2019年06月30日

サイアノタイプ - その82(引き伸ばし機)



SMDのUV光源を使ったサイアノタイプの続き(引き伸ばし機:昭和11年(1936)製の乾板用ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=125, 1:6.3)。

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UV光を長時間照射することによって、アナログフィルムなり乾板にダメージをもたらすのではないか?と懸念されるかもしれない。使用しているSMDは所謂パーティ用ブラックライトで可視光領域の395nm辺りがピークのようだ(380nmmまでを紫外線という)。サイアノタイプの感光領域は375nmから395nm辺り。375nmでは人間の目には暗く引き伸ばし機に用いるには不適であると共に直接目で光源を見ることは危険。従って、可視光を含むとなれば、パーティ用ブラックライトが引き伸ばし機のUV光源としては最適なのだろう。

太陽光の下、コンタクトプリント(密着焼)でならば数分〜十数分で露光完了となることからして(曇天下でさえ)太陽光はいかに多く紫外線を含んでいるかが判る。さらに太陽光には熱線(赤外線)も含まれている。

本稿で採用のパーティ用ブラックライトから転用したSMD UV光源は太陽光に比較にならない程、弱い紫外線で且つ熱線が含まれていないため、長時間の照射であってもネガにダメージを与えることはない。カラーネガであれば変色の可能性があるかもしれないが、サイアノタイプの場合、モノクロネガなので変色を心配する必要もなく、今のところフィルム・乾板ともにUV光源ゆえのダメージは一切見られない。

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とは言っても長波長紫外線(UV-A)である。イーゼルの露光面でピントを合わせる際にフォーカサーを用いるが、直接ファインダーを覗くのは危険。iPod Touchのカメラレンズをフォーカサーの接眼部に取り付けて、液晶越しにフォーカシングを行っている(小穴式ピーク・引伸用ピント・ルーぺI型(No. 2000))。作業中、紫外線カット・コーティングしたメガネをかけていることは言うまでもない。

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(iPod Touch液晶画面)

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感光剤(Jacquard Products社:Jacquard Cyanotype Sensitizer Set)の古い使い残しのボトル(A剤、B剤)がタンスの中で眠っていた。作ってから2年半経過。それぞれ1/3ほど液剤が残っていたが、防腐剤が入っていない液剤なので、クエン酸アンモニウム鉄のB剤の液面は糊状の膜が張っていた。このまま捨てるのも勿体無いと、シリンジのニードルを突っ込んでA, B共に2ccを採取し、豆乳(希釈せず)と混ぜて、ウィンザー&ニュートン コットマン パッド 細目(B5)二枚にスポンジ刷毛で塗布してみた。この状態では現在使っている液剤と変わらず塗りムラもなく未だ使えそうな雰囲気。

乾燥後、トウモロコシの束を撮影した乾板(Pickerling一族の乾板(1880年〜1890年代撮影)の一部)を使って一枚プリントしてみた。

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露光してすぐに、ボツボツと黒い点が現れた。古い感光剤ゆえか?どうにも気になるのでシャドーが潰れることも覚悟で敢えて露光時間を長くする(一時間半)。水洗後、トーニング(コーヒー)とミョウバン液浴を繰り返し最後にオキシドールをスプレーし水洗。生乾きの状態で百均の水性ニス(光沢有)をスポンジ刷毛で塗って仕上げた。

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結果は良好。素材とトーニングが合っている。シャドーに深みが出ているのはサイアノ液剤を豆乳と混ぜて塗布したせいか?デジタルネガのコンタクトプリント(密着焼)のような、メリハリ=明暗比(明るい部分・暗い部分の明暗の差)感もありながら、微妙な階調も表現されている。

捨てようと思っていた液剤だが思わぬ効果に残りも同様に楽しめそうである。

(おわり)


posted by ihagee at 18:06| サイアノタイプ