1993年から1997年にかけて米国国際連合大使を務めたマデレーン・オルブライトは、
「多重質問の誤謬」に答える罠に陥った。
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国連のイラクに対する制裁の影響、「50万人の子供たちが亡くなったと聞いています。つまり、広島で亡くなった子供たちよりも多いのです。そして、あなたが知っているように、その数はそれだけの価値がありますか?」
マデレーン・オルブライトは、この原因不明の死者数や制裁によるものを疑う代わりに、「それは非常に難しい選択だと思うが、その数はそれだけの価値があると思う」と述べた。
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彼女は後でこの応答についてこう書いた:
「私は夢中だったに違いありません。私はそれを再構成し、その背後にある前提に内在する欠陥を指摘することによって質問に答えるべきでした。…話をした途端、時間を凍らせてその言葉を取り戻す力が欲しかった。私の返事はひどい間違いで、急いで、不器用で、間違っていました。...私は罠に陥り、私が単に意味しないことを言いました。それは誰のせいでもありませんが、私自身のせいです。」
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「多重質問の誤謬」に答える罠:
関係するすべての人々によって証明または受け入れられていない何かを前提とする質問を行うと、回答者はコミットしてしまう誤謬。
例:
「ロシアはまだウクライナを殴っているのか?」
「ロシアは侵略戦争から足を洗ったのか?」
「はい」と答えても「いいえ」と答えてもその前提を認めたことになるという質問形式。
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プーチンが軍事侵攻を起こすよりも遥か前から、バイデン政権は国際社会相手にこのような質問を畳み掛けていた。どう国際社会が答えてもロシアは「悪」となるように。プーチンはミンスク合意に基づくドンパス(ドネツク州とルガンスク州)の「自決権」の尊重を理由に、力による現状変更に及んだ(ウクライナ侵攻)。
そしてオルブライトがそう答えたように、ロシアという大国がその国民共々転覆するだけの「価値のある制裁」は正当化された。「力による現状変更は許されないこと」は当然でありロシアの軍事侵攻自体は強く非難されるべきことではあるが、「国際社会と連携しながら強い思いを行動として示す(岸田総理大臣)」のあまり、ウクライナとは比較にならない地政学的不安定をその「価値のある制裁」の結果としてロシアおよび我が国を含む周辺地域にもたらして果たして良いことなのだろうか?
そして、この制裁が巡り巡って「実質実効為替レート」が暴落中のルーブルよりも低い円である(「アベノミクス」に始まる異次元金融緩和政策によるスタグフレーション突入=実質「自主経済制裁」状態とも言える)我が国経済の首を締めることにもなり兼ねない。
「時間を凍らせてその言葉を取り戻す力が欲しかった」と後々「価値のある制裁」を科した側が悔やまないように程々冷静になることが求められる。
(おわり)
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