2020年03月05日

「仕事を放棄しなかった乗員」(高山医師の反論)で良いのか?(続き)



「新興感染症が発生しているわけですから、怖くないはずがありません。ただ、そのなかで継続して頑張っている人たちがいることは、ぜひ理解してほしいと思います。ちなみに、私は明日も船に入ります。・・・そもそも、こんなことは初めての取り組みです。失敗がないわけがありません。それを隠蔽するようなことがあれば、それは協力してくださった乗客の皆さん、仕事を放棄しなかった乗員の方々、自衛隊の隊員さんたち、そして全国から参集してくれた医療従事者の方々を裏切ることになります。(高山医師)」

仕事を放棄しなかった乗員の方々・・・を裏切ることになります」に非常な違和感を私は覚える。つまり、乗客下船のオペレーションの対象に乗客は含まれていたが乗員は一義には含まれていないことを示している。それどころか、乗客下船のオペレーションする側に乗員を組み込んでいる。しかしその乗員の導線は感染制御の観点からは管理されていなかった。管理できないのであれば乗員の仕事は放棄させなくてはならない

「仕事を放棄」したくはない(又はしたくてもできない)責任感や事情を利用し、「仕事を放棄」させるという根本の科学的選択肢を高山医師は排除しているように思えてならない。「仕事を放棄」したくはないが(又はしたくてもできないが)、自ら感染する可能性と共に、乗客への感染拡大の要因となり兼ねないと乗員自身が懸念していたことは一部乗員のSNSでのメッセージでも判る。その心情は乗客も共有していた。

以上、拙稿 「仕事を放棄しなかった乗員」(高山医師の反論)で良いのか? 再掲載

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”新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で、乗客らの心のケアに当たった災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動について、日本精神科病院協会は4日、記者会見した。同協会の山崎学会長は「乗員が通常通り業務に当たったことで感染が拡大した」と指摘し、政府の対応を疑問視した。同協会によると、DPATは2月7日から活動を始め、防護服やマスクを着用して乗客らの診療に当たった。日本環境感染学会が船内を危険と判断したため、19日以降は船外からの電話相談に切り替えたという。山崎氏は乗客らの自室待機後の船内状況を、「乗員が配膳などの業務に当たったことで感染が広がり、安全なグリーンゾーンが危険なレッドゾーンに変わっていった」と分析。感染対策の統一的なマニュアルなどはなく、専門家が船内ルールを構築すべきだったとして、政府の対応を批判した。”(時事通信 2020年3月4日付記事引用)

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日本精神科病院協会ならずとも私などの素人目にも乗員を介して船内感染が広まる程度のことは当初から想定できた。専門家の「想定外」なる言葉を我々は過去何度耳にしたことか。「必要だから安全」とばかりに科学で「想定しつつも」をその「想定」を退ける政治(安倍首相・第一次政権時「地震対策の必要性否定」)を事業者(東京電力)が採った(「津波対策の必要性否定」)ゆえに未曾有の原発事故が発生した(人災)。

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想定を退け「頑張っている」なる精神論に過度に傾斜し「すべきことを」しなかったゆえの大事故ではないのか?感染学の専門家が「すべきこと」たる科学よりも政治家の常套たる「やってる感」に感けるは、「緊急事態において、昼夜を問わず粉骨砕身で対応にあたっている本所の職員や関係者を不当に取り扱うのみならず(国立感染症研究所の反論)」からも垣間見える。その「すべきこと」は検査数で表すしかない。

科学に耳を貸さないばかりか勝手に注釈を入れ、挙句に「こうしろ」と命ずる政治家と官僚。不倫旅行のついでに京大・山中伸弥教授を恫喝した首相補佐官と官房審議官のカップル。専門家に諮ることもなく公立小中高校などの一斉休校を要請した安倍首相など枚挙に遑がない。辻褄合わせと忖度が後から付いてまわる。

政府の「やってる感」ばかりのやってなさ。その何事も「やってる感」の感染源は誰かは言うまでもない。「この道しかない」と7年やっても全て「道半ば」。「やってる感」を満足すればそれで良いのか食い散らかして終わっている。その「道」すら自ら綴って見せたことがなく、方向観念が狂ったままの「この道・いつか来た道」になりつつある。

日本列島全体なる日本丸でクルーズ船での前轍を踏むようなことがあってはならない。どの道「自己責任」などと投げ出されるのなら、自分自身で考え対策するしかないのだろう。

(おわり)

posted by ihagee at 02:42| 日記