検察庁法改正法案を含む国家公務員法等の一部を改正する法律案。
”検察庁法改正法案によれば、内閣ないし法務大臣が、第9条第3項ないし第6項、第10条第2項、第22条第2項、第3項、第5項ないし第8項に基づき、裁量で63歳の役職定年の延長、65歳以降の勤務延長を行い、検察官人事に強く介入できることとなる。内閣ないし法務大臣の裁量により役職延長や勤務延長が行われることにより、不偏不党を貫いた職務遂行が求められる検察の独立性が侵害されることを強く危惧する。「準司法官」である検察官の政治的中立性が脅かされれば、憲法の基本原則である三権分立を揺るがすおそれさえあり、到底看過できない。少なくとも当該法案部分は削除されるべきである。”(日本弁護士連合会 2020年5月11日付声明)
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検察庁法では、検察官の定年は63歳と定められており、1981年の人事院答弁でも、検察官に国家公務員法の定年制は適用されないという政府見解が示されている。しかも、人事院松尾給与局長は当初、「現在まで特に議論はなく、解釈は引き継いでいる」と答弁、閣内での矛盾が露呈するや、急場しのぎのつじつま合わせが行われた事態(森法相の答弁錯乱含む)は記憶に新しい。本来ならば2月退官だった黒川検事長の定年を1月末の閣議決定で半年間延長した。「検察官に国家公務員法の定年制は適用されない」との政府見解がある限り脱法的適用となるところ、法律(検察官法)の方を合法化すべく変えようとしている。この図式はオリンピック関連商標使用許諾(脱法行為)を合法化すべく商標法を改正した経緯と同じ(拙稿「大問題:スポンサーに対するオリンピック関連商標使用許諾は商標法違反」)。
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検察官に国家公務員法の定年制は適用されないとする過去の政府見解と、かかる見解に「現在まで特に議論はない」とする人事院答弁、不要不急の法改正(検察庁法)との世論にも関わらず、安倍晋三首相は定年延長(国家公務員法)により「知識や経験などを持つ職員を最大限活用し、複雑高度化する行政課題に対応する」と意義を強調し、今国会での法案(検察庁法一部改正)成立が必要だとの考えも示した。
”今国会での法案成立が必要” なる必要至急性(検察庁法一部改正)について安倍首相は何ら説明を行わない。検察庁法と国家公務員法の改正案などを一本化して審議するやり方は「脱法的」であり、検察官の定年延長部分を削除すべきとの野党の要求にも、「(法案の)分離は非常に難しい」と今週内に衆院を通過させる意向を記者団に表明した。(自民党・森山裕国対委員長)
「(法案の)分離は非常に難しい」が何故に難しいのかすら説明を行わない。法案国会提出を閣議決定したからには・・と言うのならば、一度閣議決定した補正予算案を組み替えた(収入が減少した世帯への30万円の給付から方針転換)ことはどうなのか?検察庁法一部改正が民意不在の明後日の方向であることは明白だろう。裏側から手を回し(搦手門)、国民の注意を払わない国家公務員法一部改正と抱き合わせで検察庁法一部改正の裏口入学をさせる(拙稿「<搦め手>好きの安倍首相」)。在宅勤務者が増えて、平日の日中にテレビなど見ない人々も国会審議中継を見るようになった。コロナ禍が奇しくも国会審議での安倍首相の性向たる搦手門での異様さを知る機会ともなった。
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現行法下では脱法行為となることを行うために、法律の方をそれに合わせて変えようとしている。「現在まで特に議論はない」にも拘らず。変える理由は後付けゆえにその必要至急性について与党は具体的に説明ができない。「知識や経験などを持つ職員を最大限活用し、複雑高度化する行政課題に対応する(安倍首相)」なる意義がなぜコロナ禍只中の今であって、それが検察庁なのか?
「俺がルールブックだ」の俺なる安倍首相は「法案審議については国会でお決め頂くこと」と木で鼻をくくったような態度。しかし、内閣ないし法務大臣が強く介入可能となる検察官人事の射程が安倍政権に近いとされる検察ナンバー2の黒川弘務・東京高検検事長であるとの疑念は拭えない。河井夫妻の公職選挙法違反に関連し、県議や首長たちに配り回した現金の原資が官房機密費ならば、検察捜査は内閣官房、そして安倍首相に及ぶ。その検察捜査を検察官人事への介入によって抑え込んでいく意図が透けて見える。
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twitter: #検察庁法改正案に抗議します
その通り。検察庁法の一部改正に強く反対する
(おわり)
追記:
本来ならば2月退官だった(現行の検察庁法が定めに拠れば、また、検察官に国家公務員法の定年制は適用されないという政府見解によって)黒川検事長の定年を半年間延長した1月末の閣議決定は改正法を以っても合法化されないのではないか(法令不遡及の原則)?仮に検察庁法が改正され、黒川氏が検事総長になっても内閣が代わって先の閣議決定を取り消してしまえば法的根拠がない身分となる。
この点は、商標法改正を以って、法改正前の違法なライセンス活動が合法化されることはない(「オリンピック関連登録商標のライセンス活動の違法性は、商標法改正では解消しないということになります。」=法令不遡及の原則)となるオリンピック関連商標の違法ライセンス問題と同じである。(詳細は特許の無名塾:五輪知財を考える(弁理士:柴大介)ブログ「オリンピック関連登録商標の異議申立と違法ライセンス疑惑の狭間で(4):商標法改正では違法ライセンス問題は解消しない」中の《改正法の効果は過去に遡及するのか》を参照されたし)。
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