SMDのUV光源を使ったサイアノタイプの続き(引き伸ばし機:昭和11年(1936)製の乾板用ハンザ特許引き伸ばし機 / Anastigmat F=125, 1:6.3)。
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印画紙に水彩画用紙 vif Art B5 (H.P. surface)を主に用いてきたが、水を含んだ時の波打ちが気になっていた。豆乳を下引きし乾燥後、その上にサイアノ液を塗布し再度乾燥の過程での波打ちは印画紙としては避けたい。そこで、より紙面の張りが強いウィンザー&ニュートン コットマン パッド 細目に用紙を変えてみた。紙厚は242g/m2 (vif Art)が270g/m2(コットマン)となり、露光後の水洗・トーニング・ニス塗布の工程にも都合が良い。
早速、豆乳(無調整)を薄めずにスポンジ刷毛で塗布・乾燥後、サイアノ液を塗布し扇風機の風を表裏に当てて乾燥。vif Artでは微妙に波打ちがあったが、コットマンではそれが無い。
引き伸ばし機に乾板をセットし小穴式のピントルーペ(I型)でピントを予め合わせ(iPodのカメラ越し)、印画紙を置いて露光(時間:四時間程度)。コーヒーとミョウバンを用いてトーニング、乾燥後水性ニス(光沢有)を塗布して仕上げた。
Pickerling一族の乾板(1880年〜1890年代撮影)でのプリント:
比較(豆乳下引き無・ジャスミン茶でのトーニング)
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1900年頃のファーマー(フィンガーレイクス)
比較:
比較:
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写真家・Maurice Couvratの乾板(1920年代頃)。活躍拠点だったフランス・ヴィエンヌ県ポワチエの景色か?
比較:
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1900年頃(場所不明)
比較:
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比較する迄もなく、コーヒー・トーニングで絵肌の晴朗さが失われ全体に汚れた感じになるが、それも雰囲気か?トーニングをしない状態での発色性は豆乳を下引きした方が良いことが判った。感光剤が紙の繊維にタンパク質(豆乳)を介してより強く定着しているからだろう。但し、この場合、タンニン(ジャスミン茶など)でのトーニングをしない方が良い。紙を染色するよりも、鉄(III)イオンへのタンニンの沈着となるので、豆乳の下引きの際の刷毛目(目には見えないが)の通り紙の繊維深くまで定着した感光剤がトーニングによって刷毛目ごと絵肌に現れやすい。つまり、豆乳を下引きする際は、豆乳を希釈し塗布するか、トーニングをせず表面を水洗いする程度の漂白で済ませるのがコツだということも会得した。
(水で緩めた豆乳を下引きし、薄いコーヒーでトーニングしたもの)
(おわり)
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