2019年09月29日

石膏の中の子供



日本の素顔」に続けて、「現代の映像 プラスチック昆虫記」をYouTubeで視聴した。この番組はリアルタイムに観た記憶がある。


現代の映像 プラスチック昆虫記


この子供たちは私の世代にほぼ属している。都市の機能的発達に伴い人間が作り出した環境がそこに暮らす生物としての人間を逆に作り変えていく。脊柱側彎症をはじめとし、そうやって作り変えられてしまった子供たちが番組に登場する。私自身は地方都市で虫だらけ土まみれの遊び場に困ることなく育った。父から「猫背で歩くな」「犬食いするな」などと始終注意され、小学校でも先生から教科書は机の上に立てるよう指導され、それらの環境のおかげか幸いにも作り変えられることなく大人になった。


教科書を立てて授業を行う学校(現在)


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人間が作り出した環境がそこに暮らす人間を逆に作り変えていく。その作り出す主体は人間でなくても良い時代(AI本格稼動社会)が間近に到来しつつある。作り変えて当たり前の環境が子供たちをも作り変えていくことに、懸念する声はないかの如く教科書代わりにタブレットを授業に活用する学校も増えてきた。



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身長測定で背が測りにくい子供が多いと聞く。頭が前傾して天辺にゲージが当たらないからだそうだ。体重の10%に相当する頭の重みを体全体でバランスさせるために、通常30〜40度の前彎角度を保っている頸椎が、スマホやタブレットの操作で頭を前傾させる姿勢を取り続けることによって彎曲を失いまっすぐに近い状態(前彎角度が30度以下)となる症状である。脊柱側彎症に加え、首の骨が曲がるいわゆる「スマホ首・ストレートネック」に子供たちは作り変えられている。自律神経症状を含むさまざまな症状を随伴し、加齢に伴う猫背が加わって二、三十年先どのように体全体に影響するのか誰もまだ経験していない。

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「プラスチック昆虫記」には、作り変えられてしまった子供を元に戻そうとメスを入れ石膏で固める場面が登場する。

スクリーンショット 2019-09-29 12.48.44.png


あの頃の大人たちと同様、急激に変化しつつある子供たちから暗示を受けながらもわれわれ大人たちは病理学的に子供たちを観察しているのかもしれない。メスを入れるべきは子供たちではなく、プラスチックならぬAIの昆虫を子供たちに与えた大人たちの側ではないのか。AI本格稼動社会なるスローガンに言い知れぬ不気味さを覚えるのは私だけだろうか?

(おわり)


posted by ihagee at 12:51| エッセイ