2022年03月07日

現実との折り合い=「緩衝(バッファー)」を受け入れることか(ウクライナ)?



ダグラス・マクレーガー退役大佐(Douglas Macgregor:DM)は、Fox Businessの司会者スチュアート・バーニー(Stuart Varney:SV)とのインタビューで、中立のウクライナは我々にとってもウクライナにとっても望ましいことであり、双方が望む緩衝地帯を作り出すことになると述べた。マクレガーはゼレンスキーを「操り人形」と呼び、「これを長引かせ」、人口密集地に軍隊を送り込むことで民間人を盾にしていると述べた。



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DM:「率直に言って、驚くほど被害は少ない。91年にイラクに侵攻したときや、2003年に再びイラクに侵攻したときに与えた被害よりもはるかに少ない。」(ロシアのウクライナ都市への砲撃について)
「ゼレンスキーは、われわれが彼を救出してくれると期待して、避けられないことを先延ばしにしているのだろう。アメリカは手を出さない。バイデン大統領はそのことを明確にしている。」
「ゼレンスキーは操り人形であり、膨大な数の自国民を不必要な危険にさらしている。率直に言って、ウクライナから出てくる話のほとんどは、24〜48時間以内に嘘として暴かれている。飛行場の奪取や奪還など、すべてがナンセンスだ。そんなことは起きていない」

SV:「彼は英雄ではないのか?自分自身と自国民のために立ち上がる、彼を英雄と思わないのか?」

DM:「いいえ、思わない。あの男に英雄的なところがあるとは思えない。今、彼にできる最も英雄的なことは、現実と折り合いをつけることだと思う。ウクライナを中立化する。これは悪いことではない。中立的なウクライナは、我々にとってもロシアにとっても良いことだ。率直に言って、双方が望んでいる緩衝(バッファー)を作ることができる。しかし、彼は、しがみついてこれを引き延ばそうとするように言われているのだと思う。」

SV:「大佐、私はあなたの意見に同意し難いのですが、ではこれはどういうことですか?プーチンは原子力発電所を攻撃した。その背後にある戦略は何ですか?罪のないの民間人を威嚇するためだけですか?」

DM:「(ロシアの)戦略は、発電所や送電網を攻撃することではなかった。ロシアは非常に慎重に電力を遮断することを避けた。通信へのダメージもなく、水道のような重要なものへのダメージもない。ロシア軍はウクライナ軍の残党を追い出し、機動力も防空も援護も物流インフラもないため、残党は人口密集地や都市に避難しているのが現状だ。中東でISを追い出したとき、彼らは街に飛び出し、民間人を盾にして、全滅を免れようとしたのと同じように、今は住民に混じっている。ウクライナ軍が破壊を避けるために住民を盾にしているのは、本質的に同じことだと思う。」

SV:「プーチンはグロズヌイと呼ばれるようなことをすると思いますか?」

DM:「いいえ。」

SV:「グロズヌイは離脱した共和国の首都だった。市民が抵抗したとき、彼は平らにした。ウクライナを平らにするつもりなのか?」

DM:「いいえ、そんなことは絶対にしない。実際、彼はウクライナの大部分を無傷で占領しようとしている。率直に言って、驚くほど小さな被害だ。91年にイラクに侵攻した時と2003年に侵攻した時よりもはるかに少ない被害だ。ウクライナ軍を包囲し、全滅させているのだと思う。そしてこれは必然なのだ。ゼレンスキーは、我々が彼を救出するという希望を抱いて、不可避の事態を先延ばしにしているのだろうが、アメリカは手を出さない。バイデン大統領はそれを明確にしている。」

