2020年02月22日

ホテルシップ計画への影響



「世界的にこの(新型ウイルス)問題が注目されたのもクルーズ船(内での感染)だと思いますが、クルーズ船の船籍はイギリス・・・(小池東京都知事)」(THE PAGE 2020年2月21日付記事引用) 

オリンピック開催代替都市として市長選を介して浮き上がった「ロンドン」に怒り心頭なのだろう。クルーズ船の船内感染の責任は船籍の国(ダイヤモンド・プリンセス号はイギリス・ロンドン船籍)にあることをお忘れなくと小池都知事は釘を刺した。

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その東京都はオリンピック大会期間中、豪華客船をホテルとして利用する「ホテルシップ」計画を打ち上げている。東京・横浜ではすでにホテルシップの受け入れが決定し、東京港:コスタベネチア号(2020年7月24〜29日)、横浜港:サン・プリンセス号2020年7月23日〜8月10日)、の利用が決定している。

コスタベネチア号:
旅客定員: 5,260名
運営会社=コスタ・クルーズ(Costa Cruises /イタリア・ジェノバ)
船籍(自国籍)=イタリア・ジェノバ




サン・プリンセス号
旅客定員: 2,022名
運営会社=プリンセス・クルーズ(Princess Cruises/ アメリカ・サンタクラリタ)
JTBとのパートナーシップでのホテルシップ事業
船籍(便宜置籍)=英領バミューダ


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今般の船内感染事故がホテルシップ計画に影響することは間違いない。ホテルシップに採用が決定したサン・プリンセス号はダイヤモンド・プリンセス号の僚船で共に同じ運営会社(親会社)である。


(ダイヤモンド・プリンセス号)

クルーズ船内のウィルス感染責任をその船籍国に問うのであれば、2020年5月7日に横浜港を出航し太平洋周遊クルーズ78日間を行い、その最終目的地として再び横浜に戻りホテルシップとなるサン・プリンセス号についても、ホテルシップの乗客が新型コロナウイルスに感染した場合について、その責任は船籍国(英領バミューダ)になるということになるのだろうか?コスタベネチア号についても同様にその責任は船籍国(イタリア・ジェノバ)になるのだろうか?

新型コロナウイルスの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」をめぐっては、船籍登録国(旗国)の英国と寄港を認めた日本のどちらに対応の責任があるのか判然としないという国際法上の不備が露呈している。責任の所在が曖昧なまま、外国船籍のクルーズ船をホテルシップとして利用することはこの際、見直す必要があるのではないか?

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」については、プリンセス・クルーズの日本法人(カーニバル・ジャパン/ 観光庁長官登録旅行業第1942号)が実際の旅行業者であり、同船は日本発着のクルーズプランのみに用いられている(同船クルーズプラン参照。その乗客の半数は日本人が占めており、ゆえに日本が「寄港を認め」ないわけにはいかなかった。寄港を認め、船上で検疫("再検疫" 後述再追記の通り)と感染防護の措置を講じた主体は日本政府ゆえ、主体者にはその行為に伴う結果に責任がある。いずれにせよ、それら実際の運行環境に照らせば小池都知事の船籍登録国(旗国)の英国に責任があるとの主張は少し無理があるのではないか?

それどころか、最終的に陰性と判断し下船させた乗客がその後次々と陽性となっている。その肝心のウィルス感染判断さえ怠り下船させた事例まで明らかになった。隔離後の船内感染(「隔離後」と強く疑われる)と下船(判断)による二次伝播(ウィルス保持=陽性による更なる感染拡大)の責任から日本政府は逃れることはできない。特に日本人については下船後そのまま生活環境に戻してしまった。船籍登録国(旗国)の英国に責任があるとしても、それらの判断結果についてまで言うわけにはいかない。その結果が重大だからこそ責任の所在を国際社会は日本に問う。それが船籍登録国(旗国)の英国だという論はおそらく世界では通用しない。

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2020東京オリンピックに関係したホテルシップに利用する限り、東京なり横浜に着岸する直前に船内感染が判明した場合、「それは旗国の責任だから寄港を認めない」と日本政府なり東京都は言えるのだろうか?サン・プリンセス号については太平洋周遊クルーズ78日間に続くホテルシップであれば横浜港に着岸する時点で大勢の乗客が存在することになる。第二のダイヤモンド・プリンセスとなる可能性は捨てきれない。

ホテルシップについてはどう考えるのか都知事は早々に考えを述べなければならない。

(おわり)

追記:
拙稿「名も知らぬドイツ人のアルバム」でハンブルク南米汽船 Hamburg Südamerikanische Dampfschifffahrts-Gesellschaft(HSDG)の客船モンテ・サルミエント号(Monte Sarmiento)について書いた。モンテ・サルミエント号は1939年12月に軍用船に転用されその母港(ハンブルク)は連合国軍の絨毯爆撃によって壊滅的被害を受けた。そのモンテ・サルミエント号の写真はまさしく嵐の前の静かな航海であったわけである。

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ダイヤモンド・プリンセス号の一件で、にわかに有事を想定した民間船の徴用の必要性が与党内で取り沙汰されている。表向き感染病対策の「病院船」であるが、厚労相よりも河野防衛相が乗り気だそうだ。

”横浜港に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を、診察や治療機能を持つ「病院船」に転用する案も浮上している。”(「新型肺炎で国内初の死者 政府、クルーズ船“転用案”浮上! 感染拡大に「病院船」実現へ」 2020年2月14日付夕刊フジ記事引用)はあながち出所不明の “転用案” ではないかもしれない。

”河野太郎防衛相は14日の記者会見で、診察や治療の機能を持つ「病院船」を防衛省・自衛隊が保有することについて「しっかり検討したい」と述べ、海上自衛隊に議論を指示したことを明らかにした。(時事ドットコムニュース・2020年2月14日付記事引用)

戦後存在しない「病院船」は戦前は大日本帝国陸海軍の病院船を意味していた。厚労省ではなく防衛省が定義する「病院船」に必要論が発展することに、いつかきた道・戦争への道への階段を我々が着実に上りつつあると懸念を深める(拙稿「私たちはどこまで階段を登っていますか?」)。その「病院船」を必要とする場面は大方戦争でしかない。嵐を呼び込むかの政権与党の「危機の常態化」と奔放な法解釈を我々は許してはならない。新型コロナウィルス禍を軍事上の脅威にサラリと置き換え、これを奇貨とばかりに緊急事態条項を盛り込んだ憲法改正に利用させて良いものか、我々国民はしっかり自分自身で考えなくてはならない(拙稿「新型コロナウィルスに乗じる厚顔」)。

再追記:
”ダイヤモンド・プリンセスは2月1日に乗客は検疫・入国審査を経て日本(那覇)に上陸している(那覇検疫所は上陸を許可する「仮検疫済証」を発行した)。事実、乗客2679人の多くが一時的に船を降り、沖縄県内の市街地で観光していた。同日、香港でダイヤモンド・プリンセスを下船した乗客の感染が明らかになり、同検疫所は仮検疫済証の効力を取り消した(検疫法第19条)。

posted by ihagee at 16:17| 日記