2021東京オリンピック開会式が新国立競技場で挙行された(2021年7月23日)。セレモニー全体について感想はない。感想、すなわち、まとまりのある感じや考えさえなかったと言うのが正しい。
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ひたすら共感を他者に求めるものの、その内向きで独りよがりな自己満足に溺れる演出は観ていてとても痛かった。何かを衒ったところで受け狙いのキャッチーを繋ぎ合わせただけだからやたら上滑りする、かと言って無用に共感や理解を求めない尖ったシュールさもなく、楽屋落(仲間受け)や外連味(コラボ)ばかり示し合わせたあたかもB級グルメのオンバレード。ジャズと歌舞伎、タップダンスと大工、ボレロと点火式等々、コラボ芸はどれもが既視感でしかない(ボレロの高揚感などはベジャールの創作でとっくの昔に賞味期限が切れている)。
式典責任者の日置貴之氏は「多様性を認め合う『ダイバーシティー&インクルージョン』、スポーツが持つ本質的な価値。そこに重点を置いた」と言うが、一々ナレーションなり説明がなければ意味することが相手にとってわからない演出自体がヤマト民族に根ざすムラ意識(『シミラリティ&エクスクルージョン』)を表している。
国名や地域をあたかもセリフのように漫画の吹き出し(入場行進のプラカード)に入れたことも如何なものか?国家の領域と境界線はモノローグ(自称)に過ぎないというイロニーであればまだしも、コミケ風・テヘペロ風に面白がってそのような体裁にしたに違いない。国家にとって国境の重要性を理解すれば到底その国名や地域名を軽々にサブカルチャーの流儀で囲うことはできない。
日本人だけが知る(Who the hell is this guy?)レジェンドも今は老いさらばえた浦島太郎にしか見えないミスターまで担ぎ出し、ナオミに日本人としての血を敢えて求めるかに締めをさせる演出は、過去の栄光やら他人の成功に乗っかるしかない、今を生きる日本社会のさもしさや衰退ぶりを表しているようで悲しかった。
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国際社会の多様な価値観にあっても、国家や民族・宗教を超えて人間として共通する普遍的なテーマを掲げることこそが、オリンピックの理念に相応しい。それは「より速く、より高く、より強く」に尽き、それだけでドラマとなり得、その他小賢しい演出や仕掛けは本来一切不要であろう。
1964年東京大会の真っ青な高い空の下、意気揚々と胸を張り、何の演出もなく堂々行進する姿は半世紀経てその記録映像を観ても胸に迫るものがある。
NBCおよびIOCの放映権の一つのショービジネス・コンテンツに成り果てた開会式セレモニーに半世紀後の感動は期待するまでもなく、"オリンピック命" と言うしかない(理念なき狂騒に走った)日本の落日を歴史に残すことになろう。
(おわり)
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