Yahoo! JAPAN ニュースで近頃目にすることが多くなった乗りもの関係の記事。
株式会社メディア・ヴァーグ が配信する「乗りものニュース」記事もその一つだ。
”日常的に触れている『乗りもの』に関するニュースを、わかりやすくお届けします。”
”電車や航空機、バス、船、ミリタリー、道路…。多くの人が日常的に触れている乗りもの。私たちが運営しているのは、そんな普段使っている「乗りもの」がもっと便利で楽しくなるサイト『乗りものニュース』。交通インフラを利用する数多くのユーザーへ向けて、ニュースなどを配信しているサイトです。 ジャンルも幅広く、月間のPV数は3000万以上におよびます。”(株式会社メディア・ヴァーグ )

(同社記事中写真引用)
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”乗り物(のりもの、英: vehicle)とは、人を乗せて移動するもの。馬車、籠、汽車、電車、自動車、船、飛行機、人力車 等々の総称。語としては「乗り物」で交通機関を指すことも。” (wikipedia)
”日常的に触れている” は言うまでもなく、日常の移動手段たる「乗り物」でありそのための運輸・通信施設である「交通機関」のことである。
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”「鉄道」「航空」「ミリタリー」「道路」「バス」など乗りもの全般に関わります。「戦車や航空機が好き」という方や、「鉄道が好きで、旅行時の列車移動が楽しみ」という方はぜひご応募ください!” (株式会社メディア・ヴァーグの転職・求人情報)
その「乗りものニュース」には ”ミリタリー”のジャンルで多くの記事が掲載されている。

(同社記事中写真引用)
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”ミリタリー”は言うまでもなく日常の移動手段たる「乗り物」や、そのための運輸・通信施設である「交通機関」ではない。
”戦争において使用する全ての車両、航空機、船舶、設備などの事を指し、敵となった目標を殺傷、破壊するためや、敵の攻撃から防御するための機械装置である”(wikipedia)であるところの「兵器」だ。
「兵器」と日常の移動手段たる「乗り物」は全く異なるカテゴリーであるばかりか、日常生活空間とは異にする複数の集団の間で物理的暴力行使をする空間に於いての "車両、航空機、船舶、設備" である。
”日常的に触れている” か否かは、"物理的暴力行使をする空間" が日常化しているか否かに係っている。
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乗りものならぬ「兵器」を、サラッと「乗りものニュース」で”日常的に触れている『乗りもの』に包括しさらに「戦車や・・好き」と好奇心だけで読者(特に若者)を呼び込む。
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”「ある軍事評論家は言った。米軍はテロリストがいる場所だけをピンポイントで爆撃し、『人道的な戦い方だ』と。そう考えるなら、爆撃の下に立ってみなさい、と言いたい。爆撃で死んだのは女性や子ども、お年寄りといった罪のない人ばかりだ」・・・「大きな曲がり角。戦争を身をもって知らない世代ばかり。私もアフガンを通して戦争のなんたるかを知った。安倍さんの描く戦争の状態は現実離れしたゲームのようにしか見えない」” (「現実離れした戦争」中村哲氏)
「戦車や・・好き」などと大人が好奇心しかなければ、ピンポイント爆撃だから『人道的な戦い方だ』などとゲーム感覚で納得肯定し、罪のない人々が現実には殺されていようがそれを知ることもなく、「戦車や・・好き」とその子供たちにまで言わしめる。
「戦争のなんたるか」を一つとして知らしめない単なる「面白ずく」の記事が「乗りものニュース」では ”ミリタリー”のジャンルで掲載されている。
ただ「面白ければ良い」が昨今流行りのメディアのあり方なのだろうか?
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”群馬県の伊香保おもちゃと人形自動車博物館(吉岡町上野田、横田正弘館長)は、実物大の戦車などの軍事品の模型を展示する「ミリタリーゾーン」を開設した。・・横田館長は「『実物大戦車の模型を置いてほしい』というファンの期待に応えた」と新ゾーン開設の狙いを説明。戦車の走行用ベルトなど細部にまでこだわったといい、「幼少期に戦闘機や戦車といったプラモデルを作った男性ら幅広い世代に楽しんでもらいたい」と話した。”(上毛新聞記事 [2019/12/07]引用)
伊香保おもちゃと人形自動車博物館は何度か訪れた場所である。
”幼少期に戦闘機や戦車といったプラモデルを作った” 、は私も同じ。しかし、中学生になって「やめた」。戦中世代の父の話を聞いて「戦争のなんたるか」を少しは考えるようになったからかもしれない。そのような考えのきっかけとするならともかく、「幅広い世代に楽しんでもらいたい」とはどういうことだろうか?
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米国スミソニアン航空宇宙博物館の関連施設には、広島に原爆を投下した米軍のB29爆撃機「エノラ・ゲイ」がピカピカに磨き上げれて飾られている。20万人の命を奪った兵器である。同様に長崎に原爆を投下したB29「ボックスカー」は中西部オハイオ州の博物館に展示されているそうだ。展示されている「エノラ・ゲイ」に、原爆被害や歴史的背景は一切説明されていない。
それら兵器を、我々は嬉々として観に行くだろうか?
原爆投下に使用された兵器には「戦争の何たるか」をわれわれは重ね見るが、

