2020年10月30日

テープ録音(その5)



NATIONALのRQ-402(1968年製造のSolid State)の代替として、同じNATIONALのRQ-705をヤフオクで購入した。型番は新しいのに1962年製造・真空管2chモノーラル録再機の古手である。当然ジャンク扱いで他に入札などなく千円そこそこで落札。

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外観は昭和の白物家電然(レトロ)としていてなんとも古めかしいが、内も外も金属が主体だからそれ自体モノとしての質感(重量感)がある。先ずは点検を兼ねて筐体から内部のシャーシを取り外した。真空管やドライブベルトなど消耗し易い部品は簡単に交換前提の設計なのだろう、ネジを数本外すだけで簡単に内部を露出させることができる。RQ-402などSolid State(トランジスタ)製品はその前提がない。Solid Stateの売りであった「交換・修理不要」も換言すると、壊れてしまえば買い換えるサイクルとなるように耐用年数が短く設定されていることでもある。耐久消費財から交換修理を前提の「耐久」を外すことでメーカーは任意に製品ごとの実動年数を調整することが可能となり、常に新しい製品を市場に提供することで市場から事業資金を潤沢に調達できるようになった。メーカーの意図する通り(「修理するよりも買い換えた方が安いですよ。」)RQ-402は所詮ガラクタになるしかなかったのだろう(拙稿「百代の過客」「発想の転換(“最も古いまだ使用中の家電”コンテスト)」)。

そのような宿命が課せられていなかった時代の真空管のテープレコーダ。ガラクタにならないと期待しつつ点検を始めた。

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ヘッドは摩耗が見られずまた周辺も綺麗。ピンチローラに付着した磁性粉を取り除く。
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機械部分は清掃し適宜グリスアップ&注油を施す。
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通電して真空管の状況を確認(球切れ無)。
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回転速度は19cm/sと 9.5cm/sの二段に切り替え可能だが、ピンチローラのテンションが適正でなく、 9.5cm/s側で再生時にスリップする。この現象はYouTubeでも報告されていた。

動画ではコイルばねを強いものに交換して対処しているようだが、私はRQ-402で使ったゴムベルトを加えて応力を調整した。さて、動画からも判るようにモータ軸とテイクアップリールとの間に布ベルト(平ベルト)とプーリが介在する。通電状態で常にモータ軸は回転しているが軸に接触する布ベルトはそれ自体の性質を利用したベルトテンションクラッチ機構となっている。すなわち、プーリのベルト押し上げ⇆下げによって緊張⇆弛緩し、テイクアップリールへの動力の入⇆切を行っている。布ベルト自体の滑りを利用しているので、通常のゴムベルトで代替することはできない。
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さて、この状態で実際にテープをかけてみた。




この音源はRQ-402を使って拙稿「伊豆の踊り子」で採用している。RQ-402の再生スピードが適正でなかったことは一聴して明らかである。国語研究で掲載した音源は正しいスピードで再生されたものに更新しなければならない。そうこうするうちに、「ブツッ」と嫌な音がした。

内部を点検すると件の布ベルト(平ベルト)が粉々に断裂。経年劣化しているところをいきなり「緊張」させたのでそうなったのだろう。上述の通り、ゴムベルトに替えることはできず、RQ-705用の布ベルトはもはや入手不可能。さて困った。RQ-705の最大の欠点は布ベルトにあった。

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無い知恵は絞るもの。荷造り用の布テープに裾上げ用の布地(テープ状)を貼り合わせれば良いかもしれないと閃いた。布テープの表面の滑り性と布地のグリップ性を表裏に使うというアイディアである。

25mm幅布テープ(寺岡製作所製)を接着面を上に平らに伸ばし、23mm幅布地(百均のもの)を重ねて貼り付け、6mm幅 x 33.5cm寸にハサミで切り落とし(カッターは布地がひっかかるのでダメ)、その両端を繋いで代替のベルトを作成することにした。糊代は3mm程度とし、布地はその部分は切り剥がして布テープ同士が接くようにするが、布テープは表面に剥離剤が施されているので糊代部分は紙やすりで落とし「セメダインPPX」で慎重に接着、布面を内側にしてレコーダに組み込んだ。6mm幅 x 33.5cmの寸法はこの過程の試行錯誤で導き出した最適値である。接着剤の種類も同様。
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(自作の布ベルト)


(動作状況・機械音がするがマイクを近づけている為)


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レトロな外装はこの際ガンメタリックに塗り替えた。さて、自作のベルトの耐久性やいかに?
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(おわり)


posted by ihagee at 06:56| 古写真・映像