2021年03月12日

人類がコロナに打ち勝った証のオチ


菅首相は「夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」にすると説明。米有力紙ニューヨーク・タイムズなどが新型コロナの感染拡大を理由に五輪中止の可能性を伝えているが、首相は「感染対策を万全なものとし、世界中に希望と勇気をお届けできる大会を実現するとの決意の下、準備を進めてまいります」と述べた。
(第204通常国会 菅首相施政方針演説から)

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国際オリンピック委員会(IOC)は11日、オンラインで総会の2日目を開催した。前日の会長選で再選を果たしたトーマス・バッハ会長は、冒頭のあいさつで、今年7月の東京五輪、来年2月の北京五輪について、中国のオリンピック委員会から新型コロナウイルスのワクチンの提供の申し出があったことを明かした。「中国のオリンピック委員会から親切な申し出があった。真の五輪連帯精神に基づく申し出に感謝している。東京2020と北京2022の参加者がワクチンを利用できる。IOCはこれらの追加ワクチンの費用を負担する」と、表明した。
(デイリースポーツ 2021年3月11日付記事引用)

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北京大会のみならず東京大会に於いても、どうやらその「証」を立てるのは中国となりそうである。「証」などと壮語したばかりにその「証」も「世界に発信する機会」も中国に取られてしまった。

本来であれば、「世界に発信する機会」ともなる「証」は日本が自ら立てなくてはならなかったのに、マスクに始まりワクチンまでもその供給を中国に委ねなくてはならない(委ねるとIOCが言明した)。東京大会でありながら、IOCは開催都市(東京)の頭越しに北京と話をつけ、それも「五輪の連帯精神」だと言う。その連帯精神を表す「五輪」という文字すら、日本はIOCに熨斗をつけて献上してしまった(「五輪」登録商標)。我々の言語文化までその文化圏にないIOCに売り払ったツケであろう。仏作って魂入れずの東京大会を象徴している。

菅政権に引き継がれているアベノミクスなる成長戦略は水モノの観光立国・サービス産業に専ら傾斜し、中国人観光客がインバウンドの柱となっている。新型コロナウイルス禍はその柱に頼るばかりの日本経済の脆弱さ・底浅さを如実に浮き彫りにした。他方、製造開発等、本来地力となるべき産業は著しく衰退し("オリンピック命" と言わせる日本の落日)、「メイド・イン・ジャパン」はもはやニッチな価値観の代名詞になって「クールジャパン」なる官製の「共感」喧伝は却って経済の身の丈を縮めている。



おいらの靴は日本製
はいてるズボンはイギリス製
頭にロシアの赤帽子
それでも心はインド製
(ラージ・カプール主演・インド映画「Shri 420」の挿入歌)

「日本って素晴らしい」「日本人って凄い」と、心だけは国産と誇るしかない夜郎自大ぶり。気づけば我々の生活はどれもこれも外国製品ばかりで、IOCからも中国からも差し出口を許すしかない日本。ホストでありながらホストらしさを何ら示すことができない惨めさ・卑屈さを「世界に発信する機会」が今夏のオリンピックとなりそうな気配だ。

「Shri 420」ではカネに目が眩み詐欺師になった主人公が、かつて寝食を共にしたスラムの人々によって改心しまともな生き方を求める話だった。

歪んだ乞食根性で行うようなオリンピック開催はこの際断念し(開催権を返上し)、我々もこの主人公同様にカジノを成長戦略の柱とするような詐欺師まがいの経済政策から足を洗うべきではないのか?心ばかりか頭の天辺から足の爪先までこれが自分と胸を張れる国になりたいものだ。

(おわり)


posted by ihagee at 03:03| 東京オリンピック