2019年09月21日

フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き3)



フィルム・レコーダ(Polaroid Digital Palette HR-6000)で、3¼ x 4¼のピールアパート方式パックフィルム(フォトラマ)への出力を試してみた。HR-6000の35mmフィルムカメラバックに代えて、3¼ x 4¼パックフィルム用フィルムバックと有効期限切れのFuji FP-100C(カラー)を使う。

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3¼ x 4¼フィルムバックは元はポラカラーフィルムを装填するものだが、ポラカラーの代わりに規格が同一のFuji FP-100C(カラー)やB(モノクローム)のパックフィルムも装填が可能である。

ピールアパート方式のインスタントフィルム(Fuji FP-100C。以下「フォトラマ」)はすでに製造中止。多少なりとも安く手にいれるには有効期限が切れた中古品(未使用)に手を出さざるを得ない(有効期限内の品は元の製品価格よりも高い値段で取引されている)。

eBay経由で手に入れたフィルムバックは経年の汚れや曇りがレンズにあったので分解清掃した。ピントの微調整をフィルム面で確認しながら行う必要がある。27年前に有効期限(1992年10月と表示有)が切れてメルカリで千円程度で売りに出ていたFuji FP-100C(10枚撮り)を使った。

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出品者は「室温で置いていたものです」と説明しているのでさらにまともに写るわけはない。ピント確認さえできれば良いということである。

Sigma DP2Sで撮影したものを含めいくつかの画像をテストに用いた。HR-6000用ドライバーソフトのフィルムテーブルから"PolacolorPro100Pack" を選択し、Photoshop上で色温度をフォトラマ指定の5500°Kに合わせる。明るさ設定は普通(0)とし、現像時間は90秒で(iPodTouchのストップウォッチを利用)プリントした。しかし、27年前のポラフィルムはやはり酷い。ポジティブ側にある薬品袋の現像剤が劣化し均等に広がらず以下の結果となった。

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(ネガ部分は灰色に変色劣化した薬剤が不均一に広がっている)


それでも何とか写ったのが以下。

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プリントを頼りにフィルムバックのレンズを微調整しピントを拾って、今度は12年前(2007年7月)に有効期限が切れたフォトラマを使ってテストプリントを行った。こちらはヤフオクから入手したもので出品者の説明では一応冷蔵保存してきたものだそうだ。現像時間を1分45秒としてプリントしたものが以下。

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Sigma DP2Sでの以下画像を使った。

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1940年代にニューヨークのSchool of Modern Photographyで(試し撮りでのいわゆる「ポラして」)作成されたモノクロポラネガ(7" X 5”)にCanon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズで撮影したアナログフィルム画像(拙稿「Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズ(その17)」)をPhotoshopでオーバーレイしたデータを用いた。

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同じく、Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズで撮影したアナログフィルム画像(拙稿「Canon AL-1 - 虫眼鏡(単玉)レンズ(その17)」)を元にしたもの。

別項「禁断のFoveon」で触れた通り、鮮明なFoveonをノイズだらけの「デグレ」に帰着させるわけだ。褪せたプリントなど悪趣味だと思う向きが大半だと思う。しかし数値を光に変えてフォトラマ(フィルム)上で化学変化を誘起し・・と、デジタル→アナログ変換で本ブログの「Film Photography」なりのメンツを保つ意味はあった。

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最初からデジタルデータの色情報を3色(RGB)の点に置き換え有機ELで露光し外光を使わないデジタル・プリントである「スマホdeチェキ」や、「スマホdeチェキ」のプリンターにデジタルカメラ(デジタルイメージセンサー)を載せたプリンター付デジタルカメラ「instax SQUARE SQ10」と同じかもしれない。

記録画素数(ピクセル):1920x1920(Instax SQUARE SQ10)、4535x3024(HR-6000, 実用値)
プリント画面サイズ:62mm×62mm(Instax SQUARE SQ10)、85mm×108mm(フォトラマ)
プリント階調:RGB各色256階調・24bitフルカラー、RGB各色256階調+アルファ値・32bitトルゥーカラー(HR-6000)
フィルム形式:シートフィルム方式(Instax SQUARE SQ10)、ピールアパート方式(フォトラマ)

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シートフィルム方式のチェキはインスタ映えするましかく写真(スクエア)として根強い人気がある。しかし、いかんせん62mm×62mmでは小さい。120のネガフィルムとほぼ同じ面積しかない。他方、ピールアパート方式のフォトラマは製造中止となってもそのプリント画面サイズの大きさに利がある。また、ピールアパート方式は乳剤面を剥がす(リフト)ことができるので別の素材に転写(トランスファー)したり、ネガ部分を塩素系漂白剤で洗い出してネガフィルムを作成することができる。クリエーティブな点では、基本プリントしておしまいのシートフィルム方式のチェキよりも数段面白い。






つまり、ピールアパート方式のフォトラマは「一粒で二度美味しい」わけだ。

上述のモノクロポラネガ(7" X 5”)もその副産物だが、別項「サイアノタイプ 」では引き伸ばし機にかけてアナログネガとしてプリントに用いることもできる。

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ピールアパート方式のポラフィルムを使うのは学生時代以来(1970年代)である。引っ張り加減やら、もうすっかり忘れかけていた指先の感覚が蘇る。露出時間を「いちにさん・・」と口で数えたものだ。ポラロイドカメラの代わりにフィルム・レコーダで再会し十分楽しむことができた。いずれトランスファーにも挑戦したいと思う。

ピールアパート方式のフィルムパックは未だ入手可能とは言え、製造中止となってデッドストック分が消費されればそれでおしまい。クリエーターの声に応えてフィルムメーカーが再製造するとは思えない。大量消費ゴミ捨て時代の遺物であることはそのプリントの後に残るゴミ(金属製のカートリッジ、剥離紙など)の多さですぐに気付く。メーカーがエコなご時世に反する製品を復活させるとは到底思えないからだ。

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ゴミと褪せたプリントに過ぎ去った時代を思い返す。これもアナログプリントの良さかもしれない。

(おわり)