引き伸ばし機(Lucky II-C)の架台に10WのSMD UV光源を内臓したFujica Birdie Kit3を吊るしてのプリント(拙稿「サイアノタイプ - その73(Fujica Birdie Kit3)」は面白いが、やはりスライドプロジェクターのレンズでは細かなピント合わせができない。
(Lucky II-C & Fujica Birdie Kit3)
Fujica Birdie Kit3は単体でプリントできるので、Lucky II-Cを元に戻し、35mmフィルム用のLucky Attache-35に搭載していた30WのSMD UV光源を組み合わせた。コンデンサーレンズはLucky II-Cに元から付いているものを利用(引き伸ばしレンズ:Fujinar-E75mmF4.5)。
(Lucky II-C & 30W SMD UV光源)
フィルムキャリアを用いればLucky II-Cで120と135(35mm)フィルムの両方がプリント可能。二台所有するVoigtländer Superbのうち後期型(1935年製)で撮影した120フィルム(Kodak 400TX)を使ってプリントしてみた。撮影場所は羽田空港沖に面した公園(森ケ崎公園界隈と京浜島つばさ公園)(2017年4月16日早朝)で、前期型と共にレストア後のカメラテストで撮影した一コマとなる(拙稿「Voigtländer Superb 顛末記 - その11」)。本ブログのVoigtländer Superb項で掲載の写真に後期型の作例が少ないのも、ビューレンズの組み込みに難があり明らかなピントズレがあるからだ。その中から以下の一コマをプリントに使った。
(EPSON GT-X980でフィルムスキャン)
ウィンザー&ニュートン コットマン パッド 細目(B5)に、豆乳&感光剤を刷毛塗りし、トーニング無しで仕上げた(露光二時間)。
さらに一枚。1950年代に撮影された東京・日本橋の風景がある一コマ(120フィルム)。1964年東京オリンピックに向けた再開発によって首都高の高架に覆われる以前の日本橋である。背景に辰野金吾設計の帝国製麻ビルが写っている。大正元年竣工の赤煉瓦の建物は関東大震災と戦災もくぐり抜けたが、オリンピックに先立つ都市改造によって敢え無く壊されてしまった。東京駅丸の内駅舎(重要文化財)もこの人の設計だが、あの時代は経済価値が優先していたのだろう。それは今も変わらない(「日本橋界隈」『「五輪」という破壊』)。
トーニング(コーヒー)が過ぎて、全体に眠い絵になった。何事にも按配があるものだ。
さらに一枚。
1972年撮影のドイツ国鉄52形蒸気機関車である(35mmフィルム)。これは英eBayから購入した。トーニングの結果もまずまず。
35mmフィルムを重ねてみた。UV光源の引き伸ばし機ならば、このレガシーな記録媒体をサイアノプリントに活かすことができる。

52型は7000両以上製造され、戦後復興に西ドイツのみならず東欧圏でも活躍したようだ。052-440-5のプレートのこの機関車は模型にもなっている。独墺の鉄道模型は量産型の機関車であろうと百科的に網羅しているが、その徹底ぶりと鉄道模型趣味はゲルマン人の国民性なのだろう。いや、模型に止まらず動態保存で実際に走らせているが、その本気度やスケール感は凄いものがある。黒い森の狩猟民族に稲田にカエルの我ら農耕民族は全く敵わない。
機関車のフィルムは他もいくつかeBayを通じて購入したので追ってサイアノでプリントしてみたい。
(おわり)
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