(長崎原爆後の写真「焼き場に立つ少年」・朝日新聞DIGITAL [2018/01/02]記事中写真引用)
「ミリタリー」記事や、模型であろうと実寸大の戦車には「戦争の何たるか」を全く覚えず、”日常的に触れている『乗りもの』に繰り込んでしまう我々。旭日旗に「戦争の何たるか」を全く覚えないことと同じ(拙稿「旭日旗考」)。軍事戦勝旗を歴史上一義として意味する旭日旗を「人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励する(オリンピック憲章)」ことを目的とするオリンピックの競技施設に持ち込むことも是とする空気がこの国を支配しつつある。
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”「えっ、兵器がずらり」―。自衛隊の戦車や戦闘機などの写真を掲載した幼児向け知育図鑑『はじめてのはたらくくるま 英語つき』について、大手出版社・講談社の子会社「講談社ビーシー」は2日までに「適切な表現や情報ではない箇所があった」として今後増刷しないとしました。

この本をめぐっては、児童文学関係者や新日本婦人の会などが同社に懸念を伝えていました。・・・こうした内容に、日本子どもの本研究会や親子読書地域文庫全国連絡会、日本児童文学者協会が、幼児向けの本であることを念頭に「戦争に使う乗り物を普通の車と同列にとらえられることに大きな不安」などと意見を表明していました。」”
(「幼児向け図鑑「はたらくくるま」しんぶん赤旗電子版記事 [2019/08/03]引用)
街で見かける「働く車たち」の括りであるところなどは、「乗りものニュース」の ”日常的に触れている『乗りもの』にミリタリーを括ることと同じ。
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乗りものならぬ「乗りものニュース」やプラモデルの延長でしか軍事品をみない、そして「戦争のなんたるか」を一つとして知らしめない単なる「面白ずく」の内に「爆撃で死んだのは女性や子ども、お年寄りといった罪のない人」に心を至らせることもできず「ゲームのようにしか見えない(中村哲氏)」「幅広い世代」。
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間違っていないか?とその「幅広い世代」に問いたい。
「大事なのは、人間の犠牲を減らすための外交努力です。自分が殺されるのは嫌いだから、相手も殺さない。これが普通の感覚じゃないですか。」(中村哲氏)
その努力を自ら実践し将来世代に託すべきがわれわれ大人の役目である。中村哲氏が示したように。それが憲法にある平和主義の実践である(平和主義を題目のように唱えるだけではなく行動=水路建設(中村哲氏)、を以って実践すること)。戦争で戦うが普通の国の武力主義なら、戦争に命がけで戦うが日本国に課せられた平和主義の実践である。後者がいかに大変なことか、しかし人としていかに偉大なことかは中村哲氏が教えてくれる。
ところが、その平和主義と真逆の「積極的平和主義」なる造語で隠した武力主義に日本は傾斜している。紛争地での自衛隊の民事支援をマスコミは大書報道するが、軍事を有利に進めるための作戦の一つでしかなく(民事作戦)所詮武力主義の言い訳と軍需産業輸出の目隠しに他ならない。井戸掘り一つ、自衛隊と中村哲氏ではその目指すものが異なる。
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「いかにしたらこの世から戦争をなくすことができるか?」とは正反対の方向に進んではいまいか?

(【昭和10年から15年頃の「子供の科学」】夢の図書館から画像引用:「昭和6年の満州事変から昭和12年の日中戦争開戦へと戦争への道を突き進んだ日本の姿があります。」)
その先は戦争への道。大人たちの無責任無思考な「面白ずく」は安倍政権の「積極的平和主義」の背中を押し、子供たちにその道を展く。
(おわり)
PS. コロナウイルス禍の最前線で活動する医療従事者を励まそうとブルーインパルスが都内上空を曲技飛行した(2020年5月29日)。安倍首相、その医療従事者をはじめ、多くの都民が空に手を振った。ブルーインパルスは戦闘機ではない。だからと言って赤十字の飛行機でも民間機でもない。憲法を政治解釈し地球の裏側まで武装した自衛隊を派遣可能にした者と一緒にその「非日常」に無邪気に手を振ることができない。空ではなく目の前の医療従事者に感謝を示したい。それがウイルス禍の只中にあっても日常心を失わないことであろう。
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