国際信義とは、COVID-19禍およびそれに連鎖する世界的経済恐慌に各国と連携しながら専念対応することである。オリンピック開催という国際公約よりも遥かに重大且つ喫緊な信義則であることは明白だろう。ゆえに「(開催権を)返上」することには大きな意義がある。・・・IOCは経営的に今を取る(中止)可能性が高い。それでも尚「延期(開催)」とする場合、その条件として日本政府に開催不能となった場合の金銭的補償を求めるかもしれない。ギャンブルをするツケはそれを希望する開催都市および政府ということになる。胴元は損をしないというのがIOCビジネスだからだ。その胴元たるIOCと米国企業は深く利害を共にしている。(拙稿「延期という無責任・返上という国際信義」)
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開催機運が盛り上がらないばかりか、中止となる・中止すべきだ、との世論の高まりに不安と焦燥を感じたのかIOCのバッハ会長が来日した。
「良い模範であることの教育的価値、 社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。」(オリンピック憲章「オリンピズムの根本原則」から)
この一文に照らしても、オリンピックの「今」担う社会的責任とは開催という国際公約ではない。科学的確証もなく「打ち勝った証(としての開催)」などと向こう見ずな勝ち鬨を「今」上げることが良い模範である筈もない。「オリンピズムの根本原則」に「今」を照らせば、オリンピック・ムーブメントはその活動を8ヶ月後の開催ではなく、現下のCOVID-19禍に直接向けるべきであろう。スポンサー企業から集めた協賛金をウイルス禍で活動も儘ならない各国スポーツ団体への支援・援助に直ちに当てることなどは言を俟たない。国際信義は後者に加担する。
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「倫理規範の尊重」ではIOC、開催都市、オリンピック関連団体およびスポンサー企業は公然と脱法(違法)行為(商標法)を行っていることは、すでに国会での質疑応答で明らかでもある(2019年3月20日参議院法務委員会)。公益性の裏面たる商業主義の要を成すライセンス活動に違法性が問われていることは、自身弁護士でもあるバッハ会長は知る立場にある(「バッハIOC会長への手紙(原文)」「バッハIOC会長への手紙(参考和訳)」。知っていながら違法状態を看過することは「犯罪」となり得る。
「この違反行為に対して、・・・脱法行為的説明でごまかしている間に、法律改正して合法化しようとしているそのやり方、政府の対応はおかしいですよ(小川敏夫議員(立民)」
関連記事:「大問題:スポンサーに対するオリンピック関連商標使用許諾は商標法違反」
「東京新聞・特報記事「IOC商標登録・過剰規制の恐れ/商店街「五輪」使えない?」
「オリンピック関連登録商標の異議申立と違法ライセンス疑惑の狭間で(5):IOCファミリーによるアンブッシュ・マーケティング規制の不毛(柴大介弁理士)」
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「多くのフェイクニュースが流れていたが、疑念は払拭された(森喜朗大会組織委員長)」
2019年3月20日参議院法務委員会で明らかになった違法ライセンス問題はどうなのか?違法状態は解消されておらず、違法性は一切払拭されていない。
そもそも、脱法(違法)行為も許されるオリンピックとは何なのか?倫理規範の尊重がオリンピック憲章の根本原則なら、法のモラルすら守らないオリンピック自体、その原則に自家撞着している。ゆえにウイルス要因の有無に関わらず本来「中止しなければならない」。それこそ、法に遵って我々が口にすべき信義ではないか?
(おわり)
追記:商標法を後付けで改正することで、違法行為(違法ライセンス)を遡及的に「合法化」することはできず、改正法前のライセンス行為は違法であり、サブライセンスはその前後に亘って今も違法状態が継続している。違法ライセンス活動は刑法上の犯罪を構成する。
”専用使用権の設定禁止(商標法30条1項但書)及び、商標権の譲渡・移転制限(商標法24条の2第2及び3項)は残るので、法改正前になされた、ライセンス契約と違法ライセンスに伴う違法事態は、合法化されることなく今後も違法状態であることになります。特に、オリンピック関連登録商標をサブライセンスしている場合、非営利公益団体のライセンス禁止条項の有り無しに関係なく、違法ですので、大きな問題は法改正によって全く解消しないことになります。”
「オリンピック関連登録商標の異議申立と違法ライセンス疑惑の狭間で(2):非営利公益団体の著名登録商標は何故ライセンスできないのか?」から抜粋。
”そして、この改正商標法の施行に合わせて、特許庁が、「公益著名商標に係る通常使用権の許諾が可能となります」と、関係者にアピール声明を発信しました。この、実に正直な声明により、改正商標法の施行前になされた「公益著名商標に係る通常使用権の許諾」行為、即ち、IOCファミリーが長期間、大規模に展開した、オリンピック関連登録商標(公益著名商標)のライセンス(通常使用権の許諾)活動は違法であったことが明確になりました。”
「オリンピック関連登録商標の異議申立と違法ライセンス疑惑の狭間で(5):IOCファミリーによるアンブッシュ・マーケティング規制の不毛」から抜粋。
(特許の無名塾:五輪知財を考える(弁理士:柴大介))
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