2021年05月26日

ガイアツに頼るは恥



" 英BBC放送電子版は25日、米国による日本への渡航中止勧告が「ガイアツ(外圧)」となって、東京五輪の中止につながるよう多くの日本人が願っているとの見方を伝えた。日本特派員の記事は、渡航中止勧告が「米国代表団の東京五輪出場取りやめにつながることを多くの日本人が期待している」と指摘。日本人の多くが五輪の中止を望んでおり、米国代表団が辞退すれば日本政府は開催断念を強いられるとみられていると紹介した。さらに、米国オリンピック・パラリンピック委が五輪出場に影響しないとの見解を示したことに「(開催に反対する日本人は)落胆しているようだ」と伝えた。" (2021年5月24日付共同通信)

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母屋でボンボンと火の手が上がっているのにその家の主人ときたら庭先に緋毛氈を広げ野点(のだて)の準備をして遠来の客をもてなそうとしている。「来るとの約束だからもてなさなければ、そうでもしないと逆恨みされて火でもつけられたら・・・」と主人は言う。煙に巻かれ真っ青になった家人が通りに向かって「誰か助けてぇ」・・・。

白昼夢のような情景だが、これが現実のありさまの喩え。

我が事なのになぜか他人(ひと)任せ。自分でありながら自分でなく頭と体がバラバラに動くその様は傍目では操り人形のように滑稽だが、それが我々の姿であって、身動きに糸や操り手を期待する「ガイアツ」は決して褒詞ではない。

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"Gaiatsu−the Japanese term for “foreign pressure”−is the idea that the only way to get Japan to do something that it doesn’t want to do is for foreign partners to apply enough pressure so that eventually Japanese decisionmakers relent." (CSIS=戦略国際問題研究所 websiteから)

「ガイアツ(外圧)」とは、日本にとってやりたくないことをやらせるためには、外国のパートナーが十分な圧力をかけて、最終的に日本の意思決定者が降参するように仕向けるしかないという考え方である。

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「日本の意思決定者」は「ガイアツ(外圧)」がなければ決定できないは、日本は意思決定能力が乏しく、「外国のパートナー」は圧力さえかければ日本が言いなりになると学習しているということである(Gaiatsuという国際語になっている)。「やりたくないことをやらせる」のは米国であったりIOCであったり、反対に「やめさせる」は外国のメディアであったり国際世論であったり。降伏・追従=自ら敗れたことを認め相手に従うこと、を常に仕向けられる(ことを期待する)性(さが)は悲しい。その行為の主体でありながら意思を他者に投げてばかりいるから行為に責任を負う意識も希薄になる。

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「ガイアツ(外圧)」が何たるか知らない国が相手なら、IOCは疾うに(とうに)尻尾を巻いて逃げていっただろう。

いかなる主権の原理も本質的に国民に存する、その国民から明確な意思を表示すれば「ガイアツ(外圧)」など必要としない。「ガイアツ(外圧)」に頼るということはその原理がないということ。大いに恥じなければならない。必要なのは国民主体の「ナイアツ(内圧)」。



「オリンピック」を「戦争」に置きかえてみたら、

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(おわり)


posted by ihagee at 03:26| 東京オリンピック