SV:「終わりは近いと思いますか?」

DM:「まあ、このフェーズの終わりはまだ数日先だろう。最初の5日間、ロシア軍は正直言って、優しすぎたと思う。彼らは今、それを修正した。だから私は、あと10日もすれば完全に終わると思う。しかし問題は、ゼレンスキーが何をするつもりなのか、ということだ。ロシアは中立的なウクライナを望んでいると明言している。ゼレンスキーがそれを受け入れれば、国境を調整することができ、これは数日前に終わることができた。しかし、ウクライナ東部はロシアの手にしっかりと握られている。繰り返すが、ロシアは領土を奪取しているのではなく、ウクライナ軍を破壊している。それが彼らの焦点だ。」

SV:「大佐、あなたはゼレンスキーの立場を認めないようですね。」

DM:「ゼレンスキーは操り人形で、自国民を不必要な危険にさらしていると思う。率直に言って、ウクライナから発信される情報のほとんどは、24〜48時間以内に嘘であると論破されている。飛行場の奪取や再奪取など、すべてがナンセンスだ。実際に起きていないのだから。」

SV:「英雄じゃないですって! 自分自身と仲間のために立ち上がる、あなたは彼が英雄ではないとお思いですか?」

DM:「思わない。この男には英雄的なものは何も見当たらない。今、彼にできる最も英雄的なことは、現実と折り合いをつけることだと思う。ウクライナを中立化することだ。これは悪いことではない。中立的なウクライナは、我々にとってもロシアにとっても良いことだ。率直に言って、双方が望んでいる緩衝地帯(バッファー)を作ることができる。しかし、彼は、しがみつき、これを引き延ばそうとするように言われているのだと思う。」

SV:「大佐、私はあなたに同意しないが、我々はこれがどのように進展するかを見ることにします。」

以上、RealClear Politics 2022年3月5日付記事引用。

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関連記事:『日本はウクライナ危機にどう向き合うべきか 山本太郎×伊勢崎賢治(東京外大教授)緊急対談 緩衝国家における平和構築(長周新聞 2022年3月3日記事

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国際世論の大半を占めるであろうゼレンスキー英雄論。

しかし、英雄論を突き進めていけば、地政学的に「緩衝地帯」であったウクライナが、NATO加盟を以ってロシアと「敵対関係で」じかに国境を接することになる。それが果たしてウクライナの国益に適うことなのか?ウクライナ国民にとって良い選択肢なのか?ウクライナと立場が相似する「緩衝材国家(伊勢崎賢治氏)」たる我が国に照らして考えるべきことは多い。

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元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が7日までに自身のツイッターを更新。自民党の高市早苗政調会長について私見を述べた。この日、6日放送のフジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜・午前7時半)にコメンテーターとして生出演した際、ロシアのウクライナ侵攻を巡る議論中で自身の「最高指揮官ならどこをゴールにして戦わせる?」との質問に高市氏が「申し訳ないですけど最後まで」と答えた一幕を報じた記事を貼り付けた橋下氏。

「戦況によっては戦闘員が戦うほど非戦闘員の被害が拡大する。太平洋戦争の犠牲者の9割は戦争末期においてだ」とつづると、「戦う一択の高市さんは国家指導者として危険だ」と続けていた。(スポーツ報知 2022年3月7日付記事

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高市早苗氏は「戦う一択の」ゼレンスキーに自分を重ねて見ているのかもしれない。

政治家としてのキャリアが全くないコメディアン上がりの男のスタンドプレイが結局のところ「膨大な数の自国民を不必要な危険にさらしている(ダグラス・マクレーガー退役大佐)」ことでしかなければ、その「戦う一択」の行動を「英雄だ」などと囃し立てて果たして良いことなのだろうか?

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(ブランデンブルク門を西ベルリン側から撮ったカラー写真 / 1984年筆者撮影=この日はチェルネンコがソ連邦書記長になった日でもあった。壁に四方を取り囲まれた「資本主義のショーウィンドウ」西ベルリンが東西冷戦時代にあって鉄のカーテンの隙間=緩衝地帯として果たした役割は大きい。)

(おわり)

posted by ihagee at 09:05| 政治