2019年09月09日

フィルム・レコーダ(デジタル⇒アナログ変換)再発見(続き2)



ポラロイド CI-5000S(デジタル・フィルム・レコーダ)に引き続き、上位機種である HR-6000(中古品)もヤフオクで千円札数枚にて落札した。

スクリーンショット 2019-09-09 8.34.50.png


”ポラロイド社のフィルムレコーダーHR-6000は、同社がフィルムメーカーでもあるため撮影時のフィルムはいろいろと選択出来ます。すなわち、通常のISO 100, 200等のスライドフィルムに加え、ポラロイド社の35mmインスタントフィルムであるPola Chrome、Pola Blue等のほか、TYPE339, 331といった自動現像タイプ、TYPE661, 691といったピールアパート(撮影後引き剥がす)タイプ、更に、TYPE554, 559等の4"X5"タイプのインスタントフィルムまで使用できます。 HR-6000には、MAC対応機とWINDOWS対応機 とがありますが、ドライブソフトの違いだけであり、それぞれ背面のSCSIコネクタ、または、パラレル(セントロ)コネクタにより接続されます。CRTは3.5インチで、4,096ドットの解像度、33ビットカラーの性能を持っています。撮影時間も従来の機種に比較して短くなっています。また、ダイナミックフォーカスの採用により、以前のCI-5000Sに比べてスライド端部のシャープネスが良くなっています。”
(「フィルムレコーダーについて」(株)カラー マーキングファクトリー記事引用)

「撮影時のフィルムはいろいろと選択出来ます」とあるように、フィルム・テーブルはCI-5000Sよりも選択肢が増え35mmのモノクロームフィルム(ネガ)も加わっている点がHR-6000をさらに購入する動機となった。

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落札し届いた本体外観はCI-5000Sと全く同じ。付属の35mmのカメラバックも同じだが、CI-5000Sで無銘のレンズが今度のものはPolaroid 36.6mm, f/4.9(6群)と銘記がある。

さっそく本体のシャーシの内部を点検。内部の構造はCRTから基板までCI-5000Sと全く異なっていた。遮光防塵の為にCRTには黒いウレタンが分厚く巻かれている(CI-5000Sと異なる)。このウレタンが経年劣化・加水分解し綿状のタールと化していた。湿った綿あめのように触れると途端にべったりと指先が黒くなる。その真っ黒な綿あめが今にもその下の基板に垂れ落ちそうになっていた。掃除機と綿棒で慎重に取り除き、CRTの表示面をエアブローして埃を払い百均のエアコン用防塵フィルタ(マイクロ繊維)を巻きつけて対処する。

電源を投入し、PowerBook G3 Wallstreetとドライバーソフトを介して正常に動作することを確認した。

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CI-5000SのフィルムテーブルにはなかったモノクロームネガはFuji Neopan 100とKodak TMAX 100。それぞれの設定でテストデータを送信し、フィルターを観察するとBだけで露光することが判った。モノクロームの元画像がRGBのデータを持っていてもBの一色一回の露光ということである。そもそもの用途がプレゼンテーション用スライド作成で、BをRとGにコピーしてモノクロ画像として表示するとノイズが見やすくなるようなので、明暗だけのレントゲン写真を貼り込むにはこれで良いのかもしれない。

サイアノタイプ(別項)のモノクローム・アナログネガ作成が私の用途ゆえに、テーブル上の使えそうなフィルム設定毎に露光テストを試みてみた。実際に35mmフィルムに写真データを焼くのではなく、カラーフィルター 越しにCRTをデジタルカメラで接写撮影(バルブ撮影)して確認する方法を取った。SONY NEX-3に25mm超広角のCarl Zeiss Flektogonを装着し三脚にのせてF11で撮影。

ネット上から拝借したテストチャート(「デジカメ内蔵用テストチャート (グレースケール & カラーバー)  (C15)」)と、写真家Maurice Couvratの乾板(1920年代頃)をEPSON GT-X980でスキャンしたデータを使った。ポラロイドのドライバーソフト(デジタルパレット v4.2.1)上の明るさ設定・絞り-1/3、普通(0)、+1/3のそれぞれで比較を行う。

先ずはカラーチャートでのモノクロームネガ・Kodak TMAX 100とFuji Neopan 100との比較:
Collage_Fotor_comp1.jpg


カラーリバーサル・Fuji Provia 100とFuji Sensia IIとの比較:
Collage_Fotor_Comp3.jpg


カラーリバーサル・Konica Chrome R-100とカラーインスタント・Polachrome HCとの比較:
Collage_Fotor_Comp4.jpg


カラーネガ・Kodak Gold Plus 100とカラーリバーサル・Kodak Dyna EX100との比較:
Collage_Fotor_Comp2.jpg

(チャートの赤色はKodak Gold Plus 100が最も再現性が高かった)

この比較結果から、実際にパラメータが利用できそうなフィルムは以下の通りと私なりに判断した。
モノクロームネガ(B露光)
Fuji Neopan 100
Kodak TMAX 100
カラーリバーサル(RGB露光)
Kodak Dyna EX100
カラーネガ(RGB露光)
Kodak Gold Plus 100

これらのフィルム設定でさらにチャート比較を行った。
グレースケールチャートでのモノクロームネガ・Kodak TMAX 100とFuji Neopan 100との比較:
Collage_Fotor_gray1.jpg


カラーリバーサル・Kodak Dyna EX100とカラーネガ・Kodak Gold Plus 100との比較:
Collage_Fotor_gray2.jpg


最後にCouvratの写真を使って
モノクロームネガ・Kodak TMAX 100とFuji Neopan 100との比較:
Collage_Fotor_gray4.jpg


Kodak Dyna EX100とカラーネガ・Kodak Gold Plus 100との比較:
Collage_Fotor_Comp55.jpg


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Couvratの写真での比較を見る限り、Fuji Neopan 100(普通0または+1/3)、Kodak Gold Plus 100(-1/3)が私の用途では使えそうに思えた。そもそも四半世紀前の代物で長らく放置されキャリブレーションもしていないわけだから、本来の製品設計値の比較になっていないことは判っている。また、比較はあくまでもデジタルカメラ上なので、Kodak TMAX 100かFuji Acros100などのモノクローム・ネガフィルムでどう化学するのかは別なのかもしれない。あとは実際に焼いてみるだけ。追って報告したい。

(おわり)