2021年09月30日

"IOCを相手取った" 審判請求書が受理された



"IOCを相手取った" 2021年9月13日付無効審判請求( IOCの登録商標『五輪』(商標登録第6118624号))が方式審理を通過し、特許庁に受理された。

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出願記事
商標 2017-166105
登録記事
6118624 (2019/02/01)
審判記事
2021-890047 (2021/09/13)審判(判定含む)
被請求人・代理人記事
被請求人CH- スイス国法人コミテ アンテルナショナル オリンピック
審判細項目記事
通常併合審理でない
更新日付
(2021/09/22)

以上、J-PlatPat(特許情報プラットフォームから)

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受理を以って、IOCは本無効審判事件の当事者(被請求人)となる。
つまり、「IOCを相手取った」審判の実体審理が開始されるということである(柴大介氏など請求人の適格性、つまり利害関係人であるかについて、被請求人=IOCは争う可能性があるが、審決時までに請求人は適格要件を具備すれば良いとされるので、たとえ争ったとしても実体審理自体は進められるであろう)。

登録商標『五輪』(商標登録第6118624号)の手続代理を行なった中村合同特許法律事務所を通じてIOCは無効審判請求の具体的理由を知ることになる。その「寝耳に水」の理由にIOCの驚天動地は想像に難くない。

「知的財産権の保護に極めて効果的な法令を既に整備し」登録された筈の文字標章『五輪』に、今になって違法性やら公序良俗違反が問われるわけで、万全の法的保護についてIOCに誓約し保証した日本政府に対しIOCは激怒するに違いない。

そもそもIOCが知る由も無い(また自ら使ってもいない)『五輪』なる日本語文字をIOCが自ずと商標登録するとは到底考えられず、IOCに忖度して誰かが登録を謀ったのだろう。しかし、その結果はIOCを喜ばすどころか「IOCを相手取った」審判事件に発展したわけであるから、これ以上のIOCの面汚しはなく、その誰かは今頃血の気が引いていると思われる。

だからと、IOCは口が裂けても自ら与り知らぬところで『五輪』が登録されたなどとは言えない。

言えば最後「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標(商標法第3条1項柱書・商標登録の要件)」に違反することになる(無効理由)。

さりとて、出願時に『五輪』を使用している又は使用する意志があったこと、また、登録に係る夥しい数の商品・役務(例: 「菓子」「ビール」)について使用意思を有することをIOCは客観的に証明することはできない。他の無効理由についても同様で、審理を通じIOCは二進も三進もいかない論理膠着に陥ることだろう。


(おわり)

<忖度>:元々の意味とは正反対の、目下の者が目上の言葉なき命令を読み取って先回りして行動するという、わが国特有のコミュニケーション手段。

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posted by ihagee at 09:27| 東京オリンピック