリカは狐の御大将である)。
ゼレンスキー大統領は、我が国の国会でのビデオ演説を売り込んでいるらしい。パールハーバーに代えてピカドンと脚本を書き換えて、さて、多くの国民がその狐感に冒されては堪らない。丁重にお断りしたら良い。
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「軍備をととのえ、敵なる者と一戦を辞せずの考えに憑かれている国という国がみんな滑稽なのさ。彼らはみんなキツネ憑きなのさ。(坂口安吾「もう軍備なんかいらない」から)」
関連記事:キツネ憑きの話(「戦争に戦う」が「戦争で戦う」になる)
(おわり)
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