先月、民放のとある情報番組でマルマンのスケッチブックが紹介されていた。

その表紙のレトロな意匠が創業百年企業のアイコンともなっているベストセラー品で、どこにでも売っている日用品(国産)。

件の番組ではスタジオのカンペとしての効用(書きやすい・剥がしやすい)が話題となっていたが、安価と雖も私にはいささか勿体無い使い方に思える。そう思わせるほど、高品質な画用紙であることは本稿のサイアノタイプ・プリントで知っているからだ。
B5またはA4の同スケッチブックを使った作例:
(写真家・Maurice Couvratの乾板(1920年代頃)/ 昭和11年(1936)製ハンザ特許引き伸ばし機 (Anastigmat F=125, 1:6.3) / UV光源 / 露光約五時間)
普段使っているvif ArtやCotmanと発色の色味が異なり同じ青でも黒味がかり、さらにジャスミン茶でトーニングすると全体がセピア調になりコントラストが上がる。
(Kodak T-MAX 400 / Voigtländer Superb (1933), Skopar 75mm F/3.5 / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約五時間)
(アメリカ?1950年代撮影120フィルム / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約八時間)
引き伸ばし機の絞りをF8にした(普段は開放)。紫外線の光量が減る分露光時間を要するが細部は緻密に表現できる。
(積丹美国 / 1950年代撮影120フィルム / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約五時間)
(夕張・栗山町字日の出にあった新二岐炭鉱。その炭鉱関係者の宿泊施設に面した畑の一コマ / 1955年撮影 120フィルム / Lucky II-C(Fujinar-E75mmF4.5) / UV光源 / 露光約五時間)
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ジャスミン茶などのトーニングに強い癖があるが、トーニングせずにオキシドールで仕上げる分にはそのブルーブラックの色味は好みかもしれない。紙の表裏を気にせずプリントするが(このスケッチブックは表紙の表裏が全く同じデザインゆえ、どちらを表にして使っても良い仕様になっている)、vif ArtやCotmanなど水彩画紙に比べさすがに紙の厚みがないので感光剤の染み込みが浅くあまり丹念に水洗するとハイライト部分で色抜けをしてしまう。より緻密に仕上げたいのであればやはりvif ArtやCotmanが相応しい。
(おわり)
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