化粧品会社ディーエイチシー(DHC)のオンラインショップのサイトに、在日コリアンを差別する文章が吉田嘉明会長名で16日までに掲載され、SNS上で批判が相次いでいる。ヘイト問題に詳しい専門家も「ヘイトスピーチそのもの」と批判している。
文章はDHCが販売するサプリメントについて書かれており、競合他社について「CMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です」と記述。さらに、その企業名を「ネットでは揶揄されているようです」とし、在日コリアンの蔑称を用いて表現する一方、DHCは「純粋な日本企業」と記している。SNSなどではこの文章について「差別発言だ」などと批判する投稿が多く上がった。ツイッターには「#差別企業DHCの商品は買いません」というハッシュタグ(検索目印)を付けた投稿も続いている。ヘイト問題に詳しい師岡康子弁護士は「ヘイトスピーチそのものだ。蔑称を用いてコリアンルーツの人を侮辱し、社会から排除することを扇動している。大企業の代表が公式サイト上で文章を公表しており、その扇動の社会的悪影響は大きい」と指摘している。DHC広報部は文章掲載の理由や経緯などに関する共同通信の取材に「回答することは特にない」としている。
以上(2020年12月16日付共同通信報引用)
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動かしつづける。自分を。未来を。#YouCantStopUshttps://t.co/EEkOkOOeLt pic.twitter.com/aPnZcPAO05
— Nike Japan (@nikejapan) November 28, 2020
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ビジネスと人権に関する国連の指導原則を、企業=ナイキがその実行の枠組みとし制作したCMに他ならない。DHCの広告で揶揄の対象とされたサントリーはDHCの件の広告に対するコメントは控えているが、同社の公式サイトでは ”「社会の一員である企業として、すべての活動において人権尊重の重要性を認識しています。私たちは、国連『ビジネスと人権に関する指導原則』(UNGPs)を実行の枠組みとしてとらえ、事業活動を行うそれぞれの国または地域における法と規制を遵守します」” と謳う。
「人権への負の影響を特定し、防止し、軽減し、そしてどのように対処するかということに責任をもつために、企業は人権デュー・ディリジェンスを実行すべきである。」(ビジネスと人権に関する国連の指導原則から)
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DHCという企業は「人権デュー・ディリジェンス」に背くばかりか、本来防ぐべき人権への負の影響を自ら引き起こし、または負の影響を助長・利用した企業活動(やけくそくじ)を行っていると誰もが認識せざるを得ない言葉を、同社の会長・CEOは公に発していることになる。
「創業以来ずっと消費者の動向を見続けてきた私のやけくそな気持ちをわかっていただけたと思います。」(DHC 会長・CEO 吉田嘉明)のやけくそ=自棄糞=乱暴・捨鉢、な気持ちになる商品など誰が買うだろうか(「くそ=糞」は言葉としても汚い)?人権に責任をもたない(デューがない)企業の「やけくそな気持ち」が籠もった商品に、「賢明な消費者」ならば「#差別企業DHCの商品は買いません」となるのは理の当然。「人権デュー・ディリジェンス」を実行し、消費者をして「今日、NIKE履いてるのが誇らしい(SNSでの消費者の反応)」とまで言わしめるナイキとの企業責任のあまりの違いに愕然とする。「動かしつづける。自分を。未来を。」と「やけくそな気持ち」... 言葉遣いのみならずメッセージ性の違いは、DHCに企業として品性まで問われる。「人間として」という国際社会の大命題に背を向け「純粋な日本(人)」にひたすら青い鳥を探すは徒爾に属し自慰に耽ることに過ぎない。
そんなことに青い鳥を探すのは人の勝手だが(少なくとも吉田嘉明会長の勝手だが)、だからと言って、個人の内心に委ねるべき思想信条・正義を、企業活動を以ってその内心にずかずかと土足で上がり込み、商品と共に売り買いするものであってはならない。剰え、社会全体にヘイトを扇動するようなことは社会の一員たる企業であれば絶対に許されないことだ。「ただ、DHCの商品が好きだっただけなのです。」といった消費者の純粋な購買心に乗じ、人のためにするように見せて実は別の目的(ヘイト・排外/国粋主義)を果たそうとする「お為ごかし」に我々は乗ってはならない。
関連記事:
・「私は、”DHC商品”とお別れする羽目になりました。」
・”国民の多数が「それでも日本人か」と言う代りに「それでも人間か」と言い出すであろうときに、はじめて、憲法は活かされ、人権は尊重され、この国は平和と民主主義への確かな道を見出すだろう。(加藤周一)”(「旅愁・横光利一」に対する注釈)
(おわり)
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