2020年03月02日

「子どもたち」をお為ごかしに使う



首相「緊急事態宣言実施も」新型コロナ、早期立法を強調(朝日新聞2020年3月2日記事

拙稿「新型コロナウィルスに乗じる厚顔」や「緊急事態宣言(北海道知事)の先」でも触れたが、政府の緊急事態宣言は将来の緊急事態条項(憲法改正)への布石となり得ることゆえ、我々国民はこの立法の趣旨と目的については十分監視をし、改憲の裏口入学を決して許してはならない(「<搦め手>好きの安倍首相」)。

「政府としてはあらゆる可能性を想定し」ておきながら、その「あらゆる想定」は詳らかにせず、公立小中高校などの一斉休校要請を以って「子どもたちへの集団感染という事態は何としても防がなければならない」などとなぜかやたらと唱えるが、肝心の「(学校内での)子供たちへの集団感染」の可能性を専門家は指摘していない。子供たちなど若年層に有意に症状が現れるとの知見もない(無症状病原体保有者はそれと確定されず、結果ウィルスを伝播している点については拙稿「感染の母集団を我々は知らない」参照)。

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専門家が最大懸念する集団感染可能性の一番近いケースである大都市圏の経済活動についてはあまり触れず、一番遠いケースの「子どもたち」を利用し、解決課題のハードルを下げて「やってる感」を創出しているように思えてならない。それどころか、緊急事態条項への布石に子どもたちを利用することまで考えているのではないだろうか?その子どもたちから将来人権を奪うことになる緊急事態条項に繋がるとすればとんでもないお為ごかしである。

この「子どもたち(の為)」なるお為ごかしは、憲法第9条の従来の政府解釈を恣意変更し、集団的自衛権行使の必要を国民に説明した際にもあった。

乳児を抱く母親とそれに寄り添う幼児のイラストを掲げて「子どもたち」をお為ごかしに利用したが、そもそも母子が紛争国から米軍の艦船で日本に向かう事態が集団的自衛権行使を必要とするストーリーなど現実味はない。日本政府から要請されて米軍の艦船が日本の母子を救う義務はない。安保法制懇報告書が想定するケースのなかで、集団的自衛権行使から一番近く現実味のあるケース(海外紛争地での武力介入=殺す・殺される)には触れず、一番遠いケースの「母子」を利用し、課題のハードルを下げてみせた。結果、憲法解釈変更にここでも「子どもたち」をお為ごかしに利用していた。殺す・殺されるという高いハードルをさり気なくクリアする為に、「子どもたち」を使った卑怯である。

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「学童保育に空き教室活用を要請へ 厚労省、感染拡大に伴う休校で(東京新聞 2020年3月2日付記事

では、なぜ休校を要請したのか?

「子どもたち」は緊急事態宣言(ゆくゆくは緊急事態条項)のお為ごかしだったということか。

(おわり)

追記:
所用があって最寄りの百均ショップに出かけた。
平日の日中にも関わらず、案の定、休校措置ですっかり春休み気分の子供達が大勢屯っていた。帰宅するとマンションのロビーでは数人の子供達がフロアに寝そべってゲームをしていたり・・と、教室の管理外に子供達を解き放った結果がこの有様。休校措置は自由気儘に子供達を行動・集団化させるだけのことであって、そもそもの「子どもたちへの集団感染という事態」への休校という措置が、一切管理されない場での集団化に変わったに過ぎない。これでは感染リスクはかえって高まったとも言える。その同じ場に感染弱者たる老人たちもいる。専門家でもない一首相補佐官のその場の思いつきを採用した「やってる感」のみの公立小中高校などの一斉休校要請であったことは、国会の安倍首相の答弁からも明々白々。政権の「やってる感」に子供達を借りたに過ぎない。専門家の知見を得た上、都道府県知事の判断で直ちに学校は授業を再開すべきだろう。確たる理由や根拠もなく教育を受ける機会を政治が奪うだけでも憲法に違反する。

posted by ihagee at 18:04| 政治