2020年01月19日

サイアノタイプ - その99(引き伸ばし機)



ワシンの水溶性つやだしニスについての続き(前回記事「サイアノタイプ - その98(引き伸ばし機)」)。



元のプリントの条件に応じて、i) セピア, ii) ブルーブラック, iii) ほぼブラック と色変化の傾向があるようだ。

再現性があるか以下試してみた。
i) セピア
プリントの条件:オキシドール浴後、ジャスミン茶(濃い目で10分程度漬ける)でトーニング、乾燥させる。

用紙:Cotman Water Colour Paper F2 Medium
感光剤:Jacquard cyanotype kit (Potassium Ferricyanide & Ferric Ammonium Citrate)
引き伸ばし機:Lucky II-C (Fujinar-E75mmF4.5)
光源:50W 395nm UV LED unit (SMD=surface mounted LED modules) / レギュレータ & PC用空冷ファン
アナログネガ:120 film(1950年代北海道積丹美国)
露光時間:約五時間

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となる(ちなみに写っている引き伸ばし機、イーゼルは本稿のものとほぼ同じ。プリントを介しおよそ70年ぶりの再会となったわけか・・)。浅めにトーニングをしたので青紫っぽいが、長時間(濃い目のジャスミン茶に1時間程漬ける)トーニングすれば
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この様にセピア色に近くなる。

ii) ブルーブラック
プリントの条件:オキシドール浴後(トーニング無)、乾燥させる。

用紙:Cotman Water Colour Paper F2 Medium
感光剤:Jacquard cyanotype kit (Potassium Ferricyanide & Ferric Ammonium Citrate)
引き伸ばし機:Lucky II-C (Nikon EL-NIKKOR/1:4/f=50mm)
光源:50W 395nm UV LED unit (SMD=surface mounted LED modules) / レギュレータ & PC用空冷ファン
アナログネガ:35mm (135) film(1950年代名古屋)
露光時間:約五時間

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となる(左から3人目は親父。1950年代清水建設/名古屋支店でビルなど商業施設の設計を行っていた)。

iii) ほぼブラック
プリントの条件:オキシドール浴後(トーニング無)、乾燥させる。

用紙:Cotman Water Colour Paper F2 Medium
感光剤:Jacquard cyanotype kit (Potassium Ferricyanide & Ferric Ammonium Citrate)
引き伸ばし機:Lucky II-C (Nikon EL-NIKKOR/1:4/f=50mm)
光源:50W 395nm UV LED unit (SMD=surface mounted LED modules) / レギュレータ & PC用空冷ファン
アナログネガ:35mm (135) film(1966年NCB (National Coal Board) 構内作業用タンク)
露光時間:約五時間

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となった。

いずれもEPSON GT-X980でスキャン。

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ii) と iii)のニスがけ前のプリントを比較すると、ii) はターコイズ(緑がかった青)、iii) はターコイズでも緑味が少ない。緑味が多いとニスでは黒色に青味が残るが、少ないとほぼ黒色になるようだ。

本稿のUV光源を用いた引き伸ばし機でのプリントでは往々にターコイズ(緑がかった青)に仕上がる。太陽光下の通常のプリント(コンタクトプリント)での群青/藍色まで焼き込むと細部が潰れるのでそこまで行うことはない(引き伸ばし機ゆえ焼き面を視認できるので止め際も判る)。

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サイアノタイプの階調を最大限引き出すには群青/藍色になる手前で焼き面を抑える必要があるのかもしれない。


(The Matthew R. Isenburg and Enhanced Isenburg Collections 1840-1880)

上掲の1800年代の商用サイアノタイププリントも同様に群青/藍色になる手前のターコイズ。光源に太陽光を用いネガを引き伸ばし機(Solar printer)でプリントしていたようだ(プリントの通り)。ネガや印画紙が焦げないような構造になっていたのだろうが、あっという間に仕上がったに違いない。銀塩写真に近い仕上がりにするにはターコイズに仕上がるよう焼き目を技師が視認していたのだろう。

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緑味がなく群青/藍色になる手前で止めてニスを塗れば iii) のようなほぼ黒色になるのかもしれないが、これは難しい。おそらく、元のネガフィルムの状態に依るのだろう。

本稿のプリントでは、ii) のブルーブラックに再現性があると判る。青味が若干残るもののコントラストが上がり黒味によって締まって見える。ハイライト部分はそれなりに抜けて全体に自然にまとまるのでこれでも良いのかもしれない。階調に乏しいとされるサイアノタイプだが、この程度まで表現できれば銀塩プリントの手軽な代替手段となり得るだろう。

(おわり)

posted by ihagee at 09:43| サイアノタイプ