サイアノタイプではJacquard社のキット(クエン酸アンモニウム鉄(III)&フェリシアン化カリウム)を使用しているが、この二剤は1842年来(英国で技法が発明)の古典的組み合わせである。
それに代わって、同社の染色(ダイ)用のSolarFastキットが本項の目的に使えないか試してみることにした。係るキットはOHPフィルムで作成したデジタルネガをTシャツなど繊維に密着させ太陽光を使ってポジ像をプリントすることを目的とし、シルクスクリーンのインクとしても使うことができる。ゆえに各色があるようだ。
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SolarFastのブラックをeBayを通じてオーストラリアから取り寄せた(国内未発売)。水洗だけでも色は定着するが、専用のウォッシュ液も併せて入手した。
太陽光下では約十分で露光が完了するので、サイアノタイプとほぼ同じ感光度だろう。UV光源下でサイアノタイプの場合、約五時間かかるので同程度とみて早速プリントしてみた。
SolarFastのボトルから乳灰色のドロリとした液剤をスポイトで平皿に拾ってスポンジ刷毛で水彩画用紙(Cotman Water Colour Paper F2 Medium)に塗布。乾燥させた後、35mmアナログネガ(1966年撮影)をセットした引き伸ばし機で約五時間露光後ウォッシュ液(薬品臭がある)で洗浄。結果は以下の通り。
黒くならず薄いセピア色の寝ぼけた像となった。失敗である。露光が足らない以前に薬剤の使用方法が間違っていたことに気づいた。塗布したら乾燥させずにすぐに光に当てる方がより発色するようだ。しかし、未乾燥の濡れた状態では露光中に紙が反ってしまうのでコンタクトプリンター(ガラスで紙を挟む)で反らないようにする必要がある。引き伸ばし機の露光面でのピント合わせをコンタクトプリンターにセットした(=ガラスに挟んだ)紙に行うのは至難。そもそも密着焼きの為の薬剤だから、引き伸ばし機を使ったプリントには不適なのだろう。
そこで、サイアノタイプの薬剤を紙に塗布しその上からさらにSolarFastを重ね塗りし乾燥させてプリント。つまり、二つの用途の違う薬剤を組み合わせてみた。
結果は良好。サイアノタイプ薬剤のみの場合よりも発色がブルーブラックになった。サイアノタイプ薬剤だけの場合、黒味を出すにはジャスミン茶などによるトーニングを要するが、この組み合わせなら配合の仕方次第でトーニングを要せず黒味を出すことができるかもしれない。階調も増した感がある。さらに試す価値はありそうだ。
(おわり)
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