2021年06月14日

全面的「支持」は表明していない(G7首脳宣言)



Carbis Bay G7 Summit Communiqué:
Our Shared Agenda for Global Action to Build Back Better

Carbis Bay, England, June 13, 2021
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Conclusion
70. In Cornwall we have revitalised our G7 partnership. Our Shared Agenda for Global Action is a statement of our shared vision and ambition as we continue to collaborate this year and under future Presidencies. As we do so we look forward to joining with others to ensure we build back better, in particular at the G20 Summit, COP26, and CBD15 and the UN General Assembly, and reiterate our support for the holding of the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 in a safe and secure manner as a symbol of global unity in overcoming COVID-19.

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カービスベイ G7サミット コミュニケ
より良い未来を築くためのグローバルな行動に向けた我々の共有アジェンダ

2021年6月13日、イギリス、カービスベイ
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結語
70. コーンウォールで、私たちはG7のパートナーシップをあらためて確認しました。私たちの「世界的行動のための共有アジェンダ」は、今年、そして将来の議長国の下で協力を続けていく上での、私たちの共有ビジョンと大望を示すものです。また、COVID-19を克服するための世界的な結束の象徴として、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会が安全安心に開催することへの支持を改めて表明します。(拙者翻訳)

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「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催することを改めて支持すると表明」(NHK 2021年6月14日付記事から引用)

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「もちろん、あなたを支持する」など言っていない。の続き。

首相官邸は未だ日本語訳でのG7首脳宣言(G7サミット コミュニケ)を公表していないが、NHKをはじめ主要メディアは G7首脳が「新型コロナウイルスに打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で東京オリンピック・パラリンピックを開催することを改めて支持すると表明」とこぞって報道している。

しかし、ここでも英文から読み取れないニュアンスを日本語に含ませて、開催するという日本の立場をG7首脳が全面的に支持したかの印象操作が施されている

support for は日本語に訳すと「〜への支持」の意味であるので、相手(日本)の立場を全面的に支持するかに我々は受け取るが、英語でのニュアンスは、何かにチャレンジしている相手(日本)「への支援・応援」の意味であって、行動の主体は相手(日本)であり、具体的な態様= in a safe and secure manner 「安全安心」を前提としていることから、我々が理解する「〜への支持(全面的支持)」ではない。つまり、「安全安心」に開催することを前提に「支援」を改めて表明する、ということで、日本の立場にまわって支持する意味ではない。

「安全安心」に開催することを日本に要求した上での開催への支援で、その全ての行動主体は日本であることに変わりはなく、むしろ「安全安心」なる態様を伴わず開催した場合、その結果責任は日本が全て負うことになると声明したことになる

菅首相にとって決して手放しで喜べるような「全面的支持」表明ではないのである。「安全安心」なる態様が果たせない場合も「支持」を表明するわけではない。ゆえに、たとえば世界保健機関 (World Health Organization: WHO) など公衆衛生に係る国際機関が、この態様に照らし開催に明確な疑義を示せば、東京オリンピック・パラリンピックを開催することに、G7首脳は尚も支持を表明することにはならないと理解すべきだろう。

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今夏の東京五輪・パラリンピックについては、「全首脳から大変力強い支持をいただいた」と強調した上で、「しっかりと開会し、成功に導かなければならない。そういう決意を新たにした」と述べた。(読売新聞 2021年6月13日付記事引用)

菅首相がこのような理解をしているとすれば、勘違いも甚だしい。G7のコミュニケで支持するは「成功」でも「決意」でもなく、「安全安心」なる態様への「安全=科学的証拠」「安心=補償」なる担保を日本が行うことに他ならない(拙稿「安全は科学・安心は補償」)。

「安全=科学的証拠」「安心=補償」を開催要件として担保することなど常識的に考えれば到底できる筈もないが、菅首相は安請け合いをしてしまったことになる。

(おわり)

追記:
” 五輪やスポーツビジネスに詳しい大阪産業大の永田靖教授(54)は、選手が感染した場合に「損害賠償を請求される可能性があります」と重大指摘した。・・・訴える対象は開催権限を持つIOCかホスト国の日本で、どちらかが責任を問われそうだが、同氏は「私は日本だと思います」とキッパリ。”(東スポ web 2021年6月14日記事引用)
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「安全=科学的証拠」「安心=補償」を開催要件として日本が担保するということは、上述のような賠償責任をIOCではなく日本が負うとわざわざ菅首相はG7首脳宣言(G7サミット コミュニケ)に盛り込んだということ。そう日本以外の首脳は理解したことであろう。IOCは今頃胸をなで下ろしているに違いない。
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菅首相の唱える「安全安心」は国内では心がけ程度の繰り言で済むかもしれないが、契約前提の国際社会では必ず言質を取られる。「安全」ならばリスク評価を伴う科学的証拠を示さなくてはならない。「安心」ならば万一選手が感染した場合に損害賠償を行うことを確約しなければならない。
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一民間団体の国際競技大会の開催の為と言って、国内同様に「安心安全」をG7首脳会議を介して国際社会に向かって安請け合いした結果責任まで菅首相は考えが及ばないだろう。日本の国益と信用を「安心安全」なる言葉と共に "安易に" 開催の秤にかけたその暗愚は極まりない。
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そもそも、国際機関でもない一民間団体の事業を、国際的政治経済の喫緊な課題を扱うG7首脳会議(サミット)に於いて、その開催の言質を取り付けること自体ナンセンスだろう。ナンセンスゆえに、G7首脳宣言では逆に「安全安心」なる態様の重い言質を日本から引き出す内容になっており、日本の国内問題に明確に押し込まれている。暗愚な菅首相、および国内の主要メディアはそんなことにも気付いていない。
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「外交は内政の延長」(ハロルド・ニコルソン)とはよく知られている定理である。ところが安倍→菅政権と内政が思わしくない故に「外交らしきもの」を以って、さも外側で得点を重ねているかに演出し、この定理とは真逆の「内政は外交の延長」となっている。今般のG7首脳会議での開催「支持」取り付けが典型であろう。そもそも内政をまともに行うだけの能力がないから外見から繕っているのではないか?データの上ばかりに奢るアベノミクスもそのデータが不正とあっては看板倒れ、そして安倍(前)首相自身の国民の信望は著しく低い。それは菅首相も受け継いでいる。内政のいい加減さが外交を経てまた内政に降りかかってくるという本末転倒な因果律にある。内政として譲ることができない「固有の領土」という主張すら、対露外交の結果、口ごもらざるを得なくなった北方領土問題に顕著に現れている。五輪開催も同じ因果律にあるだろう。
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「内政は外交の延長」でしかない安倍=菅政権にあって、五輪開催を以って今度は何が外から押し込まれるのか、そんな暗愚な政権ゆえの不幸な因果律に巻き込まれるのは我々国民である。


posted by ihagee at 07:23| 東京オリンピック