
アリスは白の女王と出会いました。白の女王は「週2ペンスと1日おきにジャム Twopence a week, and jam every other day.」でアリスを侍女として雇うと言いました。さらに「ジャムは明日と昨日ですからね−−でも今日は絶対にジャムなし。それがルールでございますからね。 The rule is, jam to-morrow and jam yesterday--but never jam to-day.」と言いました。 LEWIS CARROLL『鏡の国のアリス』第5章』
----
一見平易な英語のように見えて言葉遊びが隠されている。
every other dayは「1日おき」の意味だが、every / other dayとして訳せば「すべて他の日」となって、ジャムに今日は含まれない。さらに、昨日のジャムは貰ったことにされ、明日のジャムはお預けで、結局、今日という日のジャムは絶対に貰えない。つまり、明日になれば今日は昨日となり、いつまでたっても成就しない約束だが振り返れば貰ったことになっている。ジャムという楽しく望ましい方向とは逆の方向(後ろ向き)に生きている方が為になる('That's the effect of living backwards,') 、と白の女王は諭した。鏡の国は全てが逆立ちしているからそうなるのだろう。
to-morrow, to-dayはtomorrow, todayをハイフォンでわざわざ分綴している。morrowは古語として「朝 morning」の意味があり、dayは「昼」なので、「朝には」「昼には」とも意味することができるから、さらに言葉遊びが隠されているのかもしれない。
----
'jam tomorrow' (British English) は「誰かがあなたに約束したが、決して起こらない良いこと 'good things someone promises you, which never happen' ロングマン英英辞典」の意味として使われることがある。ロングマンはさらにその例示として 'There is an element of ‘jam tomorrow’ about some of the government’s policies.' を挙げている (政府の政策には、「jam tomorrow」という要素がある)。実現されない様々な美辞麗句な政治的公約を表す言葉として使われている。すなわち、「空手形」「画餅(絵に描いた餅)」の意味。
----
たとえ空手形・画餅であろうと「今日」と言い続けている限り「昨日のジャム・明日のジャム」で得をする白の女王の仲間たちがいる。約束は必ずしも実現しなくても良い。
" 衆院決算行政監視委員会で質問に立った立憲民主党の斉木武志氏は独自に入手した資料に基づき丸川氏を追求。人材派遣会社のホームページで、「ディレクター」と呼ばれる職種が日当1万2000円程度で募集されている一方、委託先への支払いの算出根拠となる人件費単価が最大20万円に上ると指摘した。そのうえで、斉木氏は「95%も中抜きして業者に渡すのは放漫だ」などと丸川氏に迫った。斉木氏は具体的な企業名を明らかにしなかったが、五輪スタッフの募集や研修に携わっているのは人材派遣会社の「パソナ」だとされ、これまでにも多くの不可解な契約が結ばれている。" (MAG2NEWS 2021年4月20日付記事から引用)
jam tomorrow / 決して起こらない良いこと、は今日という日ができるだけ長く続けば「良いことが続く」。
「今日」が必ずやって来ると信じる大会参加予定の選手たちは「明日の夢とか希望」を振りまいているが、開催するかしないかはあまり関係ない、そういう白の女王(IOC)の仲間たち(政商)もいるということ。白の女王(IOC)が元締めだから分け前をいずれ与る契約(開催都市契約)。何かと周到である。「明日の夢とか希望」とか言っている間に、都民・国民の税金をこっそり収奪しようとすることが「トリクルダウン」の意味なのだろうね。
「明日の夢とか希望」が施し物だけど、ジャムという楽しく望ましい方向とは逆の方向(後ろ向き)に生きている方が為になる('That's the effect of living backwards,')は正論かもしれない。「アンダーコントロール」なる必要に逆立ちした安全論(必要だから安全に決まっている)に端緒する世の中では、どうやら鏡の国のルールが正しいようだ。
----
サイアノタイププリント 'jam tomorrow'
いずれも、2021年3月15日に千駄ヶ谷で撮影。Sigma DP2Sのデジタル画像をフィルムレコーダ(Polaroid Digital Palette HR 6000)で35mm モノクロフィルム(Fuji AcrosII)に変換し、銀塩写真用引き伸ばし機(UV光源)で水彩画紙(Cotman Water Colour Paper B5 Fine)に焼き付けた(別稿:サイアノタイプ)。デジ→アナ変換は鏡の国のルールである。
【東京オリンピックの最新記事】
- オリンピックマーケティングの脱法性(商品..
- 大会組織委員会の犯罪・要点整理
- 大会ブランド保護基準は「定型約款」たり得..
- 東京2020ライセンシングプログラム「ラ..
- 組織委はアンブッシュ・マーケティングを自..
- この商標よ〜く考えると、おかしくないです..
- IOCへ権利譲渡!?
- IOC登録商標『五輪』無効審判関連動画(..
- IOC登録商標『五輪』無効審判関連動画
- MIKI 庶民大学(IOC登録商標『五輪..
- 使用意思 / 慣用商標
- 「これまでのIOCの言い分を考えてみよう..
- 商標登録前の『五輪』の世界はどう見えるの..
- IOC登録商標『五輪』無効審判での無効理..
- 「あなたたちどうして自分たちの言葉を大事..
- "IOCを相手取った" 審判請求書が受理..
- " 「五輪」も商標 IOCの愚!?" 東..
- 遂に「IOCを相手取った」登録商標『五輪..
- 玩物喪志の一言に尽きる
- オリンピック、そして日本社会を蝕む商品化..